投稿日 2021/08/17

豆腐メーカー 「やまみ」 のストーリーのあるマーケティング 4P


今回は、マーケティングです。


この記事でわかること


  • 勝つためには違う戦い方が大事
  • 「違う」 の2つの意味
  • 豆腐メーカー 「やまみ」 の苦境を乗り越える戦い方
  • 美しいマーケティングの 4P

この記事を読んでいただきたいと思うのは、戦略やマーケティングに興味があったり、考えるのが好きな方です。

具体的なビジネスの事例を取り上げ、戦略で大事なこと、マーケティングを解説をしています。他業界の事例から、自社の商品戦略やマーケティングを考えるヒントになればうれしいです。


勝つための違う戦い方



競争に勝つための勝ち筋の1つは、違う戦い方をすることです。

違うには2つ意味があり、他社と違うことをやる、または過去の自分と違うことやることです。戦略やマーケティングでも同じで、いかに差異化をして他社と比べての独自化ができるかが重要です。

では具体的なビジネスの事例から 「違う戦い方」 を見ていきましょう。


豆腐メーカーの 「やまみ」



ご紹介したいのは豆腐メーカーの 「やまみ」 です。本社は広島にある会社です。

やまみは経営的に苦しい状況にありました。以下は日経 MJ の記事からの引用です。

やまみは広島県と滋賀県の2工場を主力としていたが、人口の多い関東を開拓しようと富士山麓工場 (静岡県小山町) を新設した。投資額は約60億円で、これまでの工場で最大の生産設備を導入した。だが償却費がかさむ中で売上高は伸びず、21年6月期の拠点別損益で同工場は約7億円の赤字になる見込みだ。

伸び悩みには誤算があった。関東の消費者は購買力があるとみて、当初は北海道産の大豆を使った商品など、品質にこだわった中価格帯で攻めた。

だが関東圏でやまみの知名度は低く、営業は想定より難しかった。新型コロナの感染拡大もあり、スーパー側が新規メーカーとの商談を見送る動きもあったという。

 (引用: 日経 MJ 2021.8.11)

経営状況は苦しかったものの、2021年3月からこれまでとは違う戦い方に変えました。新しいアプローチがマーケティングのフレームの 4P で見ると、ストーリーがきれいにできています。


マーケティング 4P


マーケティングのフレームに 4P があります。


マーケティング 4P
  • Product 商品
  • Place お店, 販売チャネル
  • Price 価格
  • Promotion 広告, 販促


では 「やまみ」 が変えたことを 4P の順に見ていきましょう。


Product: 他社が取り扱っていない商品の導入


やまみは他の豆腐メーカーが取り扱っていない商品も導入しました。具体的には製造に手間のかかる焼き豆腐、小分けにした商品です。

以下はやまみの公式サイトからの商品写真です。

焼き豆腐 (引用: やまみ


小分けにした木綿豆腐 (引用: やまみ


Place: 新しい納入先の開拓


やまみの本社は広島です。

これまでは中国地方や四国地方に自社商品を展開していました。販路を拡大するために関東圏に進出したものの、豆腐メーカーとしてのやまみの知名度が高くなかったことから、自社商品の売り込みに苦戦を強いられていました。

しかし、1つ前の Product で見た他社にはない商品と、この後に紹介する価格設定 (Price) で他社とは違う戦略を取り、納入先のスーパーを増やしていきました。つまり新規での販路を獲得したのです。


Price: 低価格で規模の追求


やまみは従来は品質にこだわった中価格帯で攻めていました。

しかし、このやり方では関東圏ではうまくいかず、方針を変え低価格帯の商品も導入しました。例えば小売価格で1丁38円の豆腐です。

低価格にした意図は、売り込みに苦戦をしていた関東圏では利益よりもシェアを取り規模を狙うことにあります。実はこのアプローチはやまみの 「原点回帰」 です。中四国地方でこれまでシェアを取ってきたやり方でした。

注目したいのは、ただやみくもに価格を安くしていないことです。低価格の裏には低コストにする能力や仕組みがありました。

先ほどの日経 MJ の記事には、「やまみは同業をはるかに上回る生産能力の機械を導入し、大量生産でコストを抑える」 と書かれています。だから低価格が実現できるのです。


Promotion: 他社がやっていないことを強みとして訴求


新規で売り込む納入先へは低価格を訴求しています。

豆腐の原材料費が高騰していて他社は値上げに動く状況で、ここに逆張りの発想があります。

以下は日経 MJ の記事からの引用です。

原料の大豆が高騰する中で他社は値上げに動くと予想されるが、やまみは納入価格を据え置く。「これまで (スーパーに) 入れてもらうきっかけがなかった。原料高騰を逆に大きなチャンスと捉えている」 (山名副社長) 

 (引用: 日経 MJ 2021.8.11)

原材料費高騰を逆境ではなくむしろチャンスと捉え、低価格の商品を導入し、他社では珍しい商品 (製造に手間のかかる商品) も扱っていることが他の豆腐メーカーにはない強みになっています。

最後に日経 MJ の記事からの引用です。

同社が2月に発表した21年6月期の業績予想は、売上高が前の期比 7% 増の135億円、営業利益は 93% 増の7億円。コロナの感染拡大で消費者の自炊機会が増え、内食向けが中心のため売れ行きは堅調だ。

関東の開拓を軌道に乗せ、5年後には売上高180億 ~ 200億円、売上高営業利益率 10% を目指している。

 (引用: 日経 MJ 2021.8.11)


まとめ


今回は豆腐メーカー 「やまみ」 の違う戦い方を、マーケティングの 4P から見てきました。

最後にまとめです。


豆腐メーカー 「やまみ」 のマーケティング 4P
  • Product: 他社が取り扱っていない商品の導入 (例: 製造に手間のかかる焼き豆腐, 小分け商品)
  • Place: 新しい納入先の開拓
  • Price: 低価格で利益よりシェアを優先
  • Promotion: 他社がやっていないことを強みとして訴求



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。