出典: 日経クロストレンド
今回は、あるヒット商品から商品開発の方法を見ていきます。
✓ この記事でわかること
- アスリート向けの餃子 「For ATHLETE (フォーアスリート) 」
- オリンピック選手村でも人気メニューに
- 開発のきっかけは羽生選手との雑談
- n1 分析からの商品開発
- 「個客」 から 「顧客」 へ広げるアプローチ
この記事を読んでいただきたいと思うのは、仕事で商品やサービスのアイデアを考えたり、商品開発を担当されている方です。
ヒット商品の事例から 「n1 分析からの商品開発」 という切り口で解説をしていくので、参考になればと思います。
他に読んでいただきたい方は、羽生選手との会話が開発のきっかけになったことなど、アスリート向けの餃子というヒット商品に興味を持った方にも参考になればうれしいです。
アスリート向けの餃子
今回ご紹介したいのは、アスリート選手向けに開発され、東京オリンピックの選手村でも人気メニューになった餃子です。
以下は、日経新聞の記事からの引用です。
味の素冷凍食品は、アスリート向けの新ブランド 「For ATHLETE (フォーアスリート) 」 を立ち上げた。第1弾として冷凍ギョーザ2種類を発売した。公式の電子商取引 (EC) サイト限定で販売する。
手軽にバランスよく栄養を取れるギョーザの販売を手始めに、健康意識が高い消費者のニーズに応える。
出典: 日経クロストレンド
この冷凍餃子は、東京オリンピックでも話題になりました。選手村で食べた外国選手が SNS に投稿するなど、海外からも注目された餃子です。
開発のきっかけ
「For ATHLETE」 の餃子の開発のきっかけになったのは、フィギュアスケートの羽生選手との雑談からでした。
日経クロストレンドの記事で紹介されているので、一部を抜粋して引用します。
商品開発のきっかけは、ビクトリープロジェクトのシニアディレクターである栗原秀文氏と、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手との何気ない会話からだった。栗原氏は、羽生選手の試合に帯同し、期間中の食事をコーディネートして提供している。
「今シーズンはどうしていこうか」 「結弦君は鍋物が好きだったよね」 という話をしていたところ、羽生選手は 「僕はギョーザが好き」 「ギョーザなら何個でも食べられる」 と発言。
一般的なギョーザは脂質量が多く、アスリートは好物でも手を出しにくいメニューだ。だが栗原氏は、「それならば、結弦君が食べられるようなギョーザを作ってあげる」 とその場で約束。「自分を追い込んだ」 と今では振り返っている。
その後、トップアスリート100人を対象にしたアンケートをとると、91人が 「ギョーザが好き」 と回答。
またアスリートに 「試合期間中の食事で気にすること」 を聞くと、以下の3つだった。
- たんぱく質をしっかり取る
- 炭水化物をしっかり取る
- 脂質を取りすぎない
エネルギー源の糖質、筋肉の材料となるたんぱく質、コンディショニングに必要なビタミンが取れるギョーザは、工夫次第でアスリートに最適のメニューになり得る。にもかかわらず、選手の栄養強化にこれまで積極的に活用されていないことに栗原氏は気づき、そこから本格的に開発を開始した。
学べること
ではここまでの For ATHLETE の餃子の話を一般化して、商品開発に学べることを見ていきましょう。
学びを一言で表現すれば、「n1 からの商品開発」 です。
n1 分析とは
n1 の意味は、サンプルサイズが 1 であることです。
1人の対象者 (今回の餃子の例では羽生選手) を深く掘り下げます。求めるニーズ (望みや不満) について、時には本人が言葉にできていなかったり、普段は自覚していないレベルまで理解します。
洞察から解釈を得て、商品アイデアやマーケティングに活用するのが n1 分析です。
n1 分析からの商品開発
For ATHLETE の餃子での商品開発のポイントは、1人 (羽生選手) から広げていったことです。
始めは羽生選手というたった1人の相手に満足してもらうことを目指しました。そこから同じニーズを持っている人に拡大していきました。
羽生選手が 「僕はギョーザが好き」 「ギョーザなら何個でも食べられる」 と言ったことがきっかけとなり、トップアスリート100人にアンケートをすると餃子が好きと答えた人は91人でした。母集団はトップアスリートですが、90% 以上が餃子を食べたいと思っていることを発見したわけです。
選手向けに商品化した後もオリンピック選手村で人気メニューになり、餃子を食べた外国人選手が SNS 投稿をして話題にするなど、アスリート向けの餃子への関心やニーズの高さが見て取れます。
このように最初は n1 という1人からでしたが、同じニーズを持つ人に広げていくのが n1 分析からの商品開発です。
個客から顧客へ
For ATHLETE の餃子はアスリート専用でしたが、EC で一般消費者にも販売され拡大していきます。
ここまで見てきた n1 分析からの商品開発は、別の表現をすれば 「個客」 から 「顧客」 に広げるアプローチです。
「個客」 とは餃子の例で言えば羽生選手です。1人という意味で個客としました。
同じニーズを持つ人に広げてグループ化していくと、個客は 「顧客」 になります。餃子の例では 「羽生選手 → トップアスリート → 一般消費者」 です。
闇雲に広げたわけではなく、始めは1人の客を深く理解しているからこそ、つながりがあり連動する広げ方ができます。餃子への望みや現状の餃子に対する不満を具体的に把握していたので、同じ思いを持つ人を共通化し、個客を顧客グループにできたのです。
まとめ
今回は、味の素冷凍食品の For ATHLETE の餃子から、商品開発に学べることを見てきました。
最後にまとめです。
アスリート向けの餃子 For ATHLETE
- 開発のきっかけになったのは、フィギュアスケートの羽生選手との雑談から
- スポーツ選手に必要な栄養素を取れる餃子は、工夫次第でアスリートに最適のメニューになると気づき開発がスタートした
- オリンピック選手村の人気メニューになり、一般消費者向けに EC で販売も開始
商品開発から学べること
- n1 からの商品開発
- 始めは羽生選手に満足してもらうことを目指し、そこから同じニーズを持っている人に拡大していった
- 羽生選手 → トップアスリート → 一般消費者と、1人の 「個客」 から 「顧客」 に広げるアプローチ
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