投稿日 2020/09/02

消費者行動を読み解く武器。Google 提唱の 「パルス型消費」 と 「バタフライサーキット」 の理論をまとめて解説

#マーケティング #顧客インサイト #Google


スマホを操作している最中に突然、その商品を買いたいと感じた経験はありますか?あるいは、色々と調べて徐々に買いたい気持ちが高まっていきましたか?

こうした現象はどのように起こるのでしょうか?そして、マーケティングやビジネスにどう活かせばいいのでしょうか?

消費者やお客さんの行動を理解し、マーケティングに活かすのは容易なことではありません。この記事では、Google が提唱する 「パルス型消費」 と 「バタフライサーキット」 を解説し、これらの消費者行動理論をどうやってビジネスやマーケティングに活用するかを見ていきます。

顧客理解を深め、ビジネスの成功につなげるための武器を一緒に手に入れにいきませんか?

Google の消費者行動理論


Google が提唱した消費者行動である 「パルス型消費」 と 「バタフライサーキット」 について、まずはパルス型消費から見ていきましょう。

パルス型消費行動


Google が2019年に提唱した消費者行動が 「パルス型消費行動」 です。

パルス型消費行動とはスマホを操作している時に買いたい商品を発見し、瞬間的に買いたい気持ちになり購入を完了させる消費者行動です。

従来の消費行動で一般的に言われていたのは、購買プロセスの 「認知 - 興味 - 検討 - 購入」 を徐々に階段のように上がっていくプロセスでした (ジャーニー型購買プロセス。下図の左) 。

パルス型消費の特徴は瞬間的に買いたい気持ちが生まれ、一気に欲しいまで駆け登ることにあります (右側がパルス) 。


パルス型消費はより直感的な買い物で、衝動買いのような非計画購買です。

Google の説明ではパルス型消費行動はスマホを使っている時に起こるとしています。より広く捉えると、スマホを使っている以外にも、お店の中、日常のふとした瞬間にも同じ様の突発的な消費行動は起こります。

バタフライサーキット


では、もう1つの消費者行動である 「バタフライサーキット」 についても見ていきましょう。

バタフライサーキットとは情報探索行動です。情報の 「探る」 と、理解したり納得する 「固める」 の2つを行ったり来たりしながら情報を知ったり、買いたい・行きたい気持ちを高めていきます


バタフライという名前は 「探る」 と 「固める」 のスパイラルを繰り返し、その形が蝶のように見えるからです。

Google は詳細な生活者調査から、人々の情報探索をかき立てるモチベーションを8つに分類しました。


8つを大きく2つに分けると、探ると固めるという特徴があります。


バタフライサーキットの特徴は、情報を探索を 「広げる」 と 「深める」 を繰り返すことです。「探る」 で入っていき 「固める」 で納得をします。ループは1回で終わらず、興味テーマは次々に派生していきます。

パルスとバタフライの関係


ここまで、パルス型消費行動とバタフライサーキットについて見てきました。

では両者の共通点や関係性を俯瞰してみましょう。

あらためて考えると、買いたい・知りたいという気持ちは、非構造的、衝動的に起こります

パルス型消費がまさにそうです。また、バタフライサーキットも何かを知りたいとふと思いつき、次の瞬間にはスマホから調べるという探索行動です。

こうした共通点から見えてくるのは、人の行動とは時には分かりやすく、時には複雑であるということです。自分自身でもなぜそういう気持ちになったか、自分でもうまく説明ができないくらいです。

パルス型消費は瞬間的に買いたいという気持ちが生まれ、一気に欲しいまで上がっていくのが特徴です。

パルス型消費の下地にあるのが、普段からのバタフライサーキットです。つまり、普段から検索などで情報と接触することで、意識的にまたは無自覚にもバタフライサーキットの2つ (探る・固める) を行っているです。

水面下での普段のバタフライサーキットの積み重ねがあり、ある瞬間に何かをきっかけにして水面に浮き上がってきた時に、パルス型消費が起こると見ます。

パルス型消費が起こったきっかけは、時には自分自身でも説明ができません。それぐらい普段自分がやっていることには無自覚ですが、奥には行動につながった心理がトリガーとしてあったはずです。

ここに消費者心理と行動のおもしろさがあります。


マーケティングの醍醐味


マーケティングの専門用語に 「顧客インサイト」 というものがあります。

顧客インサイトとは、お客さん本人も普段は意識していませんが、何かのきっかけで突如として表面化し態度や行動に影響を与える奥にある気持ちのことです。

シンプルに表現すれば顧客インサイトは 「人を動かす隠れた気持ち」 です。隠れていることがポイントで、普段は無自覚です。

マーケティングの難しさでもあり醍醐味なのは、お客さん自身も意識できていない顧客インサイトを赤の他人であるマーケターが見出し、言語化してあげ、気づかせてあげることにあります。

マーケティング施策から態度や行動の変化を起こし、お客さんのより良い生活や幸せに貢献できること。ここにマーケティングの役割があります。


まとめ


今回は、Google が提唱する2つの消費者行動を取り上げました。

最後にまとめです。

✓ パルス消費とバタフライサーキット
  • パルス型消費は瞬間的に買いたい気持ちが生まれ、一気に欲しいまで駆け登る消費者行動
  • バタフライサーキットは情報の 「探る」 と、理解したり納得する 「固める」 の2つを行ったり来たりしながら情報を知ったり、買いたい・行きたい気持ちを高めていく情報探索行動
  • パルス型消費の下地に普段からのバタフライサーキットがある。ある瞬間に何かをきっかけにして水面で起こっていたバタフライサーキットが浮き上がり、パルス型消費が起こるのではないか

✓ マーケティングの醍醐味
  • 本人自身も意識できていない顧客インサイトを赤の他人であるマーケターが見出し、言語化してあげ、気づかせてあげることに難しさと醍醐味がある
  • マーケティングの役割はマーケティング施策から行動につなげ、顧客のより良い生活や幸せに貢献できること


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。