投稿日 2012/08/18

新入社員に伝えたい自分の頭で考えるための3つのこと




最近、自分の所属するチームに新入社員が入ってきました。


新人のメンターを務めることに


今の会社にはメンター制度があります。新人に先輩社員が一人つき、一緒に仕事を進めながら仕事に必要な考え方やスキルを学びます。OJT (On the Job Training) です。

新人のメンターを務めることになりました。あらためて新人にはどんなふうに育ってほしいかを考えるきっかけになりました。

まずはビジネスパーソンになってもらうこと、会社内だけではなくて外の世界でも市場価値のあるプロフェッショナルになってほしいです。

ビジネスパーソンなりプロフェッショナルにしても、大事なのは自分の頭で考えられることです。

今回のエントリーでは自分の頭で考えるために、新入社員に伝えたい3つのことをご紹介します。
投稿日 2012/08/14

スマートテレビは普及するのか?ビジネスモデルで考える理想の姿と現実




スマートテレビが、スマートと言えるための必要な要件は以下です。

  • ネットワーク接続され双方向性がある。テレビと、パソコン・スマホ・タブレット等の各種デバイスと連動する
  • テレビ上で各種アプリが使える。例えば、ソーシャルメディアと連携する
  • OS などのソフトウェアのアップデートでテレビが新しくなる (テレビを新しくする ≠ ハードの買い替え)
  • ユーザーインターフェイスが直感的な操作で使いやすい
  • 課金の仕組みができている
  • あらゆるコンテンツがいつでもどこでも自分の見たいタイミングで見られる
投稿日 2012/08/11

便利すぎるルンバ 780 を買って実感した 「ルンバの提供価値と新しい競争軸」


購入したルンバ 780 


先日、引越しをしました (2012年7月) 。


ルンバを購入


引越しを機に気になっていたルンバを買いました。

家庭用お掃除ロボットと言えばルンバという印象があります。先日の日経新聞記事にはルンバは国内で 70% 近いシェアとのことです (金額か個数かの何ベースかやデータソースは書いてませんでした) 。

参考:ロボット掃除機―アイロボット、シャープ (新製品バトル) |日本経済新聞 2012.8.9


買ったのはシリーズの最新で最高モデルのルンバ 780 でした (上記画像) 。公式サイトでは79,800円 (税込) ですが、ネットで調べてみたら45,000円くらいで売っていました。

翌日送られてきて早速使ってみました。まだ数回しかルンバで掃除していませんが、買ってよかったと実感できるほど便利です。
投稿日 2012/08/04

みんな大好き!コメダ珈琲店のビジネスモデル


先日放送されたカンブレア宮殿はコメダについてでした (2012年7月26日) 。放送内容はコメダのビジネスモデルが紹介されていました。

差別化されたコンセプト


まず印象的だったのはコメダのコンセプトである 「地域の人たちがゆったりできる場所を提供する」 ことでした。もともとはコメダ創業者である加藤太郎氏が 「お客がさっさと帰るような店は田舎では成り立たない」 と思い、事業を始めたのが原点だそうです。

コメダが一般の喫茶店とは差別化されていることがわかります。というのも喫茶店や飲食店では重要視している 「回転率」 をコメダでは追及していないのです。むしろお客さんには長居歓迎というスタンスです。
投稿日 2012/07/28

「仕組みの問題」 で考える Amazon と三河屋のサブちゃんの共通点




表面的な見た目の違いではなく、構造やメカニズムの違いに目を向けると新たな着眼点が見つかることがあります。起こった事象ではなく、背後にある 「仕組み」 に注目するのです。



Amazon のレコメンド機能


仕組みを考えると、A で成り立っている仕組みが B でも成り立たないか、という発想ができるようになります。

アマゾンと、サザエさんに登場する三河屋のサブちゃんで考えてみます。

アマゾンが力を入れている一つがレコメンド機能です。

レコメンド機能は、その人が買いたくなるであろう商品をおすすめしてくれます。レコメンドの元になっているのは、アマゾンでこれまで何を買ったか、欲しいものリストに何を入れているか、どんな商品を閲覧したかなどです。

確かに、レコメンドの精度はまだ不十分です。ある商品をクリックすると、おすすめ商品が関連するものばかりになってしまう時があります。もっと精度がよいレコメンド機能を期待しています。


三河屋のサブちゃん


アマゾンのレコメンドの仕組みは、購買情報や閲覧情報をアマゾンが持っているから実現できるものです。それだけ、ユーザーの一人ひとりを理解しているのです。

レコメンドをうまくやっているのが、サザエさんに登場する 「三河屋のサブちゃん」 です。

サブちゃんは、次のような一声とともに台所の勝手口に登場します。「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」 。

サザエさんも 「ちょうど良かった。お醤油が切れかけてたの。お味噌もいつものを持ってきてくれるかしら」 と、追加で味噌も注文します。

これができるのは、サブちゃんがサザエさん一家を知り尽くしているからこそです。

何も言わなくとも一回に頼む醤油の量も、どんな醤油が好みなのか、そろそろ醤油が切れかけていることも把握しています。頼まれなくても勝手口に現れて、「そろそろお醤油が切れかける頃だと思って持ってきました」 という絶妙のタイミングです。


アマゾンとサブちゃんの共通点


サブちゃんは、磯野家の購買情報やサザエさんたちの嗜好を知り尽くしているのでタイミングよくレコメンドし、さらに追加で別の商品も買ってもらっています。

お客のことを深く理解し、そこから購買を促すというアマゾンと三河屋のサブちゃんに共通する仕組みです。


課題設定と問題解決も 「仕組み」 で考える


背後の仕組みに注目するのは、様々な場面で有効です。例えば、何か仕事上でミスが起こり問題が発生した場合です。問題を把握し、課題解決するために活用できます。

ミスや不備が起こった時、ミスをした当事者を責めてしまいがちです。

原因特定を担当者という個人レベルだけで、対応や改善策もそのレベルにとどまってしまうと、次もまた同じことが起こる可能性があります。容易な対策はミスを起こしてしまった担当者を変えることです。しかし、もし発生原因がそもそもの仕組みの問題だとすると、新しい担当者も同じミスしてしまうかもしれません。

問題が起こった時は個人ではなく、問題に焦点を当てるべきです。

原因究明では、なぜ起こったのかの仕組みの問題として捉えるのです。その上で、ミスが起こらないような仕組みとしての改善と、ミスが発生しても早期に発見できるチェックの仕組みを構築するという2つのアプローチで対応します。

仕組みやメカニズムに着目すると、他の業務プロセスが活用できるのではないかという視点が持てます。A で成り立っている仕組みが、別の B でも成り立たないかという発想です。一人の担当者や責任者を責めるより生産的です。

ミスを起こした側・起こされた側の双方にとって、今後はミスをなくすという win-win を目指したいです。


最後に


今回のエントリーで言いたかったのは冒頭で書いた、見た目の違いではなく、構造・メカニズムの違いに目を向けると、新たな着眼点が見つかることです。普段から 「メカニズムはどうなっているのか」 と考えるクセをつけておきたいです。

投稿日 2012/07/22

戦略の本質を考えるための3つのポイント


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戦略とは、あるべき姿と現状の差を埋めるために 「何をやるか」 です。目的を達成するためにやることとやらないことが明確にしたものが戦略です。

今回のエントリーでは、戦略を考えるためには何が大切かを考えます。

投稿日 2012/07/14

誰も幸せにしない 「自分がやった方が早い病」 を克服する仕事の任せ方


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対応しきれない仕事量を抱え、残業をしないと終わらない状況はビジネスパーソンであれば、誰しもが経験のあることです。

自分でやった方が早い病 という本は、全てを抱え込むことの原因として 「この仕事は自分でやった方が早い」 と思うことを問題と捉えます。



本書に書かれているのは、「自分でやった方が早い病」 の原因と治療法、そもそもなぜ克服しなければいけないのか、本当の仕事の任せ方や人の育て方です。
投稿日 2012/07/07

勝ち続ける意志力:目的は 「勝つこと」 ではなく 「成長し続けること」


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最近読んだ本でよかったのが 勝ち続ける意志力 - 世界一プロ・ゲーマーの 「仕事術」 でした。



サブタイトルに 「世界一プロ・ゲーマー」 とあるように、著者の梅原大悟氏はプロの格闘ゲーマーです。ギネスで 「最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」 と認定されています。梅原氏の得意とするゲームは、ストリートファイターのような対戦型格闘ゲームです。


「勝つこと」 と 「勝ち続けること」 は根本的に違う


本書のタイトルは 「勝ち続ける意志力」 です。勝ち続けることに重きを置いています。冒頭のプロローグで次のように書かれています。

「結果を出す」 ことと、「結果を出し続ける」 ことは根本的に性質が異なる。勝つことに執着している人間は、勝ち続けることができない。
投稿日 2012/06/26

わずか3問:NBA ファイナルで見た秀逸な質問力


マイアミヒートのレブロン・ジェームス。引用:LeBron James - 2012 - NBA Finals MVPs|SI.com (2017年8月追記:リンク先が削除されていたので、こちらも削除しました)


