投稿日 2021/10/10

出前館の新サービス 「DeDirect」 に学ぶ、ビジネスモデルのつくり方


今回は、ビジネスモデルについてです。

✓ この記事でわかること
  • 出前館の飲食店向け新サービス DeDirect
  • ビジネスモデルのポイント3つ
  • ① クライアントの苦手を支援するソリューション
  • ② 自社のコアビジネスへの接続
  • ③ 「損して得取れ」 の課金モデル
  • 学べること

出前館の新サービスをビジネスモデルの観点で解説をしていくので、何か少しでも参考になればうれしいです。ぜひ最後まで読んでみてください。

出前館の新サービス


デリバリーを展開する出前館が新しいサービスを開始しました。サービス名は 「DeDirect」 です (公式サイトはこちら) 。

飲食店向けに宅配サイト作成を支援するサービスで、2021年8月にローンチしました (ニュースリリースはこちら) 。

出前館がシステムの土台を提供し、飲食店にとってのメリットは宅配サイトを簡単に立ち上げられます。作成する宅配サイトには店舗のメニュー写真を掲載でき、テーマカラーも選べ、サイト名称なども店舗が設定できます。

出典: 日経

以下は PR TIMES のニュースリリースからの引用です。

DeDirect とは、飲食店のデリバリー・イートイン予約・テイクアウト注文など、お店の運営をする上で必要とするサービスを網羅的にカバーするサイトです。

今回は第一弾として、店舗専用のデリバリーサイトを作成することができるサービスをローンチします。今後、イートイン予約機能やテイクアウトの注文機能、またお店からユーザーへ直接販促ができる、LINE 公式アカウントの連携も予定しています。

DeDirect のビジネスモデル


ではここからは出前館の DeDirect を、ビジネスモデルの観点から掘り下げていきましょう。

見ていくポイントは3つです。

✓ DeDirect のビジネスモデル
  • クライアントの苦手を支援するソリューション
  • 自社のコアビジネスへの接続
  • 「損して得取れ」 の課金モデル

では順番に解説しますね。

クライアントの苦手を支援するソリューション


大手チェーンを除けば、一般的には飲食店には自分の店のサイトを作成したり更新することは後回しになりがちです。食料調達、次の日の仕込み、調理、会計処理、店舗の掃除などの日々のマストでやることに比べると優先度が下がります。

人によってはサイト構築には苦手意識を持っています。飲食店側は宅配サイトの対応はしたほうがいいことはわかっていますが、手が回らなかったり、作成ノウハウがないのが現状です。

出前館の DeDirect は、自分たちのシステムやノウハウを生かしてこうした 「飲食店にとっての苦手領域」 「後回しになりがちなビジネス課題」 を支援するサービスなのです。自社の強みからの顧客 (飲食店) の問題解決です。

自社のコアビジネスへの接続


出前館が DeDirect を提供するのは、宅配サイト作成支援が自分たちのコアビジネスに結びつくからです。

出前館にとっては飲食店がいくらおいしい料理を提供していても、デリバリーができる能力や仕組みがなければ出前館へのビジネス機会はありません。

宅配をするためには、出前の集客 (宅配サイト) 、宅配向け料理メニュー、宅配する人員やバイクなどのリソースを飲食店が持つことが必要です。この中のうち、出前館が着目したのが宅配メニューサイト作成だったわけです。

DeDirect は飲食店の苦手領域への貢献だけではなく、宅配を出前館が受けるボトルネックを解消し、出前という自社のコアビジネスにつなげる狙いがあります。

 「損して得取れ」 の課金モデル


DeDirect は、宅配サイトの作成部分は出前館は無料で請け負います。

ではどこでお金をもらうかと言うと、宅配サイト経由で注文が発生した時と、出前館を使う配達代行においてです。

以下は日経新聞の記事からの引用です。

サイト開設にかかる初期費用は無料とした。基本メニューだけを利用する場合は、月額費用もかからない。

ただサイトを通じて宅配メニューの注文が入った際は、料金の 10% が手数料としてかかる。配達を出前館に依頼する場合は、配達代行料 (料金の 25%) がかかる。

宅配の注文がサイト経由で入り、毎回の配達に出前館を使ってもらえれば料金の 35% が継続的に得る仕組みです。飲食店が自分で配達をしたとしても、料金の 10% はしっかりと入るようになっています。

サイト構築そのものでは初期コストは請求せず、ここだけを見れば出前館はコストがかかるのでその分だけ赤字です。しかし長い目で見れば、後からランニングで収益化するいわば 「損して得取れ」 の課金モデルです。


学べること


では最後に、出前館の DeDirect からビジネスへ学べることを一般化して整理してみましょう。

ビジネス機会を発見し、ビジネスモデルを考える時の問いかけとして、次のようなことを考えてみると良いです。

✓ 学べること (自分たちへの問いかけ)
  • クライアントが手をつけられていない重点課題は何か (やるべきなのはわかっているが苦手領域で後回しになっていることは何か)
  • その課題に対してどうすれば自分たちの強みから支援できるか
  • クライアントの苦手を解決し、自社のコアビジネスと相乗効果を起こせられないか
  • ソリューションの課金モデルはクライアントにとって受け入れやすく、かつ自社へのうまみもあるものにどうすればできるか
  • あえて 「損して得取れ」 で捉え、中長期での収益モデルをつくれないか


まとめ


今回は出前館の新サービス 「DeDirect」 から、ビジネスモデルに学べることを掘り下げました。

最後にまとめです。

出前館の飲食店向け新サービス DeDirect
  • 飲食店向けに宅配サイト作成を支援するサービス
  • 今後、イートイン予約やテイクアウト注文機能、お店から直接販促ができるように LINE 公式アカウントの連携も予定
  • 宅配サイト開設の初期費用は無料
  • サイト経由で宅配メニュー注文が入れば料金の 10% が手数料として徴収。配達を出前館に依頼する場合は、配達代行料がさらに料金の 25% かかる (合計 35%)

DeDirect のビジネスモデル
  • クライアントの苦手を出前館のシステムやノウハウを活かして支援するソリューション
  • 宅配のボトルネックを解消し、飲食店の出前代行という自社のコアビジネスにつなげる
  • サイト作成は無料で対応するが、サイト経由の宅配注文の手数料と宅配代行で後から 「損して得取れ」 の課金モデル (ランニングでの収益化)


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。