今回は書評です。
ラストチャンス - 参謀のホテル (江上剛) という本をご紹介します。
この記事でわかること
- 本書の概要
- 再建請負人の経営哲学と手腕
- マーケティング STP (客観視, 強み, ポジショニング)
- 欲望と執着
記事で書いているのは、この本に書かれている概要と、後半では読んで思ったことです。
経営やマーケティング戦略の観点から、読んで考えさせられたことをぜひ伝えたいと思い書いています。
この本に書かれていること
この本はビジネス小説です。
主人公は、企業経営再建を請け負うプロフェッショナルです。ストーリーは、東京にある名門ホテルの再建を依頼されるところから始まります。
従業員との人間関係、モチベーションを高める経営手腕、強みとポジショニングを明確にしたマーケティング戦略、そして、論語や孔子の言葉からの示唆があり読み応えのあるビジネス小説でした。
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
数々の企業を苦境から救ってきた “再生請負人” 樫村徹夫。
老フィクサーに名門 「大和ホテル」 の立て直しを依頼され、GM (総支配人) に就任した樫村だが、シビアな創業家の社長やクセあり従業員に大苦戦。迫る中国資本による買収の危機、予想外の裏切り。
熾烈な生き残り戦争から老舗の看板を守れ!
再建請負人の経営哲学と手腕
主人公の経営哲学は、企業再生の肝はそこで働く人たちのモチベーションからという一貫した姿勢です。
権限と予算を任せ、主体的に動いてもらいます。意欲のある若者を積極的に登用し、活躍の場を与えます。少しくらいの失敗にも目をつぶり、自律と自立を促すやり方です。
総支配人という立場で現場と距離を置くのではなく、自ら現場に降りていきます。働く人たちに歩み寄りインタビューを重ね、レストランやフロント、ルームサービスなど現場を自ら体験して、ホテルの価値を見極めようとします。
マーケティング戦略
マーケティングの観点からも興味深く読めました。
主人公が再建を任されたホテルは、歴史と伝統のある名門ホテルです。
しかし、赴任当初はホテルの雰囲気全体が暗く、歴史と伝統にあぐらをかき、顧客にも正面から向き合っているとは言えない状況でした。
再建請負人である主人公がやったのは、自分たちの現状を客観視し、他のホテルに対する自分たちの強みを何かを見出しました。
強みを自ら言語化することによってポジショニングを明確にし、戦略をつくっていきました。戦略から実行プランに落とし込まれ、戦略と実行で一貫性のある取り組みができたわけです。
マーケティングの戦略には、Will, Can, Must の三つの要素を見ました。
自分たちがこうありたいという Will 、他のホテルにはない自分たちの強み (Can) 、そして顧客から求められる Must です。3つが重なったところに再建のヒントを見出しました。
欲望と執着
この本のテーマの一つは欲望です。
欲望とは、お金、出世と地位、権力への執着です。いずれもどこまでも際限なく膨らみます。欲を追い求めすぎることによって、いつしか傲慢になります。
欲望に執着しないためには、どうあると良いのかを読みながら考えさせられました。自分らしい自然体、あえて鈍感になる。自分自身のあり方が問われます。
まとめ
今回は、ラストチャンスを取り上げました。
最後に記事のまとめです。
本書の概要
- 主人公は企業経営再建のプロフェッショナル。ストーリーは、東京にある名門ホテルの再建を依頼されるところから
- 従業員との人間関係、モチベーションを高める経営手腕、強みとポジショニングを明確にしたマーケティング戦略、論語や孔子の言葉からの示唆があり読み応えのある一冊
再建請負人の経営哲学と手腕
- 企業再生の肝はそこで働く人たちのモチベーションという一貫した姿勢。権限と予算を任せ、主体的に動いてもらう
- 自ら現場に降り、働く人たちに歩み寄る。現場を自ら体験をしてホテルの価値を見極めようとする。
マーケティング戦略
- 自分たちの現状を客観視し、他のホテルに対する自分たちの強みを何かを見出した
- 強みを自ら言語化しポジショニングを明確にした。戦略から実行に移した
- 自分たちがこうありたいという Will 、他のホテルにはない自分たちの強み (Can) 、そして顧客から求められる Must の重なったところに再建のヒントがあった