投稿日 2021/08/27

静岡・藤枝市が 「あつ森」 を使い観光 PR 。仮想体験からのブランド構築


今回は、自治体のユニークな PR 事例を取り上げ、戦略やマーケティングの観点から掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 静岡県藤枝市がゲーム 「あつ森」 を使った観光 PR
  • [考察 1] 「らしさ」 を出すための独自資源の有効活用
  • [考察 2] あつ森で 「藤枝市体験」 からブランド形成

この記事を読んでいただきたいと思うのは、戦略やマーケティングを考えたり、つくる役割にある方です。

紹介する事例は自治体の観光 PR の取り組みですが、異なるフィールドの事例から自社の事業戦略や商品戦略、マーケティングへの何か少しでも参考になればうれしいです。

ゲーム 「あつ森」 を使った観光 PR


静岡県藤枝市が、ニンテンドースイッチのゲーム 「あつ森」 を使った観光 PR をするとのことです。

地元の静岡産業大学と連携し、大学生のアイデアを活かします (静岡産業大学のリリースはこちら) 。


具体的には、あつ森の中に藤枝市独自の 「島」 をつくり、ゲーム内での体験から藤枝市を PR します。島の名前は 「ふじえだおちゃの島」 と 「ふじえだサッカーの島」 で、2021年10月の公開を予定しています。

あつ森の島で、ゲーム内の自分が作ったアバター (分身キャラクター) で、他の利用者と仮想的な交流を楽しめます。


思ったこと


ここからは、あつ森を使った観光 PR で思ったことです。

✓ 思ったこと
  • 独自資源の有効活用
  • ゲーム 「あつ森」 での藤枝市体験からのブランド構築

ではそれぞれを順番にご説明しますね。

独自資源の有効活用


観光 PR をするためには、いかにその土地のらしさを引き出せるかです。

ビジネスっぽい表現をすれば、地元で持っているリソースを活用し、届けたい相手に魅力を持ってもらうことが大事です。今回の例で言えば、藤枝市でしかできないこと・他ではやっていないことを見出せるかがポイントです。

他ではやっていないことが、単に 「あつ森」 を使うだけなら他でもやろうと思えばできます。あつ森はいわば手段なので、「何をするか」 の中身が大切です

今回の藤枝市の場合は、次のような 「地元の資産」 を有効活用しています。

✓ 独自資源の有効活用
  • 三大玉露の名産地の1つというお茶での権威性
  • 多数のサッカー有名選手を輩出している (例: 元日本代表で主将の長谷部誠選手)
  • 地元の静岡産業大学との連携

これらが組み合わさり、いかに藤枝市でしかできない観光 PR ができるかです。そして大事なのが、独自資源からの違いが、PR の受け手にとって価値があり魅力的にできるかがポイントです

ゲーム 「あつ森」 での藤枝市体験からのブランド構築


思ったことの2つ目です。「あつ森」 を使った意味合いについても掘り下げてみます。

一言で表現すれば 「能動的な藤枝市の体験ができること」 です。というのも一般的なウェブを使った観光 PR では Twitter や YouTube の動画、インスタの写真です。地元の魅力は伝えられますが、体験できるリアル感は高くありません。PR コンテンツを受け身で消費しています。

しかしゲームのあつ森であれば、プレイヤーにゲーム内の島に来てもらい、実際に島で遊び、時には期間限定のイベントにも参加してもらえます。また島での他の参加プレイヤーとの交流もできます。

ゲームという仮想世界ではあるものの、こうした1つ1つの藤枝市の疑似体験が、楽しかったというポジティブな感情とともに良い体験として頭の中に刻まれます。藤枝市への価値イメージができ、他とは違ったポジショニング形成につながるわけです。

これはマーケティングでいうところの、商品やサービスがブランド化されるプロセスと同じです。

ユーザー体験 → ポジティブな感情形成 → 価値イメージの向上 → ブランド構築

藤枝市の取り組みは、ゲームの中での疑似体験からブランド構築にまでつながり、リアルな藤枝に行ってみたいという観光につながるか注目したいです。


まとめ


今回は、静岡の藤枝市がユニークな観光 PR を取り組げました。

最後にまとめです。

ゲーム 「あつ森」 を使った観光 PR
  • 静岡県藤枝市が、ニンテンドースイッチのゲーム 「あつ森」 を使って観光 PR
  • 地元の静岡産業大学と連携し、大学生のアイデアを活かす
  • あつ森の中に藤枝市独自の 「島」 をつくり、ゲーム内での体験から藤枝市を PR する

独自資源の有効活用
  • 地元で持っているリソースを活用し、届けたい相手に魅力を持ってもらうことが大事
  • 独自資源は、三大玉露の名産地の1つ (お茶での権威性) , サッカー有名選手を多数輩出, 地元の静岡産業大学との連携
  • 独自資源から藤枝市でしかできない PR になり、受け手にとって価値があり魅力的にできるか

藤枝市体験からのブランド構築
  • ゲームから 「能動的な藤枝市の体験」 ができる。プレイヤーは島に来て遊び、イベント参加や他の参加プレイヤーと交流する
  • 1つ1つの藤枝市の疑似体験が、楽しかったというポジティブな感情とともに良い体験から藤枝市への価値イメージが向上へ
  • これはマーケティングの商品やサービスがブランド化されるプロセスと同じ


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。