今回は、ヒット商品から商品開発やマーケティングに学べることです。
✓ この記事でわかること
- 気になるヒット商品のご紹介
- 2つの商品の共通点は 「利用シーンの拡大」
- 商品開発やマーケティングへの学び
- 利用シーンを見るポイント
- 商品アイデアやマーケティングへの発想方法
今回はヒット商品を紐解き、商品開発やマーケティングへのヒントを解説します。
この記事を読んでいただきたいと思うのは、商品開発をされている方です。隠れたニーズやビジネスチャンスを見つけるために、商品開発アイデアのヒントになればと思います。
他にはマーケティングの仕事をされている方にも参考になればうれしいです。「他社のヒット商品を知りたい」 「自社マーケティングの参考にしたい」 と思っている方のお役に立てればと思います。
気になるヒット商品
キュキュット つけおき粉末
1つ目にご紹介したい商品は花王の食器用洗剤 キュキュット つけおき粉末 です。発売は2021年3月です (公式サイトはこちら) 。
商品名に 「つけおき」 とあるように、使い方は食器をぬるま湯に浸し粉末を混ぜておきます。すると鍋などの頑固なこびりつき汚れが簡単に落とせるようになります。
百聞は一見にしかずなので、花王の公式サイトの動画をよかったら見てみてください。
まるごと洗えるベビーカー
2つ目に紹介したい商品は、Combi の 「Acbee (アクビィ) 」 のまるごと洗えるベビーカーです (公式サイトはこちら) 。発売は2021年8月です。
出典: Combi
特徴はシートが簡単に取り外せるので、丸ごと洗えることです。毎日洗濯ができ速乾素材を使っているので従来よりも乾きやすいとのことです。
動画もつけておきますね。
Acbee の製品詳細ページによれば、ベビーカー利用者の 79% は 「ベビーカーの汚れが気になることがある」 と答えています。しかし、一度もシートを洗ったことがない人は 43% だそうです。
理由は 「シートの取り外しが面倒」 「乾くのに時間がかかる」 でした。後者の乾くのに時間がかかるので、その間は赤ちゃんと外出ができないので結局はシートは洗わないままになっています。
2つの商品の共通点
ここまで2つの商品、食器用洗剤 「キュキュット つきおき粉末」 と、まるごと洗えるベビーカー 「Acbee」 をご紹介しました。
2つの商品の共通点は、利用シーンの時間軸を広く捉えて価値を提供したことです。
花王の 「キュキュット つけおき粉末」 は時間軸を 「前」 に引き伸ばしました。食器洗いの最中だけではなく洗う前に使ってもらい、洗う時にゴシゴシと力を入れて何度もこすり洗いをする手間をなくしました。
食器洗い利用シーンを 「点」 ではなく、時間軸を伸ばした 「線」 で捉えてトータルでの食器洗いの体験価値を上げました。
もう1つの Combi の 「まるごと洗えるベビーカー Acbee」 は、ベビーカー利用中ではないベビーカーを休ませている時間での価値提供です。
小さい赤ちゃんを持つ親の気持ちとして 「シートを洗ったことがないので、清潔ではないかも」 と思いつつ、いざ洗うとなると手間がかかり、シートがすぐに乾かないので外出できない不便さを解消しました。洗いたいけど現実的に洗えていない問題の解決です。
商品開発やマーケティングへの学び
では、取り上げた2つの商品から学べることを整理してみましょう。
商品開発やマーケティングへのヒントは、自社の商品やサービスの今の利用シーンを広げ、利用シーンの前後や使っていない時です。ここにビジネスチャンスがあります。
食器洗い洗剤のキュキュットは、スポンジで食器を洗う前にチャンス (利用機会) を発見しました。Acbee はベビーカーを使っていない時に起こる不衛生問題の解決と、赤ちゃんのために清潔なシートにしたいという想いを叶えました。
既存の利用シーン以外からビジネスチャンスを発見するためには、視野を広げてお客のことを観察し、理解することが重要です。利用シーンの 「点」 だけではなく、利用前後や使っていない時までの 「線」 へと捉え直し、新しい利用シーンから価値を生み出します。
利用シーンの分解
では利用シーンをどのように捉えればよいのでしょうか?