NBA は、世界最高峰のバスケットボールを魅せてくれます。


マイアミヒートが6年ぶり2度目の優勝


2011-12年の今シーズンは、マイアミヒートの6年ぶり2度目の優勝で幕を閉じました。

NBA は普段から見ています。今年のプレイオフはカンファレンスファイナル (東西リーグ優勝決定戦) とファイナルは全試合を見ました。

マイアミヒートは 「3 Kings」 と呼ばれる、レブロン・ジェームス、ウェイド、ボッシュという3人のスーパースターを擁す強豪チームです。

昨年はファイナルで惜しくも敗れました。今年のファイナルは初戦で西リーグチャンピオンのオクラホマシティサンダーに負けたものの、その後は破竹の4連勝でした。事前の予想に反して、対戦成績は4勝1敗の圧勝でした。


興味深かった MVP レブロンへのインタビュー


ヒートの優勝が決まった第5戦の試合終了後、大歓声を送る地元ファンの前で優勝セレモニーに移りました。チームに優勝トロフィーが授与され、その後にファイナルの最優秀選手 (MVP) を受賞したのは、3キングスの1人であるレブロンでした。
投稿日 2012/06/23

今一番欲しい SPIDER から考える 「テレビの次の50年」


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2012年現在の家電メーカーがつくるテレビの方向性は、高画質化と 3D 対応でしょう。

よりきれいな (高画質) 、よりリアルな (3D) 映像をユーザーに提供するかに注力しており、「テレビの画面は、まだきれいでなくリアルではない」 という問題を解決しようとするものです。


現在のテレビの方向性は課題設定がずれている


果たしてこの課題設定の立て方は正しいのでしょうか?

課題設定の前提は、ユーザーは現在のテレビ画面の美しさに不満を持っていることです。少なくとも私自身はさらにきれいになるテレビ画面に魅力を感じません。課題設定がずれていると思います。

例えば、テレビの画像のきれいさは、YouTube や TED などの動画と比べるとすでに高いです。勝負にならないくらいテレビの圧勝です。

それでも TED は見ていていておもしろいし、英語やプレゼンの勉強にもなります。YouTube のバスケットボールやサッカーのゴールシーンを集めたもの、音楽やプロモーションビデオ、海外の動画も見ていて楽しいです。

つまり、魅力なのは映像の中身であって、画質ではないのです。これからのテレビの課題設定は、「いかにおもしろい映像や番組に出会えるユーザー体験を提供するか」 ではないでしょうか。


SPIDER の魅力


このイシューに挑戦しているのが、ベンチャー企業である PTP が開発している SPIDER (スパイダー) です。スパイダーは一言で言えば全録ができるハードディスクレコーダーです。


法人向けの SPIDER PRO


スパイダーの特徴は、次の通りです。

  • 最新の1週間の番組を全て自動録画できる。放送後の見たかった番組も後から自由に見られる
  • 検索機能が充実。番組をシェアできるソーシャル性にも注力
  • 使い勝手のよいリモコンなど、ユーザーインターフェイスを重視

スパイダーは法人向けと個人向けの2つがあります (上の画像は法人向けの SPIDER PRO です) 。

地デジ対応版はまだ法人のみしか出していません (2012年6月現在) 。個人向けが発売されたら買いたいと思っていたのですが、待ちきれず結局は他社のレコーダーを買いました。

もし今後、個人向けのスパイダーが出たら、今のレコーダーから買い替えます。なぜなら、スパイダーには他のレコーダーにはなく、そもそものテレビ視聴体験を大きく変える可能性が期待できるからです。


SPIDER の本質


スパイダーを放送された番組を全て録画する 「全録レコーダー」 としか見ないと、スパイダーが持つ可能性を見誤ります。

スパイダーの本質は、番組や CM のインデックス化と、検索やソーシャル機能による新たな発見です。

前者は主に検索のための番組情報データ整理です。ネットの世界でグーグルがやっていることをスパイダーはテレビでもやろうとするものです。今回は後者について書くので割愛します。詳しくは以下の記事にあります。

参考:テレビが進化する可能性を追う!日本の閉鎖的な放送業界を揺り動かす 「SPIDER」 のさらなるチャレンジ (佐々木俊尚)| 現代ビジネス


全録でも結局は予約録画と同じ


スパイダーを開発している PTP 社長の有吉氏によれば、単に全録機能だけを提供しても結局見るのは普段視聴している番組しか見ないそうです。

これは同社が2年間に渡って一般家庭モニターで行なった実験結果データからです。放送された番組を全て保存しておく全録でも、結局は知っているものしか見ないのであれば予約録画と変わりません。

スパイダーが目指すのは使いやすい検索機能と、ソーシャルによる自分が知らなかった番組の提供です。根底にあるのは 「テレビがつまらない」 ではなく、「おもしろいテレビ番組 / CM に出会っていないだけ」 という考え方です。

全録は、大容量のハードディスクを積み、多数のチューナーを設置すれば、家電メーカーであればできてしまうコンセプトです。

有吉氏は、「全録」 に懸けているのは 5% くらいだそうです。残り 95% は、どうやったら番組や CM を楽しく見られるか、どうやって面白いものに出会えるか、どのように友達や著名人のおすすめ番組を見ることができるかの実現を重視していると言います。新しい発見や埋もれている番組や CM とどうマッチさせていくか、そこばかり考えているそうです。


テレビの次の50年をつくる


スパイダーの目標は 「テレビの次の50年をつくる」 とのことです。

テレビが世の中に出て、その後にユーザー体験を大きく変えた1つにビデオの登場があります。番組を録画し自分の見たいタイミングで自由に見られるようになりました。

テレビ番組や CM はテレビ局の都合で番組表が組まれ、その通りに流すという構図です。視聴者はその時間に合わせてテレビをつける必要があります。この仕組みは今も基本的には変わりません。

視聴者の都合ではなく、見たいならその時間にテレビつけてくださいという発想です。それが無理なら自分で録画してくださいという考え方です。

ビデオ登場後、DVD やブルーレイ、地デジによる高画質なデジタル映像、3D テレビの登場もありますが、どれも過去の延長線でしかありません。ビデオ以来のイノベーションを期待するとしたら、「いかにおもしろい映像/番組に出会えるユーザー体験を提供するか」 という課題設定なのです。


本当の意味での 「通信と放送の融合」 「テレビのネット化」 とは


ここまでスパイダーの魅力を書いてきました。スパイダーが現在やろうとしていることも、本来のあるべき姿から逆算すると、まだ違う点もあると私は思います。

スパイダーの仕組みは、1週間程度の全放送番組を自動で保存しておき (全録) 、それを使い勝手に優れた検索やリモコン、ソーシャルサービスで 「新たな番組との出会い」 を提供しようとするものです。

ただ、例えば10,000人がスパイダーを使うとすると、1週間の放送データが、10,000人分それぞれのスパイダー内に記録されます。全体で見ると無駄が発生しています。なぜなら、全員が各自で全録をすればデータの重複が生まれるからです。

もし、中央に1つの全データがあって、それを各自が読みに行くという仕組みであれば、もっとシンプルになります。

発想はクラウドコンピューティングと同じです。各端末のローカル内にデータを置いておくのではなく、中央のクラウドにつなげるというものです。これがテレビでもできれば理想ではないでしょうか。

そうすれば、1週間という限られた期間ではなく、過去全ての番組が用意されており、検索やソーシャルからフィルターされ、自分が見たい番組、知らなかった新しいコンテンツの発見につながるテレビ環境です。

テレビ番組放映開始から50年以上の全ての番組や CM が中央にあり、自由に見られることがあるべき姿です。

もちろん素人の発想なので、現実的にやろうとするといくつもの技術的・コスト・政治的なハードルがあるのでしょう。

ただ、ネットの世界ではこのあるべき姿がすでに実現しています。100% 完璧ではないですが、それでもネットが便利なのはこの点にあります。

同じことがテレビの世界でもできる時、本当の意味での 「通信と放送の融合」 「テレビのネット化」 が実現します。


※ 参考情報

テレビが進化する可能性を追う!日本の閉鎖的な放送業界を揺り動かす 「SPIDER」 のさらなるチャレンジ|現代ビジネス
便利になるテレビへの想い- 「全録ブーム」 からの離脱宣言- 株式会社PTP 代表取締役 有吉昌康|株式会社PTP
2011年、SPIDER が変えるテレビの 「未来」 と 「可能性」 |現代ビジネス
「ソーシャル」 こそが再びテレビを甦らせる|現代ビジネス
投稿日 2012/06/17

Why からはじまるゴールデンサークル: シンプルかつ応用度の高い思考アイデア


Why からはじまる 「ゴールデンサークル」 を解説します。

✓ この記事でわかること
  • ゴールデンサークルとは何?
  • なぜ Why からはじまる?
  • ゴールデンサークルの応用例を知りたい ( → Apple の戦略、ビジネスシーンで解説)

ビジョンや目的などの 「Why からはじめるゴールデンサークル」 について、TED での動画内容からゴールデンサークルについて、Apple の戦略や仕事で応用する方法と併せて解説しています。

