投稿日 2021/08/11

王者の責任感とリーダーシップ。キリンのクラフトビール 「SPRING VALLEY 豊潤 496」 に学ぶ商品開発


今回は、ヒット商品を取り上げ、開発の裏側を見ていきます。

この記事でわかること


  • キリンのクラフトビール 「SPRING VALLEY 豊潤 496」 とは
  • 開発のきっかけに見る 「王者としての責任感とリーダーシップ」
  • 商品名の 「496」 に込められた想い
  • 新規客を獲得した市場創造

この記事を読んでいただきたいと思うのは、仕事で商品やサービスの開発をされている方です。

ヒット商品の開発事例から、自社の商品・サービスのコンセプトやネーミングを考える時のヒントになればと思います。

他には、キリンのクラフトビールにヒットの秘密について興味を持った方にも何か少しでも参考になればうれしいです。


キリンのクラフトビール


今回取り上げるヒット商品は SPRING VALLEY 豊潤 496 です (公式サイトはこちら) 。



以下は日経新聞の Web 記事からの引用です。

キリンビールの缶ビール 「SPRING VALLEY 豊潤〈496〉」 が、家飲み需要の追い風を受けて好調だ。販売価格は他の缶ビールよりも3 ~ 4割ほど高いが、発売から4カ月で出荷は3000万本を超えた。

ビールの同質化が指摘されるなか、製法を工夫して個性のあるクラフトビールとして販売し、新たな需要を創出している。

 (引用: 日経 2021.8.4)


ビール市場への危機感


日経の記事に書かれていた開発の経緯が興味深かったです。

もう一度記事から引用すると、

 「ビール市場は長年縮小している。お客様から見たビールが魅力的でなくなってしまったことが背景にある」

キリンビール事業創造部の岡本理沙さんはビール離れの原因をこう分析する。国内のビール系飲料市場はピーク時の1994年から4割近く縮小し、販売数量の減少に歯止めがかからない。

ビール市場の活性化には、新しいビールの価値を提供することが不可欠だ。そこでキリンが2011年から構想を始めたのが、クラフトビール事業だった。

 (引用: 日経 2021.8.4)


王者の責任感とリーダーシップ



開発の原動力になったのは、縮小している市場を活性化させたい思いです。

開発への着想が、ビールという市場全体に目が向いていたのが興味深いです。キリンのビールブランドや自社の売上を伸ばしたいからよりも、もちろんこれもあるとは思いますが、それよりもビール市場をなんとか活性化したいという危機感と気概から生まれた商品なのです。

ここにキリンビール社のすごさを見ました。ビール市場を自分たちが引っ張っていく責任感とリーダーシップ、王者としての貫禄があります。


496 に込められた想い


今回ご紹介しているのは、キリンのクラフトビール 「SPRING VALLEY 豊潤 496」 です。

商品名の最後に 「496」 と入っています。最初見た時は、496 は単なる商品番号か何かだと思いました。しかしここには深い意味がありました。

公式サイトを見ると、496 の意味は2つです。


✓ 496 に込められた想い
  • 完全数
  • 商品への絶対の自信


1つ目の意味は、496 は完全数だということです。数字には完全数と呼ばれる特殊なものがあります。

完全数とは自分以外の約数を全て足すとその数に一致する数字です。例えば 6 です。6 の約数は 1, 2, 3, 6 で、6 という自分以外の約数を足すと 6 になります (6 = 1 + 2 + 3) 。

496 も完全数で、496 = 1 + 2 + 4 + 8 + 16 + 31 + 62 + 124 + 248 です。完全数をあえて商品名に入れるのは、この商品を他とは違う独自な存在にしたいという意思が見てとれます。こういう商品名のこだわりは好きです。

では完全数なら何でもよかったかと言うと、そうではありません。6 ではなく 496 でなければいけない理由があります。

それが 496 に込められた2つ目で、496 は 1 から 31 を順番に足すと 496 になることです (1 + 2 + 3 + … + 30 + 31 = 496) 。これが意味するのは、1ヶ月の31日間に毎日飲んでも飽きないビールということです。それぐらい商品として自信を持っている表れです。

商品のネーミングの細かいところまでこだわりがあるのがいいです。


新規客を獲得し市場が拡大


日経の記事から再び引用です。

スプリングバレーはクラフトビール市場の拡大にも寄与している。キリンによると購入者の約7割が今までクラフトビールを飲んでいなかった消費者という。

 「スプリングバレーをきっかけに、クラフトビールが好きになった」 との消費者の声も寄せられた。岡本さんは 「クラフトビールを手に取るお客様が増え、市場が拡大しつつあることを実感している」 と手応えを感じている。

 (引用: 日経 2021.8.4)


まとめ


今回はキリンのクラフトビール 「SPRING VALLEY 豊潤 496」 を取り上げ、商品開発について見てきました。

最後にまとめです。


キリンのクラフトビール 「SPRING VALLEY 豊潤 496」
  • 販売価格は他の缶ビールよりも3 ~ 4割ほど高いが、発売から4カ月で出荷は3000万本を超えた
  • 製法を工夫して個性のあるクラフトビールとして販売し、新たな需要を創出


開発の原動力は 「責任感とリーダーシップ」
  • キリンのビールブランドや自社の売上を伸ばしたいからよりも、縮小しているビール市場をなんとか活性化したいという危機感と気概から
  • ビール市場を自分たちが引っ張っていく責任感とリーダーシップ、王者としての貫禄がある


496 に込められた想い
  • 496 は完全数 (自分以外の約数を全て足すとその数に一致する数字) 。完全数をあえて商品名に入れ、この商品を他とは違う独自な存在にしたいという意思
  • 1 から 31 を順番に足すと 496 になる。1ヶ月の31日間に毎日飲んでも飽きないビールという絶対の自信



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。