利用シーンは、5W1H を使って以下のように分解するといいです。
✓ 利用シーンの構成要素
- 誰が
- いつ
- どこで
- 何のために, 誰のために (目的)
- 誰と一緒に
- どう使うか
利用シーンからアイデアを生む方法
利用シーンから、お客さんの 「やりたいこと」 と 「顧客の不」 を見出していきます。
具体的には次のことを見ていきます。
✓ やりたいことと不をセットで捉える
- やりたいことや済ませたいことは何か
- そのやり方への不は何か (不便, 不満, 不都合, 不安, 不快感)
利用シーンをただ漠然と想定したり眺めるのではなく、「顧客のやりたい・済ませたいことは何か」 「顧客の不は何か」 を言葉にして意識しながら利用シーンに向き合うといいです。あたかも念仏のように意識して言葉にして、直接言ったり頭の中で唱えるようにです。
やりたいことと、顧客の不が見えてきたら、次の文章テンプレートを埋めて商品アイデアやマーケティング活用につなげます ( [] 内を具体的に埋めてみてください) 。
文章テンプレート
お客は [やりたいこと・済ませたいこと] をしたいが、現状のやり方には [顧客の不] という問題がある。
よって私たちは [具体的なアイデア (ソリューション) ] でお客の問題解決と価値提供を実現する。
ご紹介した商品をテンプレートに入れると
では最後に、このテンプレートに今回ご紹介した2つの商品を当てはめてみます。下線部分がポイントです。
キュキュット つけおき粉末
食後に台所で食器を洗う生活者は、食器洗いは手間や時間をかけずにさっさと済ませたいが、
現状のやり方には、鍋料理やカレーに使った鍋の頑固なこびりつき汚れはなかなか落ちず、鍋専用のスポンジで何度も力を入れて洗わないと汚れが落ちないという問題がある。
よって私たちは、洗う前に鍋にぬるま湯をため、粉末を入れてそのまましばらく置いておけば簡単に水洗いで汚れが落ちるという食器洗い洗剤でお客の問題解決と価値提供 (手間いらずの食器洗い) を実現する。
まるごと洗えるベビーカー Acbee
赤ちゃんを子育て中のママやパパは、赤ちゃんとの外出にはいつも使っているベビーカーは、できるなら常に清潔な状態にしておきたいが、
現状は、シートが取り外しにくく、洗ったとしてもすぐに乾かないので干している間は外出できないという問題がある。
また、シートは一度も洗ったことがないけど、赤ちゃんが直接触れるもので不潔になっていないかと心配になる。
よって私たちは、簡単にシートを取り外せる設計にし、シートは速乾性の素材を使い、簡単にまるごと洗えてすぐに乾くベビーカーでお客の問題解決と価値提供 (赤ちゃんと安心して楽しく外出できる) を実現する。
まとめ
今回はヒット商品から、商品開発やマーケティングに学べることでした。
最後にまとめです。
商品開発やマーケティングへの学び
- 利用シーンの時間軸を長く捉える。自社の商品やサービスの今の利用シーンを広げ、利用シーンの前後や使っていない時にビジネスチャンスがある
- 視野を広げてお客のことを観察し、理解する。利用シーンの 「点」 だけではなく、前後や使っていない時の 「線」 へと捉え直し、新しい利用シーンから価値を生み出そう
利用シーンの構成要素
- 誰が
- いつ
- どこで
- 何のために, 誰のために (目的)
- 誰と一緒に
- どう使うか
利用シーンからアイデアを生むの方法
- ただ漠然と利用シーンを想定したり眺めず、「顧客のやりたい・済ませたいことは何か」 「顧客の不は何か」 に着目する
- 次の文章テンプレート内の [ ] を埋めて商品アイデアやマーケティング活用につなげる
- お客は [やりたいこと・済ませたいこと] をしたいが、現状のやり方には [顧客の不] という問題がある。よって私たちは [具体的なアイデア (ソリューション) ] でお客の問題解決と価値提供を実現する
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