ゴールデンサークルは、ビジネスのみならず、プライベートでも役に立つシンプルなフレームワークです。ぜひ、この記事を参考に、お仕事で活かしてみてください。
投稿日 2012/06/16

テレビでターゲティング広告は実現できるのか:理想と現実のギャップ

ネット広告の世界では人によって見せる広告の内容を変えるターゲティング広告は当たり前のように使われています。具体的には、そのユーザーが過去にどのウェブページを見たか、何の広告が表示されたかや実際にクリックしたか、どんな検索をしたか等の、行動データから機械的にその人に最も適切であろう広告を表示させています。広告を見せる人を絞り、より広告の効果を高めるやり方。

つい最近見た記事でもフェイスブックのターゲティング広告の話題があり、このへんの話は日進月歩という感じです。このフェイスブックの広告システムはクッキーを使ってユーザーの行動履歴を取っているとのこと。
Facebook Tests Real-Time Ad Targeting Based on Web Browsing Activity|HubSpot Blog

■ターゲティングが弱いマスメディアの広告

一方、それに比べてテレビなどのマスメディアでは広告のターゲティングはできていないのが現状です。ネットでは同じウェブページを見ていても、見る人により表示させる広告が違いますが、テレビは見る人によってCMが異なることはありません。今、日テレで流れているCMは視聴者全員が同じものを見ているのです。

視聴者全員に同じものを見せるというのはメリット/デメリットがあって、メリットとしては一度に多くの人に広告を見せることができます。専門的にはリーチ率と言いますが、テレビでは一般的に視聴率1%で100万人が見ているとされているので、単純計算では視聴率10%の全国ネットの番組にCMを流せば1000万人にCMを見せることができる。(もちろん、CMは流れていても見ていない、トイレとかで離れていることもあったり、そもそも視聴率1%は普通は世帯ベースなので、100万人という人ベースに置き換える計算も正確ではないのですが)

デメリットは、全員に見せるということは、広告のターゲットができていないということなので興味のある人にもない人にも一様に見せるので、どうしても無駄が発生します。TVCMを放映するのに大きなお金をつぎ込みますが、無駄があるほど費用対効果が悪くなります。

■ターゲティング広告配信機能を持つインテルのTVセットトップボックス

Mashableの記事によればインテルがテレビCMのターゲティングを可能にするセットトップボックスを開発したとのことです。
Intel Set-Top Box Uses Face Recognition to Target Ads to You [VIDEO]|Mashable

機能としては、インテルのセットトップボックスに搭載された顔認識技術により、TVを見ている人の性別や大人/子どもを判定し、そこからより適切なテレビ広告を表示させるようです。記事によれば認識するのは性別とか大人か子供かくらいのレベルで、個人までは特定しないとあります。おそらく技術的には事前のユーザー登録と顔認識技術でもっと詳細に個人を特定できる気はします。例えばセットトップボックスに性別・年齢・趣味・興味のあるジャンル(美容/ダイエットとか)、などに加えて顔写真を登録するイメージ。が、あえてそこまでしないのでしょう。

インテルのセットトップボックスのメリットとして、広告主には広告のターゲティングができること、視聴者にはセットトップボックスを買って使ってもらうことで、テレビや番組視聴の料金が下がるようです(なお、アメリカでは日本と違いケーブルテレビが主なので有料でテレビを見るという感覚が強いです)。

記事の最後の方に少しだけ触れていたのが、このインテルのセットトップボックスはニールセンの視聴率調査とも何かしらの連携があるようで、アメリカではニールセンのテレビ視聴率調査は日本でいるビデオリサーチのような存在なので、個人的にはこちらも気になる動きです。

■テレビでターゲティング広告をするには

顔認識で広告を出しわけるセットトップボックスは色々と興味深いのですが、出しわけが性別と大人or子供というのは切り口としてはまだまだ不十分です。これだけだと2×2マトリクスの4象限しかないので、絞っていると言ってもターゲティングとしては粗い。どこまで効果的な広告を表示できるか。

方向性としては、テレビもネットの世界と同じように今後はターゲティング広告に進んでいくはずです。テレビでもターゲット広告を実現するにはどうすればよいか。ちょっと考えてみると、

1つはインテルの顔認識のようなテクノロジーで見ている人を識別すること。前述のようにもっと細かく「その人が誰か」を判別できるようになれば、その条件に合う広告表示も可能になってくるかもしれません。ただし、これ系の技術は高度なテクノロジーを使うほどコストもそれだけ上がるので費用対効果の制約が大きくなるように思います。研究やアカデミックには色々とできるのですが、ビジネスとしてやる場合はコスト感が全然合わないという状況です。

2つ目、ネットで行動履歴データから表示広告を出しわけることをテレビでも応用する。実際にこうした技術があるのかあまり詳しくないのですが、過去に見た番組からその人の嗜好性を判定し、より興味のありそうな広告を表示させることです。いずれテレビもパソコンなどと同じように将来的にはネットにつながるのが普通になると思うので、テレビの過去視聴情報だけではなく、ネットの過去履歴も色々と統合すると、ターゲティング精度はもっと上がるかもしれません。よく「つづきはWebで」というテレビ-ネットを連動させるクロスメディアで広告を出す例がありますが、実際にテレビとネットがつながることでシームレスな広告展開ができるようになるのかもです。

3つ目、テレビにフェイスブックやツイッター、その他SNSの情報を統合して、その人に刺さるような広告を表示する。これをやる場合は2つ目同様にプライバシー/個人データ利用とかでハードルは高そうですが、SNSからその人の興味関心を導き出したり、友人おすすめ商品を広告として表示させる。おそらく上記2つ目も同時に実現される気もするので、今よりもターゲティング精度は上がります。

これら以外にも、テレビと手元のスマホを連動させて、スマホサイドでターゲティング広告を出すというダブルスクリーンを活用することも考えられます。個人的にはこちらも興味があるのですが、ちょっと長くなりそうなので割愛。

■あらためて広告について少し

テレビCMについて色々と書いてきましたが、個人的な問題意識としてはTVCMに無駄が発生している点です。ムダというのは、興味のある人にもそうでない人にも一律に見せることでせっかく広告投資をしてもどうしても捨て金が発生すること。視聴者にとっても興味のない広告を見せられるほどつまらないものはないので、結果どうなるかというとCM中はチャンネルを変えたり、録画視聴であればCMスキップされてしまう。

広告をつくること、広告枠を買うこと、広告を流すこと、それぞれにお金がかかっていて、これらの広告コストはめぐりめぐって商品/サービス価格に反映されます。つまり、広告コストは結局は消費者が負担する構図。考えてみれば、普段の生活で朝のスマホから始まり出かける前のテレビ、移動中の電車内の広告、該当広告、PCで見るネット広告・・、とそれこそ1日中、私たちは広告に接触しています。それだけ見た広告の中で印象に残る広告はどれだけ少ないことかがよくわかります。これだけ広告があるのに、ほとんどがスルーされている状況は社会全体で見た場合にそれだけ無駄が発生しているのではないでしょうか。

TVコマーシャルでも、いくつかは見ていておもしろいCMがあると思っています。広告自体がおもしろいクリエイティブに優れたもの、思わず興味が湧くCM、買ってみてもよいかなと思わせるCM、店頭でそのCMを思い出して手に取ってみる、以前に買ったもののCMを見るともう1回買ってもいいかなと思ったり。

理想論の世界ですが、自分の見るCMが興味関心があるものばかりで、TV番組と同じくらい見ていておもしろい状況が本来あるべき姿なのかなと思っています。



※参考情報
Facebook Tests Real-Time Ad Targeting Based on Web Browsing Activity|HubSpot Blog
Intel Set-Top Box Uses Face Recognition to Target Ads to You [VIDEO]|Mashable
Insight: Intel's plans for virtual TV come into focus|Reuters
日テレ、TV番組の盛り上がり表示できるスマホアプリ-Twitter連携「wiz tv」。過去番組や他局対応も|AV Watch

投稿日 2012/06/09

行動科学マネジメント:夢をかなえるガネーシャの教えを実践するために


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本棚を整理してたら出てきた本が、夢をかなえるゾウ でした。読んだ方も多いかもしれません。2007年のベストセラーの1つです。



ガネーシャの教えは 「行動を起こし実行すること」


「夢をかなえるゾウ」 で言いたかったことは至ってシンプルです。自分を変えるには行動に移して実行すること、知るだけではなく自らで体験し継続させることです。

主人公に1日ずつガネーシャの課題が与えられます。課題は全部で29個あります。

投稿日 2012/06/02

「絶対赤字」 の非常識に挑んだクロネコヤマトの競争戦略


昨夜仕事から帰ると、マンションの宅配ボックスにアマゾンで注文した本が届いていました。

いつものようにクロネコヤマトの宅急便です。

今回は、クロネコヤマトの競争戦略についてです。
投稿日 2012/05/26

何のために働くか? 「働き方革命」 を自分ごと化する


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働き方革命 - あなたが今日から日本を変える方法 という本は、働くことについて、より広い視点で考えさせてくれる本です。



