投稿日 2021/08/09

アイリスオーヤマの AI カメラ店内照明効果の実験がおもしろい。実験の戦略的な狙いとビジネス活用とは?


今回は、店内 AI カメラを使った購買行動への影響を見る実証実験を取り上げます。

この記事でわかること


  • AI カメラを使った店内照明の効果検証 (アイリスオーヤマと早稲田大学)
  • 実験の戦略的な意味合い
  • ① 経験則の可視化と知見化
  • ② 知見のビジネス活用

店内照明が、来店客の購買行動にどう影響や効果を与えるかを検証する実験が興味深かったです。記事では、実験内容と狙い、戦略的な意味合いを掘り下げています。


読んでいただきたい方


この記事を読んでいただきたいと思うのは、「AI カメラを使った購買行動への影響を調べる実験って何?」 と興味を持った方です。

実験の狙い、データのビジネスへの活用を解説しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。


AI カメラを使った店内照明の効果検証


実験のことを知ったのは日経 MJ の記事からでした。

以下は記事からの引用です。

アイリスオーヤマは、小売店の店内照明の色合いが来店客の購買行動にどのように影響するかを検証している。人工知能 (AI) カメラを使って来店客が購入した商品や滞在時間などを細かくデータ化する。同社の店舗向け発光ダイオード (LED) 照明を売り込む際に、データを活用した店舗改善策を提案する。

2014年にアイリスの傘下に入ったホームセンター 「ユニディ」 の2店舗を活用して購買動向を調べている。千葉県松戸市の店舗では、売り場ごとに照明の色を寒色や暖色で分けている。

店内には80台の AI カメラを配置しており、来店客をカメラが自動で補足し、どの商品を手に取ったか、店内をどのような順路で移動したかを売り場ごとに匿名のデータとして蓄積している。

 (引用: 日経 MJ 2021.8.2)

この実験にはどのような狙いがあるのでしょうか?


実験の狙い


実験に使われた AI カメラ (引用: 日経 MJ)

目的は、AI カメラを使っての店内照明が、来店したお客にどんな影響を与えるかを明らかにすることです。

ただしこれだけではなく、その先に実験の狙いは2つあります。

1つは、アイリスオーヤマが販売している照明器具 (店舗向け LED 照明) の販促促進です。もう1つは実験データから照明選択や設置などの店舗改善アドバイスにつなげます。


戦略的な意味合い


ではここからは、実験の意味合いについてさらに掘り下げてみましょう。

最初に結論で、次の2つです。


実験の戦略的な意味合い
  1. 経験則の可視化と知見化
  2. 知見のビジネス活用


では順番にご説明しますね。


経験則の可視化と知見化


店内照明の影響や効果は、お店の現場で働いている人であればなんとなくの肌感覚で感じていたりします。

以下は、先ほどの日経 MJ の記事からの引用です。

店内照明の場合、洗剤や家具など日用品の売り場の照明は、温かみを感じやすい暖色の方が購入につながるといった経験則はあった。しかし 「実際のデータが圧倒的に不足していた」 (早大の恩蔵直人教授) という。

 (引用: 日経 MJ 2021.8.2)

明るい売場と少し暗くした売場の違い、または暖色系の温かみのある光と寒色系の白がはっきりした光では確かに影響は違いそうです。

ただしこれらはあくまで推測で、店員は実感として見えていても経験則にすぎません。確固たる根拠、例えばデータに基づくものではありません。

アイリスオーヤマと早稲田大学の共同実験は、テストとして意図的に照明を変え、かつ効果を AI カメラで記録したお客の行動データから検証しています。今まではブラックボックスで従業員それぞれの経験則だったことを実験から可視化し、知見に高める狙いです。

これが1つ目の意味合いの 「経験則の可視化と知見化」 です。


知見のビジネス活用



実験から知見を得られたとしても、有効活用できなければビジネスでは価値を生みません。「へぇ、おもしろいね」 で終わってしまいます。そうではなく、ビジネスにつなげることが大事です。

アイリスオーヤマの場合は大きくは2つです。


知見のビジネスへの活用
  1. 商品である LED 照明器具の販売促進
  2. 小売店へのアドバイスやコンサルティング


それぞれを補足すると、前者の販売促進は実験から得られた知見が、照明器具を売る時の訴求や説得材料になります。相手 (顧客) の売場にあった照明をデータからの根拠を伴った提案ができます。

もう1つの活用 (コンサルティング) についても補足しますね。

小売店の店舗課題に対して、データや知見に基づいたアドバイスやコンサルティングまでに高めることができます。つまり、照明というモノを売るだけではなく、コンサルティングとして知見や専門ノウハウ自体も売りモノになるわけです。

AI カメラのデータを使った店舗実験から得られる知見そのものがビジネスになります。


まとめ


今回はアイリスオーヤマと早稲田大学の実証実験である、AI カメラを使った店内照明の購買行動への影響・効果の検証を取り上げました。

最後にまとめです。


AI カメラを使った店内照明の効果検証
  • 店内照明による購買行動への影響や効果を検証する実験。アイリスオーヤマと早稲田大学の共同実験
  • 2店舗を活用し、店内には80台の AI カメラを配置
  • カメラが来店客を自動補足。どの商品を手に取ったか、店内の移動順路を売り場ごとに匿名のデータで蓄積


実験の戦略的な意味合い
  • 経験則の可視化と知見化。今まではブラックボックスで従業員それぞれの経験則を実験から可視化し、知見に高める
  • 知見のビジネス活用。小売店の店舗課題に対して、照明というモノを売るだけではなく、コンサルティングとして知見や専門ノウハウ自体も売りモノにできる



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。