投稿日 2021/08/15

自分の強みに気づく方法。チケットぴあのワクチン予約システム提供からの考察


今回は、チケットぴあのワクチン予約システム提供のニュースを取り上げます。

戦略の意味合いと、自分 (たち) の強みに気づく方法を掘り下げています。

✓ この記事でわかること
  • チケットぴあが 「新型コロナウイルスのワクチン予約システム」 の提供を開始
  • 「アンゾフのマトリクス」 に見る戦略的な意味合い
  • わかっていない自分の強み (灯台下暗し) 
  • 強みに気づく方法

この記事を読んでいただきたいと思うのは、チケットぴあの予約システム提供開始のニュースを深掘りした意味合いについて、興味を持っていただいた方です。

アンゾフのマトリクスから戦略的な視点で解説をしていき、そして記事の後半では、自分の強みを見つける方法をご紹介しています。お仕事での商品開発やマーケティング、個人のビジネスキャリアにも少しでも参考になればうれしいです。

チケットぴあのワクチン予約システム


チケットぴあが、自社のチケット予約システムを活用し、新型コロナウイルスワクチン接種の抽選予約受付を2021年7月より開始しました (ニュースリリースはこちら) 。

チケット予約で持っているノウハウを生かし、ワクチン予約を円滑に対応するシステムを構築します。まずは金沢市からで、その後は導入先を増やす予定とのことです。

以下は取り上げられたテレビのニュース番組です。



戦略的な意味合い


ぴあのワクチン予約システム提供の意味は、独自ノウハウの横展開です。

自社が持っているチケット予約の仕組みは、高度なノウハウや自社にしかない強みで、これを別のお客やフィールドに応用する取り組みです。

戦略的な意味合いを、「アンゾフのマトリクス」 から考えてみましょう。

出典: NIJIBOX BLOG

縦軸の市場 (顧客) は、従来のチケット予約システムの提供先である企業や団体から、ワクチン予約は自治体向けという 「新しい市場に進出した」 と捉えることができます。

横軸の製品も、チケット予約システムからワクチン予約システムの提供なので、「新規の製品」 と見ることができます。

ただし、おそらくシステムの裏側の仕組みやノウハウは既存ビジネス (チケット予約) と共通しているはずで、実質的には新規のお客 (自治体) に既存製品を提供していると見てもいいでしょう。アンゾフのマトリクスで言えば左下の 「新市場開拓」 です。

* * *

では、ここからはキーワードを 「強み」 として見ていきましょう。


気づかない強み



掘り下げたい問いは、「チケットぴあがチケット予約システムをワクチン予約に応用できたのはなぜか」 です。

これは一見すると当たり前で、さも簡単にできるように見えるかもしれません。しかし、人や会社は自分たちの強みに気づいていない、または正確に理解していないことが往々にしてあります。灯台下暗しなわけです。

というのは、強みになっていること、今回の例で言えば一時的に殺到するチケット予約需要を滞りなくさばけることは、普段からやっているのでできて当然に思えます。しかしサーバーダウンなどのシステム障害を起こすことなく、予約申込みの定員オーバーなら抽選に切り替える仕組みなどは高度なノウハウと知見の塊です。

できて当たり前だと思うと、他社でもできるものと思うようになってしまいます。そうなると 「強み」 という他者 (他社) と比べて秀でていて、独自化を実現しているとは認識されなくなります。

つまり、独自ノウハウや仕組みなどの強みを他に応用するにあたっては、そもそもとして活用するために強みだと気づくところにまずはハードルがあるわけです。


強みに気づく方法


ではここから考えていきたいのは、自分たちの強みに気づく方法です。

強みとは自分たちには当たり前のようにできることで、他の人にはそうではないことです。かつ、人から感謝されるなど提供価値につながるものが強みです。

自分の強みに気づくヒントは、他の人のやり方や仕組みを見た時に、「自分ならもっとうまくやれる」 「こうすればいいのに」 と歯がゆく感じることです。もちろん 「できる」 と思えることと、実際にとその通りに 「やれる」 にはギャップがあり、単なる思い込みや自信過剰には注意が必要です。

過去に自分がやった・今やっている方法のほうが明らかに良いと思えば、そしてその方法は自分は当たり前のように普通にやっているもので、かつ価値提供につながるなら、それこそが強みです。

例えば仕事の例では次のようなことです。

✓ 仕事での強みの例
  • プロジェクトマネジメント
  • 準備の段取り
  • 資料のスライドの作り方
  • 会議の仕切りやファシリテーション

他の人のやり方を見て、歯がゆくなりついアドバイスしたくなるのであれば、それはあなたの強みです。


まとめ


今回はチケットぴあのワクチン予約システム提供開始のニュースから、戦略的な意味合いと強みの見つけ方を掘り下げました。

最後にまとめです。

チケットぴあのワクチン予約システム
  • 新型コロナウイルスワクチン接種の抽選予約受付を2021年7月より開始
  • チケット予約で持っているノウハウを生かし、ワクチン予約を円滑に対応するシステムを構築する
  • システムの裏側の仕組みやノウハウは、既存ビジネス (チケット予約) と共通しているはずで、新規のお客 (自治体) に既存製品を提供する

気づかない強み
  • 本来は強みだが、自分たちにはできて当たり前のことは、他でもできるものと思ってしまう
  • 他者 (他社) と比べて秀でていて、独自化を実現している強みとは認識されなくなる。灯台下暗しの状態

強みに気づく方法
  • 他の人のやり方や仕組みを見た時に、「自分ならもっとうまくやれる」 「こうすればいいのに」 と歯がゆく感じることが強みに気づくヒントになる
  • 自分の方法は自分には当たり前のように普通にやっているもので価値提供につながるなら、それこそが強み


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。