本書の内容


本書の内容紹介から引用です。

残業・休日出勤して、人生を会社に捧げる時代は過ぎ去った。長時間働いても、生産性が高くなければ意味がない。

誰よりも 「働きマン」 だった著者がどのように変わったか、そして仕事と共に家庭や社会にも貢献する新しいタイプの日本人像を示す。衰えゆく日本を変えるには、何よりも私たちの 「働き方」 を変えることが、最も早道だ。

なぜか?その答えは本書の中にある。


働きマンを変えたきっかけ


働きマンだった著者を変えたのは、2つのきっかけがありました。
投稿日 2012/05/19

Withings Body Scale:かっこいいクラウド体重計の3つの価値

ここ最近はあまりモノを買わなくなったのですが、久々に満足したのが先月(2012年4月)に買った新しい体重計です。


クラウド体重計を購入


Withings Body scale です。Wi-Fi 機能を内蔵しているクラウド型体重計です。




体重や体脂肪量が測れるだけではなく、体重計から Wi-Fi 経由で測定データが自動的にクラウドへアップロードされます。データはグラフ化され、iPhone などのスマホアプリやパソコンからウェブブラウザで見られます。



投稿日 2012/05/06

ケータイ⇒スマホの進化から「あるべきスマートTV」が見えてくる

モバイルについて、今から10年後とか20年後に歴史を振り返った時に、2007年がターニングポイントの1つだったと言われると思っています。

07年はiPhoneが登場した年。ターニングポイントとは、iPhoneがスマートフォンというそれまでの携帯電話にはなかった新しいモバイルを定義付けたということです。

■iPhoneと携帯電話のユーザーインターフェイス

iPhoneが変えたこと、それは画面に直接触れて操作するタッチパネル、ビジネスから遊びまで多種多様なコンテンツが揃うアプリ、インターネットやクラウドを活用したネットワークなど、それまでの携帯電話にはなかった利便性をもたらしてくれました。

初めてiPhoneを手にした時の感動は今でも覚えています。デモ映像とか店頭で使ったことはあったのでイメージは持っていましたが、それでもiPhoneの使い易さはついさっきまで使っていた携帯電話とは全くの別物。久々にワクワクする体験でした。iPhoneでいつでもどこでもネット閲覧/検索、アマゾンやネット通販での注文、アプリも有料版をダウンロードすることもいつの間にか普通になっていました。

ただよくよく考えてみると、こうしたiPhoneでできることの多くはそれまでの携帯電話でもできたことに気づきます。ネットもあったし、ケータイから買いものもできるようになっていた。アプリもiPhone用ほどではないにしろ提供されていた。それでも携帯では全くと言っていいほどこれらは利用していませんでした。

なぜか。当時の携帯電話とiPhoneを比べるとあらためて思うのが、携帯は使いにくかったということ。できることは知ってて一回くらいは試したけどあまり便利とは思いませんでした。ネットにつないでもクリックしたいところに行くには十字キーボタンの↓を何回も押さないといけないし、コンテンツやアプリも十分ではなく、スマホとPCがクラウド経由でシームレスにつながっているようなこともなく携帯だけで独立した存在だった。もちろんこれらの「使い勝手の悪さ」は、携帯しか持っていなかった頃はそこまで不満には思っておらず、iPhoneと比べたからこそわかることです。

■テレビとケータイの類似性

テレビについても、ここまで述べたケータイ⇒スマホへの進化と同じことが起こると思っています。去年くらいから「スマートTV」という表現がよく出てくるようになってきて、実際にGoogle TVなどがアメリカでは売られるようになっています。

でも今現在のスマートテレビは、モバイルで言うとiPhone登場前のブラックベリーあたりの段階なんだと思っています。で、現在主流の薄型テレビはケータイに当たります。ケータイとテレビを比較するととても似ている状況にあることがわかります。

例えばテレビのリモコン。下図はうちにあるテレビリモコンとほぼ同じですが、こんなに機能があるのかと思うほどの多くのボタンがついています。ここには載っていませんが、手元にあるリモコンはフタがパカっと開いて、その下にもさらにボタンがある。ボタンの多くは普段はほとんど使わないし、中には何のためかもよくわかっていないボタンもあったりします。


テレビ画面上に番組表(EPG)が表示され、予約録画は番組表から撮りたい番組を選ぶやり方は便利といえば便利ですが、目的の番組まで移動させるにはリモコンの十字キーボタンを押さないといけません。大抵の場合、何回も押すことに。

最近のデジタル対応のテレビには「アクトビラ」というネット接続サービスがほぼ標準で付いていると思います。アクトビラはソニーやパナソニック、シャープなどの主要メーカー間で統一されたテレビからのネット接続ポータルで、利用するためにはテレビにLANケーブルをつないで簡単な設定をするだけだったりします。つまり、今の多くのテレビにはすでにネットへの接続機能がついています。でも、アクトビラは使ったことがありません。アクトビラの認知率や利用率を正確に把握しているわけではありませんが、多くの人が同じ状況でしょう。なぜ使わないかというと、アクトビラで提供されるコンテンツが少ないのと、リモコン操作が前提の使いにくさがあると思います。スマホとかタブレットでの操作性に慣れてしまうと、リモコンでの操作は一世代前という感じです。

■あるべきスマートTVとは

こうした状況が、今のテレビの状況はiPhone登場前のケータイにそっくりだと思った理由です。この話をGWで会った家族にしてみましたが、リモコンや番組表操作などの使い勝手を「使いにくい」とは特に思っていなく、iPadのテレビ番組表を指でさくさく動かせるタッチパネル操作と比較して、初めて気づいていました。iPhoneでなくてもスマホの操作性と、テレビのリモコンやデータ画面の操作性を比較すると、大きく違うことがイメージできると思います。

だから期待したいのは、テレビにおける「iPhone」の登場です。大量に並んでほとんど使われないボタンばかりのリモコンではなくユーザーインターフェイスが優れ、見たい映像が「いつでも/どこでも」見られる環境、ネットやクラウドとも連携したテレビ。こうした圧倒的に使いやすいテレビです。これら全てが実現できて初めて、「スマート」という言葉が付くに相応しいテレビになると思います。iPhoneの登場後、多くのメーカーがiPhoneのような全く新しいモバイルをリリースし、スマートフォンという言葉が一般的となったような流れです。

真にスマートTVと呼べるプロダクトを出せる最有力候補は、やはりアップルだと思います。リモコンは今のApple TVのような超シンプルなものにしてくる、もしくはSiriを搭載した音声でテレビをコントロールする方式かもしれません。iTunesには様々なジャンルの映像が用意され、iPhoneやiPadとも連携する。iCloudが中心となったネットワーク。

アップルではなくてもいいのですが、本当にスマートテレビと呼べるテレビは今のテレビの延長上にはないことだけは確かだと思います。スマートフォンがケータイとは別物だったように。操作性、コンテンツ、ネットワーク、これらがスマートテレビのキーワードだと思っています。

思えば、日本でテレビのリモコンが本格的に登場したのが1970年代、VHSの録画が1980年代です。この2つはテレビのユーザー体験を大きく変えました。その後、確かに画面はデジタル放送に切り替わったことできれいにはなりましたが、リモコンや録画ほどのインパクトではないと思っています。テレビもそろそろ次のステージに移ってもいい頃ではないかと期待しています。




※参考情報
アクトビラ
Apple TV

投稿日 2012/05/04

絶対不可能を覆した 「奇跡のリンゴ」 というイノベーション


引用:木村興農社【木村秋則オフィシャルホームページ】


立ち寄ったブックオフで手にとったのが 奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録 という本でした。



この本は NHK のプロフェッショナル仕事の流儀で2006年に放送され大反響を呼んだ、りんご農家・木村秋則さんの話を書籍にしたものです。

サブタイトルに「絶対不可能を覆した」とあります。不可能と言われたリンゴの無農薬・無肥料での栽培を実現したストーリーが書かれています。

無農薬無肥料栽培という非常識を打ち破り、世の中に新しい価値を生んだというイノベーションの話で、おもしろく一気に読めました。


リンゴ栽培に農薬を使わないという「非常識」への挑戦

投稿日 2012/04/30

ドリルを売ろうとした Sony と、穴を開けるサポートをした Amazon

今日で4月が終わるので、2012年も3分の1が経過したことになります。時計で言うとちょうど20分のところに針がある状態です。

12年の今年は今のところコンスタントに本が読めていて、1ヶ月で20-25冊程度、4ヶ月ではほぼ100冊くらい読みました。このうちの8割以上はアマゾンから買った本です。感覚的には9割に近いくらいかもです。それくらい本はアマゾン経由で手に入れています。

本をアマゾンで買うのに何が魅力かって、中古も含めた豊富な品揃え、モバイルからでも手っ取り早く注文ができて、安定した配送の仕組みですぐ届く、送料無料、あたりかなと思っています。トータルでの提供サービスが素晴らしいです。


電子書籍を理解する3つのフレーム


次にアマゾンに期待したいのはキンドルです。電子書籍を読める環境のサービス提供です。

電子書籍は、電子書籍端末という 「デバイス」 、電子化された本という 「コンテンツ」 、電子書籍を手に入れるための 「プラットフォーム」 という3つの層で考えるといいと思っています。アマゾンへの期待はデバイス、コンテンツ、プラットフォームというトータルでの電子書籍サービスの提供です。
投稿日 2012/04/28

