投稿日 2021/08/25

戦略を組織に浸透させ実行する方法。日本ロレアルのマーケティング戦略から


今回は、戦略とマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • 日本ロレアルのマーケティング戦略の変更
  • 製品中心から顧客中心へ
  • 戦略を組織に浸透させ、実行する方法

この記事を読んでいただきたいと思うのは、マーケターの方です。他には商品戦略や営業戦略、事業戦略を考えたりつくる役割にある方です。

戦略を実行させる方法を具体的な事例で解説をしています。お仕事に何か少しでも参考になればうれしいです。

日本ロレアルのマーケティング戦略の変更


日経 MJ の2021年8月15日の一面で、LTV の特集記事が組まれていました。

LTV を重視する事例がいくつか紹介されていて、中でも興味深かったのは日本ロレアルでした。

出典: 日経

図の中にあるようにポイントは3つです。

✓ 日本ロレアルの LTV を実現する取り組み
  • 製品中心から顧客中心へ
  • 顧客データの統合
  • 評価制度の変更

それぞれを簡単に補足すると、1つ目は業績の評価指標を変更しました。従来の製品ごとの 「売上高」 から顧客ごとの 「購入額」 に変えました。これはパラダイムシフトと言えるくらい大きな変更です。

2つ目は顧客ごとの購入額を見るために、店舗と EC のデータを統合しました。これにより顧客ごとの購入状況がわかり、顧客一人ひとりに沿ったメッセージ配信ができます。

3つ目は評価制度の変更です。具体的には店頭で接客をする美容部員に対してで、これまでは店頭の売上高で評価していましたが、担当したお客がその後に EC で商品を買えばそれも評価対象になります。

以上の3つの取り組みから、事業部では LTV が 10% 上昇したとのことです (2021年上期 vs 2020年上期) 。


戦略的な意味合い


ここまで見てきた日本ロレアルの取り組みが何を意味するかを戦略の観点から掘り下げてみます。

本質を一言で表現すれば、戦略は数字や評価に反映し、組織で実行される仕組みにしたことです。

戦略とは実行する前の段階では仮説にすぎません。あくまで目的を達成するための最も確からしい仮の答えです。戦略は実行して初めて本当の答えだったかがわかります。

ここから言えるのは、戦略は実行とセットで考えるべきです。戦略が実行されないという 「絵に描いた餅」 で終わらないことが大事です。


戦略を実行するために



では、日本ロレアルの取り組みを 「戦略を実行するために仕組みにする」 という視点で見てみましょう。

大きな方針転換は 「製品中心から顧客中心」 でした。顧客志向に変えて LTV の最大化を目指します。ただし言葉だけでは、ともするとスローガンでしかない単なる飾り物になってしまいかねません。

先ほど見たように3つのポイントは、「製品中心から顧客中心」 という戦略を組織に浸透させ実行する具体的な仕組みと捉えられます。この観点で3つを整理すると、

✓ 戦略 (製品中心から顧客中心へ) を数字や評価に反映する仕組み化
  • 業績評価を 「製品ごとの売上高」 から 「顧客ごとの購入額」 へ変更
  • 店舗と EC での顧客の購入データを統合
  • 美容部員の評価対象に接客したお客の EC 購入も含める

いずれにも共通するのは 「主語は顧客であること」 です。戦略が 「製品中心から顧客中心へ」 に変わったことからこそ、主語は顧客になるのです。

このように、現場メンバーにとって実務に直接影響するレベルになっていれば、戦略が自分ごと化されます。逆に言えば、現場が日常的に目にしたり関わる範囲にまで戦略を仕組みに落とし込まないと、戦略は浸透せず実行されないのです。

ご紹介した日本ロレアルの事例は、戦略を数字や評価に反映し、組織で実行される仕組みにした例として興味深いです。


まとめ


今回は戦略とマーケティングについてでした。

最後にまとめです。

日本ロレアルの戦略 (製品中心から顧客中心へ) から仕組みへの落とし込み
  • 業績評価を 「製品ごとの売上高」 から 「顧客ごとの購入額」 へ変更
  • 店舗と EC での顧客の購入データを統合
  • 美容部員の評価対象に接客したお客の EC 購入も含める

戦略を実行するために
  • 戦略を数字や評価に反映し、組織で実行される仕組みにすることが大事
  • 現場メンバーにとって実務に直接影響するレベルになっていれば、戦略が自分ごと化される
  • 逆に言えば、現場が日常的に目にしたり関わる範囲にまで戦略を落とし込まないと、戦略は浸透せず実行されない


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。