投稿日 2020/09/21

書評: 藁を手に旅に出よう - "伝説の人事部長" による 「働き方」 の教室 (荒木博行) 。寓話からのギフト (問いかけ) で具体と抽象の往復をしよう


今回は書評です。

ご紹介する本は、藁を手に旅に出よう - "伝説の人事部長" による 「働き方」 の教室 (荒木博行) です。


✓ この記事で分かること
  • 本書の内容
  • 答えではなく問いのギフト
  • 寓話からの 「具体と抽象の往復」 
  • アウトプットに2倍の時間を使いたい本 (解釈と学びへの余白) 

この記事で書いているのは、書籍 「藁を手に旅に出よう」 の概要と、読んで考えさせられたことです。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、この本を手に取ってみてください。

この本に書かれていること


本書の内容を一言で表現すれば、「キャリア × 寓話 × 答えのない問い」 の3つの掛け算です。

この本の主人公のサカモトくんは、小説の前半では社会人一年目、後半では三年目です。キャリアへの漠然とした不安を抱いています。

この本ではキャリア、働き方や仕事への向き合いについて、答えを押しつけたり教えるのではなく、問いかけがギフトのように読み手にも投げかけられます。

問いは簡単には答えが出ないものです。もしかすると一生かけても 100% 納得のいく答えは得られないかもしれません。だからこそ、少なくとも節目では 「答えが出ないものに答えを出す」 という哲学的な向き合いの重要性を考えさせられます。

以下は、この本の内容紹介からの引用です。

よくわからないまま働き始めた君へ、「働き方のモヤモヤ」 に答えを出す!『ビジネス書図鑑』『世界 「倒産」 図鑑』著者が物語で贈る、「幸せ」 と 「仕事」 を巡る12の講義

新人社員サカモトは自分が働く意味を見出せずにいた。「このまま今の会社にいていいのか?」 「自分の価値とは何なのか?」

そんなサカモトや同期たち、新人社員の前に伝説の人事部長 「石川さん」 が姿を現した――。

寓話から仕事や働き方に光を見出す新感覚ビジネス小説!


寓話というアナロジー


この本の特徴は、寓話から仕事やキャリアへの学びを考えさせられることです。

寓話は全部で12個が取り上げられています。新人一年目の研修で六つの寓話が、後半の三年目研修でも六つの寓話が出てきます。

寓話は誰もが一度は聞いたことがあるものです。

✓ 出てくる寓話をいくつか
  • うさぎとカメ
  • 裸の王様
  • オオカミ少年
  • 桃太郎
  • 北風と太陽
  • わらしべ長者
  • 浦島太郎
  • アリとキリギリス
  • 花咲か爺さん

これらの寓話を使ってやっていることは、具体と抽象の往復運動です。


具体と抽象の往復


本の章ごとに寓話から 「具体 - 抽象 - 具体」 のプロセスで進みます。

✓ 具体と抽象の往復
  • 寓話のストーリー [具体]
  • 自分たちが学べること (抽象化からの本質) [抽象]
  • 学びを目の前の仕事やキャリアで悩んでいることに当てはめる (横展開) [具体]

この 「具体 - 抽象 - 具体」 で、本の読みでは二段階で学びが得られます。

✓ 具体から抽象での学び (1回目の学び) 
  • ストーリーでは人事部長の石川さんからの解釈が示される
  • では自分は何を学ぶか、他に解釈はないかを考える

✓ 抽象から具体での学び (2回目の学び) 
  • 寓話からの学びを自分の状況に当てはめてみる
  • 何ができて・できていないのか、新しい視点が得られる (例: 働き方や仕事の方法, 戦略, マーケティング) 


タイトル 「藁を手に旅に出よう」 が意味すること


この本のタイトルは、「藁を出て旅に出よう」 です。


ここではタイトルが意味をすることを掘り下げてみます。

 「藁」 の意味


まずは藁ですが、これは寓話の 「わらしべ長者」 からです。藁はアナロジーで、一人一人が持っている仕事のスキルや経験です。なぜ藁かと言うと、まだ何者でもない自分が持っている特徴だからです。何かと掛け合わせて強みになっていくものです。

これはわらしべ長者のストーリーにも繋がりますが、自分ではそうは思っていなくても需要がある人にとっては価値になるものが藁です。

 「旅に出よう」 の意味


タイトルの 「藁を出て旅に出よう」 の、旅に出ることについても意味が込められています。

旅に出るとは、自分がやりたいこと、行きたいところに主体的に行動しようという意味です。旅への一歩目を自分で自らをリードする (Lead the self) 、常にチャレンジをする大切さです。そして、自分のことは自分で責任を持つことの重要性も含んでいます。

読者に問いかけられるのは、自分にとっての藁は何かです。藁を持って主体的に行動しようというメッセージです。


問いのギフト


この本は、読んだ時間の2倍にアウトプットのために使いたくなります。

例えば読み終わるのに2時間だったとすると、それぞれの寓話からの解釈と学び、自分事化をするために、倍の4時間はじっくりと考えたいです。

要はそれくらい読み手に考える余地と学びの余白がある本です。あえてズバリの答えが書かれているわけではありません。問いかけが残る仕掛けになっています。

答えの一方的な押し付けではなく、問いのギフトです。


まとめ


今回は 藁を手に旅に出よう という本をご紹介しました。


最後にまとめです。

本書の概要
  • この本は 「キャリア × 寓話 × 答えのない問い」 の3つの掛け算
  • キャリア、働き方や仕事への向き合いについて、答えを押しつけたり教えるのではなく、問いかけがギフトのように読み手にも投げかけられる

寓話からの具体と抽象
  • 寓話のストーリー [具体]
  • 自分たちが学べること (抽象化からの本質) [抽象]
  • 学びを目の前の仕事やキャリアで悩んでいることに当てはめる (横展開) [具体]

 「藁を出て旅に出よう」 の意味
  • 藁は一人一人が持っている仕事のスキルや経験 (まだ何者でもない自分が持っている特徴)
  • 旅に出ようとは、主体的に行動しチャレンジする。自分で自分のことに責任を持つ姿勢の大切さ

アウトプットへの余白
  • 読み手に考える余地と学びの余白がある本。あえてズバリの答えが書かれてはいない。問いかけが残る仕掛けになっている
  • 寓話からの解釈・学びと自分事化のために、読んだ時間の2倍は使いたくなる本


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。