投稿日 2021/10/29

廃棄物を活用したビジネスに学ぶ、提供価値と競争優位のつくり方


今回は、商品開発やマーケティングです。

この記事でわかること


  • 廃棄物を活用したビジネス事例
  • 戦略やマーケティングの観点からの掘り下げ
  • ① エコ商品の2つの価値
  • ② コモディティ化と競争優位
  • 学べること

この記事を読んでいただきたいのは、商品開発やマーケティングの仕事をされている方です。

廃棄物を使った商品ビジネスの事例から、商品開発・マーケティングに学べることを解説していきます。


廃棄物を活用した事例


今回ご紹介したいビジネス事例は2つです。

✓ 廃棄物を活用した事例
  • 調理くずを肥料に使ういちご栽培
  • 捨てられる服を素材に再利用したアパレルブランド

では順番に見ていきましょう。


調理くずを肥料に使ういちご栽培


この事例を知ったのは日経新聞の Web 記事からでした。

以下は記事からの引用です。

準大手ゼネコンの戸田建設は、飲食店などの食材の廃棄ごみを肥料に使ったイチゴ栽培の技術を開発した。

茨城県常総市の農業施設で自治体などと連携してイチゴを量産し、近隣の商業施設などで販売するといった事業化の検討に入る。イチゴ栽培を核に、地域創生につながる環境配慮のビジネスモデルを作る。

 (中略)

調理くずを、高温高圧の蒸気で液状に分解し、微生物の発酵による液化よりも短時間で液体肥料に加工できるようにした。この肥料を農業用ホースでイチゴの苗床に投与して栽培したところ、従来の化学肥料と同等の収穫量や糖度を実現できたという。

 (引用: 日経 2021.9.29)


捨てられる服を素材に再利用したアパレルブランド


続けて2つ目の事例です。こちらも日経の記事から引用します。

セレクトショップ運営のアーバンリサーチ (大阪市) が2018年に立ち上げたブランド 「commpost (コンポスト) 」 が商品ラインアップを増やしている。

廃棄される商品や素材を再加工して生まれ変わらせる 「アップサイクル」 で展開するのが特徴。技術的に難易度が高いとされるアップサイクルを身近にして、同社の SDGs (持続可能な開発目標) を象徴するブランドに育てる。

 (中略)

衣料品は異なる素材を組み合わせたり、商品によって素材の品質が違ったりする。このため同じ素材をより分け、再び商品にするのは難しい。

アーバンリサーチは、素材別ではなく色ごとに繊維を分ける 「カラーリサイクルシステム」 を活用することで、アップサイクルを可能にした。

 (引用: 日経 2021.8.20)


戦略やマーケティングの観点からの掘り下げ


では廃棄物を活用するビジネスについて、戦略やマーケティングの観点から深掘りをしていきましょう。

次の2つの観点から見ていきます。

✓ 戦略やマーケティングからの掘り下げ
  • エコ商品の2つの価値
  • コモディティ化と競争優位

順番に解説をしますね。


エコ商品の2つの価値


これは一般的な話としてですが、これまでは廃棄物を再利用する商品は、回収から再利用に手間がかかるわりに、品質はそうではない商品に比べて劣っていました。

商品を保有したり使うことによる価値を、機能的価値と意味的価値 (例: 愛着がある, 使っていて楽しい, 自己肯定感が上がる) の2つに分けた時に、エコな商品は意味的価値に重きが置かれていました。

商品によっては多少の機能的価値を犠牲にしても、エコ商品を使うという環境への配慮・肯定感・満足感などの意味的価値が重視されていたわけです。

一方で、今回ご紹介した廃棄物を活用した商品事例では、例えば調理くずを肥料に使ったイチゴ栽培では、従来の化学肥料を使った場合と同等の栽培量と糖度になりました。つまり機能的価値も少なくとも同じくらいの水準になってきたのです。

こうなると元々の意味的価値がある分だけ、エコな商品が選ばれる確率が高くなります。


コモディティ化と競争優位


ビジネスで大事なのは他と比べての独自性を作り、その独自要素がお客にとって価値であることです。これは差異化の本質です。

廃棄物を活用するアプローチは、まだ一部のプレイヤーでしかされていなければ、他にはない独自化の源泉になります。お客の立場からすると 「普通の商品にはない環境に配慮されたエコな商品」 という選ぶ理由ができます。

しかし今後は SDGs のトレンドからも廃棄物を活用することが一般的になると、エコ商品はコモディティ化していきます。そうなると独自化にはならず、競争優位はなくなってしまいます。いずれはエコの要素が入ることが商品の前提のようになった時に、別の独自化の要素をつくらなければいけません。

今はエコにするトレンドに乗るという目の前のことに注力していれば良いかもしれませんが、一方で中長期での時間軸から、未来の競争優位のために今から布石を打っておくことが大事です。


学べること


では最後に、今回の内容から学べることを一般化して整理してみましょう。

お客への提供価値は、機能的価値と意味的価値の2つに分けて捉えると良いです。着眼点はそれぞれの価値について次のようになります。

✓ 価値提供への学び (自分たちへの問いかけ)
  • 他と比べてお客が得る独自な価値は何か
  • 機能的価値と意味的価値において劣っている要素はないか
  • 特に意味的価値で、自分たちがまだ気づいていないお客やユーザーの価値ストーリーは何か

独自化の実現については、独自性の源泉になるものは一朝一夕では獲得できません。3年後や5年後を見据えて、中長期の取り組みとして今から仕込んでいくことが求められます。

また、今の競争優位はいつまで優位性を保てるかも見ておくといいです。競争優位には賞味期限があり、いずれはなくなることを前提に取り組むことが大事です。


まとめ


今回は廃棄物を活用したビジネス事例から、提供価値と競争優位のつくり方について見てきました。

最後にまとめです。

エコ商品の2つの価値
  • 機能的価値と意味的価値では、エコな商品は意味的価値 (例: 環境への配慮, 肯定感, 満足感) に重きが置かれていた
  • 機能的価値も向上すると、元々の意味的価値がある分だけエコな商品が選ばれる確率が高くなる

コモディティ化と競争優位
  • 商品に廃棄物を活用する方法が一部のプレイヤーでしかされていなければ、他にはない独自化の源泉になる
  • しかし今後はエコ商品がコモディティ化すると、独自化にはならず競争優位ではなくなってしまう
  • 未来の競争優位のために今から布石を打っておくことが大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。