「象の足を見るな」:新入社員の時に教えられ、今もなお考えさせられる話

「象の足を見るな」 。この言葉は新社会人となって会社に入社してに、当時の副社長に言われたことです。

その心は、部分ではなく全体像を見ることの大切さです。


群盲象を評す


今でもよく思い出す教えです。当時も今も変わらず心がけています。象の足になるなという例えは、「群盲象を評す」 という寓話をもとにした話でした。以下は、Wikipedia からの引用です。

盲人達は、それぞれゾウの鼻や牙など別々の一部分だけを触り、その感想について語り合う。しかし触った部位により感想が異なり、それぞれが自分が正しいと主張して対立が深まる。しかし何らかの理由でそれが同じ物の別の部分であると気づき、対立が解消する、というもの。

盲人は6人いて、象に触れた時の各自の答えは全く違ったという話です。
投稿日 2012/04/21

書籍 「失敗の本質」 に見るガラパゴス化とイノベーション


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下記の表は、名著 失敗の本質 - 日本軍の組織論的研究 で指摘された太平洋戦争 (大東亜戦争) 時の日本軍と米軍の戦略と組織特性の比較です。


引用:失敗の本質 - 日本軍の組織論的研究


日本軍と米軍のそれぞれの特性を並べてみると、相互に関係していることがわかります。日本軍の特性をまとめると次のようになります。

  • 日本軍は戦略には明確なグランドデザインがなく目的があいまいで、短期決戦を好む傾向にあったこと
  • 短期決戦志向のために戦略オプションでは代替案 (戦況が変化した場合のプラン・対応計画) が乏しかった
  • 組織特性においても、人間関係を重視し成果よりも動機や敢闘精神を重視した集団主義

本書がおもしろいのは、6つの戦い (ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦) から上表のような日本軍と米軍の戦略・組織特性比較を明らかにするだけではありません。

さらに深掘りしなぜ日本軍は失敗したのか、そして現在にも活かせる失敗の教訓を残している点にあります。
投稿日 2012/04/14

リアルタイムウェブ中毒だった自分と今の自分




インターネットは、もはやこれ無しでは自分の生活が成り立たないほど、プライベートも仕事でも様々なシーンで使っています。

何かわからないことや調べる時はネットで検索、ニュースもテレビや新聞からではなくツイッターや RSS などの各種サービスから、友達とのコミュニケーションもソーシャルメディアを使います。ネットが当たり前になっています。

ネットは便利です。間違いなく人々の生活を変えました。しかし、2012年の今年になって私自身はネット利用時間を意図的に減らしています。
投稿日 2012/04/08

「勝ち続ける経営」 を続けるマクドナルドのすごさ




マクドナルドが昨年2011年期の既存店売上高は前年比プラス (1.0% 増) であったと発表しています (2012年1月5日) 。


業績は V 字回復


これで2004年から8年連続の対前年プラスです。驚異的とも言える成長を続けているマクドナルドですが、実は2003年までは7年連続のマイナスでした。2004年を堺に V 字回復をしているわけです。


引用:ダイヤモンド・オンライン


V 字成長を牽引しているのが、マクドナルド代表取締役会長兼社長兼 CEO の原田泳幸氏です。今回のエントリーではマクドナルドの経営について取り上げ、何がすごいのかを思ったところを書いてみます。

参考にした本は2冊です。

勝ち続ける経営 - 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
マクドナルドの経済学
投稿日 2012/04/01

Google Consumer Surveys の価値:グーグルの新しいビジネスモデルはネットリサーチの破壊的イノベーションとなるのか


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グーグルが米国時間2012年3月29日に、新しいビジネスモデルを発表しました。

Google Consumer Surveys というマーケティング調査アンケートによるマネタイズを狙うものです。さすがグーグルと思ってしまう仕組みです。

今回のエントリーは、Google Consumer Surveys の仕組みと価値、要するに何を意味するのか (So what?) 、課題を書いています。
投稿日 2012/03/31

ここ最近考えている4層フレームワークと、コミュニケーションとコンテンツの話

当たり前のように使っているiPhoneや、ツイッターなどのソーシャルメディア。このへんを自分が使いだしたのはここ5年以内くらいであることにふと気づきます。

今から5年前の2007年当時を思い返してみると、携帯電話はケータイと表現される今でいうフィーチャーフォンでした。SNSと言えばmixiだったし、ソーシャルゲームも今ほど話題を呼んではいなかった。当時、ケータイを使って何をしていたかというと、キャリアのメールや電話のコミュニケーションが中心で、今スマホでやっているようなネット閲覧、ソーシャルサービスの利用、あるいは動画などのコンテンツを見る/遊ぶのようなことはほとんどしていなかったはずです。ちょっと話が脱線しますが、最近は「ケータイ」という表現をあまり見なくなったように思います。「スマホ」が多い。もしかしたらケータイという言葉は死語になりつつあるのかも。

2007年と今を比べると、ここ5年くらいで大きく変わったんだなとつくづく思います。その要因をあらためて考えてみると、(1)ネットワークのインフラは高速/大容量通信がコストを下げながら実現され、(2)モバイルデバイスは2007年にiPhoneという新しいスマートフォンの登場とGoogleがAndroid OSの無料オープンにしたことでアンドロイド端末との競争、(3)ツイッターやフェイスブックあるいはGREEやモバゲーなどのプラットフォームが次々につくられ、(4)プラットフォーム上で音楽・動画・ゲームなどのコンテンツプロバイダーが展開する。これら4つの要素:インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの成長や変化がここ5年くらいで多くを変えてしまったのではと思います。

■4層のフレームワーク

この4層は、今の状況がどうなっているのか、あるいは今後はどう変わるのかを考えるために役に立つ切り口だと思っています。例えば2007年くらいというのは、4層は携帯キャリアがほぼ独占できていたように思います。ドコモなんかが典型で、
  • インフラ:ドコモが提供する携帯回線
  • デバイス:ドコモ仕様で携帯製造メーカーが作ったケータイ
  • プラットフォーム:iモード
  • コンテンツプロバイダー:iモード向けに様々なコンテンツを提供
こうして見ると、きれいに囲い込みができていますよね。ドコモ以外の例えばauでもez webというプラットフォームを持っていて、それぞれのキャリアが4層で独自のエコシステムを展開していました。

ところが2012年現在を考えると、4層には様々なプレイヤーが存在しキャリアの影響力は小さくなっている状況がうかがえます。
  • インフラ:キャリアが提供する携帯回線、Wi-Fiなど
  • デバイス:iPhone、Android。スマホやタブレットなど種類も増加。必ずしもキャリアに依存していない
  • プラットフォーム:フェイスブック、ツイッター、グーグル。GREE、モバゲーなどのコンテンツプラットフォーム。LINEなどのコミュニケーションプラットフォーム
  • コンテンツプロバイダー:ソーシャルメディアと連携された音楽/動画、ゲーム、など

最近、仕事でスマホを使うことがあったのですが、発注して新しく届いたアンドロイド端末を使用してみて思ったのは、使うのにあまりキャリアを意識することがなかったことでした。どういうことかと言うと、アカウントはGoogleアカウントで登録し、メールも@docomoではなく@gmailがあれば十分。電話もスカイプとかLINEなどのアプリを使えばいいし、ちょっとしたコミュニケーションだったらフェイスブックからもできてしまう。動画はYouTubeやTEDのアプリで余りあるほど見られるし、ゲームもAngry BirdsとかGREEとかいろんなアプリが用意されている。携帯会社というキャリアは携帯回線の4層で言うインフラ部分くらいです。

■コミュニケーションとコンテンツの2つに

ところで、自分がネット上でやりとりしている情報(データ)は大きく分けてしまうと、コミュニケーションとコンテンツの2つだと思っています。それぞれ具体的には
  • コミュニケーション:通話・メール・チャット。検索した言葉や何を買ったかなど人が発する情報も含む
  • コンテンツ:映画/動画・音楽・ニュースなどの情報やゲームなどのエンターテイメント
ニコニコ動画などは、動画を複数ユーザーで視聴しながらコメントをつけるなどのコミュニケーションの要素もあるので、コミュニケーションとコンテンツの両方を要素を持つ場合もありますが。

大きな方向性として、コミュニケーションは無料化の方向に、コンテンツは無料化と一部有料化に分かれると考えています。コミュニケーションは人と人とのやりとりなので、本来はそこにお金はかからないもの。コミュニケーションをする相手が目の前にいれば直接話すので、特にお金がかかるとかはありません。コミュニケーションを物理的に離れた人と、あるいはメールなどで時間差を使って行なうニーズが起こり、そのためにはコミュニケーションインフラを使うことになった。インフラ構築/維持にコストがかかるのでその分をユーザーが負担するため、携帯電話で電話をしたりメールを送るのに相応の料金が発生しています。

それが、技術の進歩やビジネスモデルを工夫することで無料で使える様々なコミュニケーションサービスがでてきています。電話であれば、スカイプやLINE、Viber、050プラスなどは基本無料。メールもドコモなどの携帯キャリアが提供するアカウントではなくGmailを使えばタダ。これが前述のコミュニケーションが無料化する流れです。

