出典: ミズノ
今回は、ヒット商品を見るときのフレームをご紹介します。
✓ この記事でわかること
- 高校球児で人気の白スパイク
- ヒット商品を分析するフレーム
- ① 機能, デザイン, ストーリー
- ② 二階建ての価値構造
- 商品開発やマーケティングに学べること
この記事を読んでいただきたいと思うのは、流行っている商品やサービスのヒット理由を分析する方法を知りたいと思っていただけた方です。
ご紹介するヒット商品を見る着眼点は、商品開発やマーケティングにも活用できます。なので、商品開発やマーケティングの仕事をされている方にも参考になればうれしいです。
ぜひ最後まで読んでみてください。
人気の白スパイク
今回の記事では、ヒット商品を分析する方法をご紹介していきます。
具体的な事例があると共有しやすいので、おもしろいと思った 「高校球児に人気の白色のスパイク」 を取り上げます。
ミズノのスパイクです (公式サイトはこちら) 。
出典: ミズノ
以下は、日経新聞の記事からの引用です。
ミズノは白色の野球用スパイクの販売を強化する。
2020年度から高校野球の公式戦で白スパイクの着用が認められたことをきっかけに、高校球児を中心に使用が増えている。同社の白スパイクの販売数は6月に黒モデルを上回り、売り上げは前年度比で2.5倍に伸びた。
全国大会で使用する選手が増えてファッション面でも人気が高まるなか、機能性を強化して需要を取り込む。
(中略)
供給を増やすほか、機能面を強化して競合他社との差異化を図る。
従来のスパイク開発で力を入れていた軽量化を白スパイクでも展開。最新ブランド 「LIGHTREVO ELITE」 は、平均的なスパイクより約2割軽い片足235グラムだ。足底の土踏まず付近の部分に曲げやすい溝を入れたことで、足の動きにも柔軟に反応する。
軽さと柔軟性を強化したことで選手の動き出しが早くなりやすいという。スパイク開発を担当する鈴木康平氏は 「野球選手にとって一歩目は大事。プレーに適したスパイクは球児からの支持も高い」 と話す。同社の調査によると21年の夏の甲子園では48校中16校で全選手がミズノのスパイクを使ったという。
続けて、同じ記事からもう少し引用を続けます。
白スパイクは黒と比較して熱を集めにくく、スパイク内部の温度を黒よりも低くできる。選手が疲れにくくなる利点もあるといい、鈴木氏は 「 (白スパイクを使うと) 黒より断然足の熱さが違う、もう黒には戻れないという使用者の声も聞いている」 と話す。
(中略)
同社は 「センバツ (選抜高校野球大会) で着用する選手が増えたことで、球児の間で需要が大きく上がった。今は白スパイクが黒よりかっこいいという一種の流行が来ている」 と指摘する。
(中略)
競技人口の減少が続くなか、新規需要の開拓はミズノの課題だったが、白スパイクの登場でスパイクの買い替え需要は一気に伸びた。試合用と練習用を使い分けるため2足目を購入する顧客もいるという。
ヒット商品を分析する方法
では白スパイクを具体例に、ヒット商品やサービスを分析する方法を見ていきましょう。
ご紹介したいのは次の2つです。
✓ ヒット商品を見る着眼点
- 機能, デザイン, ストーリー
- 二階建ての価値構造
では順番に見ていきましょう。
機能, デザイン, ストーリー
この3つを切り口にして商品やサービスを見ていくと整理しやすいです。
✓ ヒット商品を見る切り口
- 機能: 商品やサービスの性能やスペック, 能力
- デザイン: 見た目のかっこよさ・かわいさ。使いやすいユーザーフレンドリーなデザイン性
- ストーリー: 商品・サービスが持っている物語性。つくり手の想いや哲学、ブランドとしての世界観。有名人などの影響力のある人が使っているなど利用者のストーリーも含む
この3つを白スパイクに当てはめてみると、次のようになります。
✓ 白スパイクの人気の要因
- 機能: ミズノのスパイクは軽く柔軟性があり、内側の温度が黒スパイクより低く疲労を軽減する
- デザイン: これまでの黒色に比べて白色という新鮮な見栄え
- ストーリー: 公式戦で解禁されたことによる注目や機運の高まり、全国大会出場校の選手が使っていて自分も同じように使ってみたい
二階建ての価値構造
2つ目のヒット商品・サービスを見る視点、価値の観点からです。
1つ目で見た 「機能, デザイン, ストーリー」 は、要するに提供される価値です。白スパイクは機能的にも感情的にも価値があると思えるから、高校球児たちから選ばれるわけです。
価値を要素分解する方法として覚えておいて損はないのは 「二階建ての価値構造」 です。
順番を逆にして二階からの説明ですが、
✓ 二階建ての価値構造
- 二階: 付加価値
- 一階: 土台となる基本的な価値
白スパイクに当てはめると、一階の価値は野球用スパイクとしての機能性です。例えば軽さや柔軟性、熱くなりにくいことによって疲労を和らげてくれます。
二階部分の付加価値が白色という新鮮なカラーデザインやストーリーです。一階の機能的価値だけでは差別化しにくくても、二階の付加価値で独自化をしていきます。
二階建ての価値構造のポイントは、一階の価値がベースになっていることです。
建物と同じで、一階がしっかりしているからこそ上にある二階も安定します。一階と二階の価値構造もこれと同じで、いくら二階の付加価値が魅力的でも一階の基本的な価値が弱かったり他と比べて劣っていれば選んではもらえません。
白スパイクで言えば、白色のスパイクで見た目はかっこよくても、試合本番で動きにくいスパイクだったとすると、決して高校球児に使ってもらえることはありません。
学べること
ここまででご紹介したヒット商品を見る着眼点は、新しい商品・サービスのアイデアや企画、マーケティングにも活用できます。
具体的には次のような問いかけから、発想を広げてみるといいです。
✓ 商品開発やマーケティングへの活用 (1)
- 機能面だけではなくデザイン性やストーリーからも独自化できないか
- ストーリーは、開発秘話や苦労話、つくり手の込めた想い、世界観などのつくり手の裏側にある物語からできないか
- 利用者側のストーリーも、匿名の口コミやレビューだけではなく、利用者その人のキャラクターや人間的魅力も含めて、利用者ストーリーとして商品・サービスに入れられないか
✓ 商品開発やマーケティングへの活用 (2)
- 提供価値を一階と二階に分けた時に、それぞれどんな要素があるか
- 一階では差別化が難しくても、二階の付加価値で独自化を図れないか
- 一階の価値がベースとなり二階の価値を支えているか
まとめ
今回は、高校球児で人気の白スパイクを使い、ヒット商品を分析する方法をご紹介しました。
最後にまとめです。
ヒット商品を見る切り口
- 機能: 商品やサービスの性能やスペック, 能力
- デザイン: 見た目のかっこよさ・かわいさ。使いやすいユーザーフレンドリーなデザイン性
- ストーリー: 商品・サービスが持っている物語性。つくり手の想いや哲学、ブランドとしての世界観。有名人などの影響力のある人が使っているなど利用者のストーリーも含む
二階建ての価値構造
- 一階は土台となる基本的な価値 (機能) 、二階が付加価値 (デザイン, ストーリー)
- あくまで一階の価値がベース。一階がしっかりしているからこそ二階も安定する
- いくら二階の付加価値が魅力的でも、一階の基本的な価値が他と比べて劣れば選んではもらえない
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