次にコンテンツの無料化と一部有料化。無料コンテンツの代表例は天気や電車/交通情報、ニュースなどでしょう。ニュースは日経や朝日が有料化に積極的ですが、国内外の出来事をざっと知るくらいであれば無料で手に入ってしまいます。これに比べ、お金を払ってでも見たい/遊びたいコンテンツは有料モデルが成立します。有料モデルとはユーザーへの課金モデルのことで、身近な例ではソーシャルゲームが当てはまります。もちろん基本無料で遊べますが、ゲームにハマってしまうと有料アイテムを使うケースも増えユーザーへの課金が発生します。逆に言えば、ユーザーはゲーム内のアイテムにお金を払ってでも遊びたい、ゲームを続けたいというニーズです。有料コンテンツは海外のほうが整備されている印象で、NetflixやHuluなどの有料動画サービス、Spotifyといった課金モデルの音楽サービスなど。無料登録だけでも利用できますが、有料会員になることでより便利に使えるようになります。フりーミアムモデルとも呼ばれている世界です。

■4層への影響

コミュニケーションの無料化と、コンテンツは無料化/有料化は、4層それぞれに影響を与えます。

インフラ:無料コミュニケーションにシフトしコンテンツ使用のためのデータ通信量が増大。ドコモやauなどの通信障害がたびたび発生しましたが、今後も増え続けるスマホユーザーとユーザーごとの利用データ量のダブルで増えるのでインフラ構築コストがかさみます。それに耐えられなくなったときに定額制がデータ従量制になるかもしれません。ネットワークの中立性という継続課題もあります。

デバイス:コミュニケーションとコンテンツ利用をするには不可欠なデバイス。スマホは先進国だけではなく低価格で多機能な端末提供されると新興国でもユーザーが爆発的に増えそうです。PCはないけどモバイルはある、コミュニケーションインフラが整っていない新興国ではモバイルでのコミュニケーションが無料というのは大きい。その後はゲームなどのコンテンツユーザーも増えるのでビジネスチャンスは広がりそうです。

プラットフォーム:コミュニケーションやコンテンツを提供するプラットフォーム。人間関係が構築されるフェイスブック、人間関係+興味のツイッター、ビジネスでの人間関係のリンクトイン。グローバル展開を加速させているGREEやモバゲーなどのゲームコンテンツプラットフォーム。プラットフォーム上ではコミュニケーションが行われ、ユーザーはコンテンツを利用する。無料サービスは今のところ広告モデルで成立させ、一部コンテンツを有料化するというビジネスモデルです。

コンテンツプロバイダー:同じコンテンツでも利用範囲が制限される無料版は広告モデルで、より便利なサービスは有料版でコンテンツを提供します。コンテンツが、お金を払ってでも利用したくなるようなプレミアムなものと、CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)などの無料で利用できるものに分かれていく。

■最後に

冒頭で2007年と2012年現在を比べましたが、5年後の2017年には今とは大きく変わっているはずです。変化の幅は07年⇒12年よりもっと大きく変わっているかもしれません。「そういえばあのころはフェイスブックとかあったよね」みたいな会話をすることになるのかもしれません。人間関係のプラットフォームは今のところはフェイスブックですが、5年後もそうとは限らないのです。

インフラ、デバイス、プラットフォーム、コンテンツプロバイダーの4層で、これから何が変わり、何が変わらないのか。変化の激しい時代にいますが、表面的なことに振り回されず本質を見落とさないようにしたいものです。

投稿日 2012/03/24

ドラッカーとチキンラーメンから考えるイノベーション




ドラッカーは、著書である マネジメント - 基本と原則 において、企業の目的を 「顧客を創造することである」 と定義しています。企業の基本的な機能は、マーケティングとイノベーションの2つと言います。


1. マーケティング

ドラッカーは、マーケティングは顧客の欲求を考えることから始めよと説きます。顧客は何を買いたいのか、顧客が求めている価値は何かです。


2. イノベーション

ドラッカーはイノベーションとは 「いまだかつで誰も行ったことがないことを行なうこと。誰も知らないことをすること」 だと言います。

科学や技術そのものでではなく価値であり、組織の中だけではなく、組織の外にもたらす変化です。イノベーションの尺度は外の世界にいかに影響を与えられるかであると言っています。


世界初のインスタントラーメン商品 「チキンラーメン」


これはイノベーションだと思うのは、チキンラーメンです。
投稿日 2012/03/20

できない社員が一気に伸びる 「行動科学マネジメント」 はゲーミフィケーションでもあった


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組織や部下のマネジメント方法の1つに、WILL PM が提唱する 「行動科学マネジメント」 というものがあります。

今回のエントリーは、行動科学マネジメントをご紹介します。


行動科学マネジメントとは


名前に行動科学とあるように、行動科学マネジメントは人の行動そのものに焦点を当てます。行動をより具体的に分解して目標を達成させる手法です。結果を生むプロセスに目を向けます。

ベースとなる考え方は 「結果とは行動の積み重ねによって生まれる『産物』である」 です。行動科学マネジメントは3つのステップで成り立っています。

  1. 行動が起こせるレベルまで分解する
  2. チェックリストをつくる
  3. 行動することに 「快」 を与える (例: ほめる)
投稿日 2012/03/17

情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか

ここ最近よく考えるのは「パーソナライズ化」というキーワードです。パーソナライズ化とは、簡単に言えば「あなただけにカスタマイズされたサービス」というイメージで、例えばアマゾンではこれまで買った商品と関連のあるものを「あなたへのおすすめ」という形でレコメンドする機能があります。同じアマゾンを利用しても購買行動によりパーソナライズ化がされています。あなたが見ているアマゾンと、私が見ているアマゾンは同じではないのです。

■パーソナライズ化って何?

ウェブでのパーソナライズ化は実はいろんなところで起こっています。自分のアカウントでログインして利用するサービスは、多かれ少なかれほぼ全てでパーソナライズ化されていると思っていいでしょう。例えばツイッターやフェイスブックではフォローする人やつながっている友達により中身が全然違ってきます。

あるいはグーグル。グーグルの検索では、自分のアカウントでログインしている状態とログアウトしている時での検索結果は、同じ検索キーワードでも微妙に違っていたりします(試しにやってみると実感できるかと思います)。なぜこのようなことが起こるかと言うと、グーグルでは過去の検索履歴やウェブ閲覧履歴、すなわちウェブでの行動履歴を取っているので、そこからグーグルはアカウントごとに特徴づけています。つまり、グーグルはウェブ行動から「あなたはこういう人だよね」という人物像をつくっていて、検索結果はそれに最適なものを返している。だからアカウントでのログイン状態(パーソナライズ化)でとログアウト状態(匿名化)では結果が異なるのです。

■なぜパーソナライズ化をするのか

ではなぜグーグルはパーソナライズ化をしているのでしょうか。同じキーワードでの検索結果は誰がやっても同じ結果を返すほうが仕組みとしてはシンプルです。でもグーグルはアカウントごとに「あなたにはこの検索結果が欲しかったんだよね」とカスタマイズしてくれているのです。

1つの理由は、ユーザーにとってより使いやすいサービスの提供です。同じキーワードでの検索でも、人によって知りたいことは違っていたりします。であれば、その人に最適なサービスを提供しよう、そうすればもっと自分たちのサービスを使ってもらえる、ユーザーも自分たちもWin-Winになれる、そういう考え方です。

別の側面としては、広告のパーソナライズ化でしょう。実はこっちがグーグルが本当にやりたいこと。広告のパーソナライズ化はあなたにとっての最適な広告を表示させることで、実現すればより効果的な広告をユーザーに提供できます。効果的というのは、より興味関心の持ってもらえる広告だったり、買いたくなるもの、一度買ったものをもう一度買いたくなるような広告です。グーグルの収益の大部分はネット広告から上げているので、これは企業としては当然の考え方だと思います。

■メリット

パーソナライズ化は一見するとユーザーにとってはとても便利に思えます。以前のエントリーでもパーソナライズ化について取り上げていますが(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記)、今もよく使っているキュレーションアプリであるzite。ziteとはiPhone/iPad用のアプリで、パーソナライズ化されるデジタルマガジンみたいな感じです。自分の興味あるテーマの記事を自動的に集めてくれるもので、例えば「ソーシャルメディア」、「モバイル」、「マーケティング」、「Google」、「Facebook」などのキーワードで登録しておくと、関連する記事が表示されます。さらに、ziteでの記事閲覧行動履歴データを集め、独自のアルゴリズムでパーソナライズ化してくれ、使えば使うほど「あなただけのデジタルマガジン」になる。雑誌には編集者がいますが、ziteの編集者は行動履歴データに基づくアルゴリズムというイメージ。

グーグルもアマゾンも自分に最適な情報を提供してくれる、より探していたもの、知りたかったこと、買いたかったものを見つけるメリットは大きいでしょう。あるいは、フェイスブックではよく知っている友達がいて、人間関係のパーソナライズ化ができている。これらはパーソナライズ化のメリットです。

■デメリット(問題点)

いきすぎたパーソナライズ化に警鐘を鳴らしているのが、最近読んで考えさせられた「閉じこもるインターネット―グーグル・パーソナライズ・民主主義」という本です。原題は「The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You」。この本ではインターネットでパーソナライズ化されている状況をFilter Bubble(フィルターバブル)と表現していて、ユーザーがパーソナライズ化するフィルターで囲まれてしまった状態をあたかもバブル(泡)に包まれていると表現したもの。で、サブタイトルのWhat the Internet Is Hiding from You(ネットで見えなくなっているもの)はまさに著者の問題意識です。



パーソナライズ化とは、自分が見たい情報だけを取捨選択してくれる状態です。これは過去の大量の行動履歴データと高度に発達したアルゴリズムなどにより実現できている・されようとしているもの。著者はそこに落とし穴があると指摘します。私たちの考え方・思想、行動、そして民主主義にも悪影響を及ぼすとの主張です。

自分が見たい情報だけが見られるということは、逆に言えば自分と異なる考え方や未知なるものとの出会いが減っていくと著者は言います。これは例えばツイッターを考えると、自分の興味関心に近いユーザーをフォローする傾向にあるので、自分のタイムラインに流れる内容はわりと自分に近い考え方という状況がそれです。つまり、このようなタイムラインだけを見ていると、自分とは違った考え方、異なる視点でのものの見方に触れることができない、そうなるとますます偏った考え方になってしまうのではないか、これが懸念される影響です。

著者が問題視するものの1つに、パーソナライズ化は企業が勝手にやっているが故に、私たちはどうパーソナライズ化されているか見えないし、パーソナライズ化を訂正することが難しい、さらにはそもそも自分がパーソナライズ化されているとは気づかない点があります。「あなたが見ているネットと、わたしが見ているネットは同じではない」という状況に気づかない。人々の思想を変えるということは、極端なことを言うとパーソナライズ化をちょっとずつ調整することで、世の中の意見や世論もコントロールすることもできるのではないかというのが、著者の意見です。

もう少し現実的なイメージをすると、例えばレコメンドサービス。これは自分が今までに買ったものを参考にしているという認識だったのが(「XX」を買ったんだから「XX vol.2」も買うよねというレコメンド)、実は購買履歴以外にも広告販促費をより多くもらっていえる商品がレコメンドに含まれている場合でも、それはどういうロジックでレコメンドなのかこっちにはわからない。知らず知らずのうちに、何かを買うという行動もパーソナライズ化によってコントロールされることだってあり得るわけです。

■So What?

ネットでのパーソナライズ化の是非。正直これはまだ自分の中での結論は出ていません。今のところは自分に最適化されたサービスは、そうではないものより便利だと感じています。前述のziteがそうですし、アマゾンでもレコメンドを参考に本を買うこともあります。ツイッターでも情報が自分の興味・関心にだけ絞られているからこそ、おもしろい情報が流れています。こうしたサービスがもたらされること自体がすごいことだと思うし、これがなければ日々入ってくる情報の確度はもっと下がってしまうはず。その意味で情報を取捨選択してくれるパーソナライズ化の恩恵は一定は受けていると思います。

一方、こうしたパーソナライズ化された情報の外側はあえて知ろうとしないとわかることができないわけで、これがフィルターバブルの内側に閉じこもっている状態。これまでと違う考え方、自分とは違う価値観に触れる機会が減るというのは確かにあまり良くないかなとも思います。未知との遭遇があるからこそ、自分の中で考え方など何かが変わるのだと思うし、そういう複眼的なものの見方は意識してしておきたいもの。フィルタリングされることで自分に興味がないものは目に入らなくなるとすれば、考え方によっては全体像がどうなっているかがわからないとも言えます。つまり、目の前の情報がどの程度の代表性を持つか/偏っているかの判断できないのではないと。

間違いなくネットではパーソナライズ化の方向で進んでいくと思います。3月1日からグーグルのプライバシーポリシーが変更されましたが、これはグーグルが提供する各種のサービスでのユーザー利用情報を1つに統合するという変更。統合することでもっとユーザーのことがわかるようにしたいわけです。グーグルが強調しているのは統合することでより使いやすくなるとしていますが、本当にやりたいことはユーザー情報を統合し、その人により関連性のある広告を表示したいという意図でしょう。前述の「なぜパーソナライズ化をするのか」に書いた通りです。

では自分にできることは何か。今のところの考えは、あえてバブルの外側に出る、あるいは一度バブル自体を割ってしまうことではないでしょうか。例えばグーグルの過去の検索履歴やクッキー等をクリアすること。ひと手間をかけて違う意見や一次情報に当たってみること、そんなところから始める感じでしょうか。それと、自分が見ているものはパーソナライズ化されているという認識、「わたしのネットはあたなのネットと同じではない」こうした意識も持つことだと思っています。


※参考情報

重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
The personalized web is just an interest graph away|GigaOM
グーグル広告部門幹部、「次なる狙いは検索と広告のパーソナライズ」と発言|Computerworld
プライバシー ポリシー|Google
Googleがソーシャル検索にシフトするのはウェブの世界が変わりつつあるから|思考の整理日記
「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ(In the Plex)」から考えるデータ至上主義とGoogleの描く未来|思考の整理日記


閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
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投稿日 2012/03/11

映画「Time」を見て考えさせられた人生の本質


少し前に映画「Time」を見てきました。

■ 映画「Time /タイム」の世界

ストーリー設定は、全ての人は25歳になると(肉体的な)成長が止まる近未来で、25歳の誕生日を迎えると自分の左手には「ボディクロック」が起動します。

ボディクロックとはデジタル時計で、そこに表示される時間は自分の残された時間、すなわち余命がカウントダウンされているのです。

その世界での最も大きな特徴は「時間=通貨」です。文字通り「時は金なり」の世界で、人々は物やサービスを買うために自分の時間を使います。

例えば、コーヒー:4分、バスの運賃:2時間、1ヵ月の家賃:36時間などです。物・サービスに時間を支払うということは、自分の残りの人生の時間を差し出すことを意味します。家賃に36時間を払うというのは、余命が36時間減るということです。

余命を増やすためには仕事をすることになります。例えば、8時間働いて24時間稼ぎます。仕事をして時間報酬をもらわなければ自分の残された時間はゼロになり、その瞬間に死んでしまいます。

自分の時間を相手に分け与えたり、もらったりも可能です。自分の余命を全てボディクロックに入れておかなくても、銀行へ預けることもできます。

時間経済の世界なので、例えば物価や金利(時利?)が上がると、それだけ自分の時間を払わなければいけません。

映画ではバスの運賃が1時間から2時間に上がるなどのインフレが起こっていましたが、物価が上がるということはその分だけ人々の余命が少なるなくなることを意味します。余命という時間が通貨であるが故に、物価上昇が起こると死んでしまう人が増えることになります。

大きく見ると物価上昇の増減と人口増減が一致するような世界です。

自分の残された時間=余命が全ての人間の左腕にデジタルで表示されてて、それが現在の貨幣の役割も担います。

時間が人々の欲望の対象になっている世界は正直怖かったです。でもよく考えると、私たちの現実の世界でも誰もが余命は有限で、今この瞬間も人生の残りの時間は刻一刻となくなっています。

映画の世界との違いは、自分にはあとどれくらい時間が残っているかは知らないだけです。残された時間はあと24時間かもしれないし、50年かもしれません。

わかっているのは人は皆いつか必ず死ぬことです。そんなことをあらためて考えさせられた映画でした。

■ 時間配分の見直し

現実の世界では時間は完全にフローなものです。1秒たりともストックすることはできません。時々刻々と流れる時間で自分は何をするか、どう使うかというのはここ最近は特によく考えることだったりします。

以前のエントリー「自分を変えた「時間配分の見直し」と「片づけ」の方法」でも少し書きましたが、2012年の今年になって自分の時間配分の見直しをしました。やったことはいたってシンプルで、

  1. 日々の無駄な時間を見える化
  2. いつ/何に無駄があるかを確認
  3. 優先順位づけをして「やらないこと」を決めた

の3ステップでした。やる/やらないを決めることで、本当にやるべきことの優先順位が明確になりました。

3つ目の「やらないこと」を決めた効果は思った以上に大きく、何をやらないかを決めたことで平日でも結構時間ができるものです。

特に出勤までの朝の時間配分の変化が大きく、あわせて去年より1時間ほど早く起きるようにしたこともあり、朝にまとまった時間が生まれました。その時間は読書だったり勉強だったりと、生活スタイルを変えたことで、かなり効果が出ていると実感しています。

時間が有意義に使えていると感じるし、勉強も今の仕事で必要になるものなので結構活かされています。

■ 人生の本質

映画「Time」の世界では、自分の時間を仕事で稼ぐことができました。あるいは富裕層の人々はカジノを興じることで永遠とも言える時間を手に入れていました。

しかし、私たちは自分の余命は限られています。この限られた自分の時間をどう過ごすかというのは、人生を考えた時に最も大切なことなのではないかと思います。

結局のところ、この1秒や1分、そして今日という1日をどう過ごすか、この積み重ねが自分の人生を形作るのではないでしょうか。そう考えると、いかに毎日をきちんと生活することができるかが人生の本質です。

「きちんと生活する」という中身は人によって違います。

仕事をばりばりこなす、家族と過ごす時間、遊ぶこと大切にする、などなど、どれか1つだけではないにしろ、人それぞれの価値観があり(明確に意識しているかどうかは別として)、優先順位があるはずです。

今の自分を形成しているのは、日常の習慣・生きる姿勢/考え方が積み重なったものです。過去の積み重ねが現在の自分です。こう考えると、過去は変えられないものですが、現在の自分を変えようとすることで未来は変えられるのです。

※参考情報
映画「TIME /タイム」オフィシャルサイト


投稿日 2012/03/03

アフリカで人々の生活を変えた電子マネーイノベーション:M-PESA

「仕送り」という行為があります。例えば出稼ぎ労働者の場合は、自分の収入を故郷に残した家族に仕送りをします。学生の時に私も親から仕送りをもらっていました。仕送りなどでお金を誰かに送るには、送り先相手の銀行口座に振り込むのが便利です。口座間の振り込みや、直接相手の口座への振り込みもできます。

そう考えると、もし送り先相手が口座を持っていなかった場合、あるいは郵送などのインフラが整っていない環境では遠く離れた家族などにお金を渡すには手軽にではなくなってしまいます。直接自分が行って手で渡す、または誰かにお願いして家族にお金を渡してもらう、くらいでしょうか。

アフリカのケニアでは、まさにこの状況が起こっていました。出稼ぎで都市に働く人は遠く離れた故郷に住む家族へ仕送りをするためには、毎週のように自分がお金を持って渡しに帰ったり、信頼できるバスドライバーに仕送りのお金を預けて家族に渡してもらっていました(参考)。背景にはケニアでは多くの人が、私たちにとって当たり前のように持っている銀行口座を保有していないという現実があります。

■M-PESAという電子マネーのイノベーション

この問題を解決したのが、携帯電話を使った送金サービスの「M-PESA」。サービスの使い方イメージは、
  • プリペイドで携帯にお金をチャージする
  • 送金相手に送りたい金額を明記してメールを送る
  • メール受信者はM-PESA契約店舗で身分証明し、メールを提示すればメール内の金額を現金化
という感じで、仕送りをするのに銀行口座は不要で携帯電話があれば簡単にできます。ちなみにPESAとはスワヒリ語で「お金」を表す言葉、MはモバイルなのでM-PESAとはモバイルマネーという意味。M-PESAはアフリカの携帯キャリアであるSafaricomが提供するサービスで、利用者はケニアで1500万人、Safaricom利用者の80%が使っているそうです(参考:Learning from Kenya: Mobile money transfer and co-working spaces|thenextweb.com)。ちなみにSafaricomのケニアでのシェアは75%とのこと。

この参考記事では、Waceke Mbugua氏(director of marketing and communication at Sararicom)の説明として、M-PESAでの送金金額はケニアGNPの25%分に相当し、また、1回あたりの送金金額は50セント以下であるとしています。ケニアのGNPがどれくらいかや物価水準は詳しく調べていないのですが、M-PESAでは多くの人が少額での送金のやりとりをしていることがうかがえます。日本のように銀行やATMが整備されていないケニアでは、M-PESAは人々の生活支える重要なインフラになっているのです。

引用:Learning from Kenya: Mobile money transfer and co-working spaces|thenextweb.com

■覚えておきたいモバイルの3つの特性

M-PESAの事例を考えた時に、このサービスが成り立つのはモバイルの3つの特徴がうまく活かされているからだと思っています。すなわち、本人性、携帯性、ネットワーク性。本人性とは、携帯電話は基本的には1人1台の保有なので、所有者を特定できることになります。M-PESAの例で言うとお金を渡される相手(仕送り先)とメール受信者が同一人物である必要があり、それが携帯電話を使うことで成立しています。

携帯性とは文字通り、携帯電話を「いつでも」「どこでも」持ち歩くという特性。常に手元にあるのでお金がM-PESAのメールで送られてくることもわかるし、買い物へ行く時にも常時持っているので、支払いや換金が携帯電話を使ってその場でできてしまう利便性があります。3つ目のネットワーク性とは、携帯電話がメールやネットを通して他の携帯電話、つまり他の人とつながっていることで、M-PESAのケースではネットワーク性が存在することで、簡単に仕送りができてしまいます。このように、携帯電話の持つ3つの特性である本人性、携帯性、ネットワーク性が、かつては遠く離れた家族に直接渡しに行ったり、誰かにお金を預けて渡すしかなかった状況にイノベーションを起こしたのです。

■モバイルの可能性

携帯電話は私たちの生活にとって必需品です。興味深いのは先進国だけではなく、アフリカのケニアのような国にとっても欠かせない存在になっていることです。世界人口は70億人を突破しましたが、いずれはモバイル端末利用者が世界人口とほぼ同等の水準に普及するはずです。

利用者が増えるということは、マーケットがしばらくは拡大し続けるので、いろんなプレイヤーがモバイル事業に参入してきます。M-PESAを提供するSafaricomのようなキャリア、アップルやサムスンなどのハード端末提供プレイヤー、Androidを無償提供するGoogleやWindowsなどのOS、FacebookやZynga、GREEなどのプラットフォーム、アプリや動画・ゲーム等のコンテンツプロバイダーなど、いろんな層で動きが活発になり利用者の獲得が激しくなります。

各プレイヤーが最終的に何で/いつ/どうやって収益を稼ぐのか。直接利用者から収益を得るのか、広告により間接的に利用者から売上を上げるのか。利用者から直接収益を上げるにしても、有料アプリやゲーム内の有料アイテムへの課金、あるいはモバイルから物を買うことで手数料で稼ぐのか、提供サービスを月額で提供するのか、など単発的に収入を得るか継続的に稼ぐかでもビジネスモデルが違ってきます。Facebookがモバイル用アプリ内にもついに広告を表示させるという話ですが、モバイル広告は今後も有用なのか、投資対効果があるのかも気になるところです。

以上はモノ・サービスの提供者側の視点ですが、一方のユーザーにとってはモバイルでどういう「価値」がもたらされるのか。アフリカでのM-PESAのように人々の生活に欠かせない価値は、色々な領域ででてきそうですし、そうなることを期待しています。


※参考情報

Learning from Kenya: Mobile money transfer and co-working spaces|thenextweb.com
M-PESA|Safaricom
M-Pesa|Wikipedia

投稿日 2012/02/25

自分を変えた 「時間配分の見直し」 と 「片づけ」 の方法




今年の初め (2012年1月2日) に高3の時の同窓会がありました。


恩師からの変わらぬメッセージ


企画した時にせっかくなので担任の先生も呼ぼうということで実現したもので、先生と会うのは高校卒業以来でした。同窓会の締めのあいさつで先生からメッセージをもらいました。

  • 妥協することなく挑戦してほしい
  • ビジョンを持って行動してほしい
  • 自立した人になってほしい
投稿日 2012/02/18

Screenwise panel から考える Google の本質、貪欲なまでのデータ至上主義




以下のモデル図は、グーグルとユーザーの関係を簡単に表したものです。グーグルは、ユーザーに無料で検索・Gmail・YouTube などの様々なサービスを提供しています。




グーグルが得ているのは、膨大なユーザーデータです。それをさらなるサービスの利便性向上や、グーグルの主要事業であるネット広告事業に活かしています。

ユーザーは利便性を享受し、グーグルも集めたデータを有効活用し、収益化しているというウィンウィンが成立しています。
投稿日 2012/02/11

なぜ 「10分1000円」 の QB ハウスに人は並ぶのか




ヘアカットの QB ハウスは 「10分1000円」 というわかりやすいメッセージで訴求しています。

自分の通勤で使う駅に QB ハウスがあります。平日休日ともにカット待ちの人が並んでいます。なぜ並んでまで QB ハウスなんだろうと思い、試しに行ってみることにしました。
投稿日 2012/02/05

ソーシャルデザイン:「自分ごとの問いかけ」 から素敵な未来をつくっていく

ソーシャルデザイン - 社会をつくるグッドアイデア集 という本をご紹介します。



サブタイトルは 「社会をつくるグッドアイデア集」 です。

この本には、ウェブメディアである greenz (グリーンズ) が発信している社会をよくするアイデアが紹介されています。


2匹のパンダが配った1枚のチラシが、28万人に共有された


本書には、おもしろいアイデアや事例が紹介されています。興味深く、考えさせられる内容です。

アイデア集の中で印象深かった事例は、WWF (世界自然保護基金) が2011年7月にハンガリーで実施したプロモーション活動でした。
投稿日 2012/02/04

マーケティング脳を鍛えるバリュープロポジションという考え方


Free Image on Pixabay


マーケティングを俯瞰する


マーケティングの活動を図にすると、大まかには以下のような流れになります。




マーケティング戦略

  • 環境分析
  • ターゲットの特定
  • マーケティングミックス (4P) の策定


マーケティング戦術

  • アクションプランの作成
  • 実行


マーケティングで実現することは2つです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。