投稿日 2021/10/13

愛媛のスーパー・フジの 「みきゃんサーモン」 。三方よしのビジネスモデルと独自の提供価値


今回は、ビジネスモデルの話です。

この記事でわかること


  • 愛媛のスーパー・フジの 「みきゃんサーモン」 がおもしろい
  • ビジネスモデルの解説
  • ① 製造小売業
  • ② 三方よし
  • ③ らしさがある独自の提供価値
  • 学べること

この記事を読んでいただきたいと思うのは、ビジネスモデルを考えたり、ビジネスモデルの事例を見たり学ぶのが好きな方です。愛媛のスーパーの取り組みをビジネスモデルや商品開発の観点から解説しています。

他には、「みきゃんサーモン」に興味を持った方にも読んでいただけるとうれしいです。


みきゃんサーモン


愛媛のスーパーのフジが、「みきゃんサーモン」 という独自の商品を開発しました (ニュースリリースはこちら) 。

引用: 愛媛新聞

以下は日経新聞の Web 記事から抜粋して引用します。

愛媛県地盤のスーパー、フジはトラウトサーモンの委託養殖規模を拡大する。2022年の養殖規模を21年の4 ~ 5倍となる1万5千 ~ 2万匹に増やす。

飲食店からの需要の落ち込みに苦しむ養殖業者を支援するとともに、独自の商品を開発・販売して鮮魚売り場の競争力を高める。

 (中略)

県産ミカンのエキスを含む飼料で育て、ミカン風味が特徴だ。独自商品として付加価値を高め、ノルウェー産サーモンより100グラムあたり数十円高く販売する。

 (引用: 日経 2021.9.10)

フジがやっているには、地元の養殖業者への支援の意味合いもあります。再び引用です。

フジの委託養殖では県内の養殖業者がマダイやブリの水揚げを終えた後の1 ~ 3月に空いたいけすを活用する。

 (中略)

フジが狙うのは、コロナ下の需要減に苦しむ地場の養殖業者を継続支援しつつ、フジとしても収益を上げる持続可能な支援体制作りだ。

 (中略)

生産したサーモンはフジが全量販売し、餌代など飼育にかかる費用もフジが負う。このため、養殖業者はリスクを抑えて収益源を確保できる。一方、フジは原料調達から販売までを自社で完結させ、販売コストを抑制。鮮度の高い独自商品を店頭に並べ、売り場の競争力を高める。

サーモンは3カ月ほどで成育し、いけすの占有期間は短い。生産コストを抑えられるため、まさに 「ウィンウィンの関係」 (フジ鮮魚部門の村上豊部長) だ。

 (引用: 日経 2021.9.10)


ビジネスモデルの特徴


ではここからは、フジの「みきゃんサーモン」について、ビジネスモデルの観点から掘り下げます。

ポイントは3つです。

✓ みきゃんサーモンのビジネスモデル
  • 製造小売業
  • 地元の養殖業者を支援する三方よし
  • 独自の提供価値

ではそれぞれについて順番に見ていきましょう。


製造小売業


一般的にスーパーの事業は、基本的には商品を卸やメーカーから仕入れ、他者が作った商品をお店で売るビジネスです。

一方のみきゃんサーモンは、スーパー (小売) であるフジが自ら養殖によって商品を作るところから行い店頭販売します。つまり製造小売業の形をとっており、アパレルでの SPA と同じです。 SPA で代表的なのはユニクロです。


三方よし


フジが養殖を手掛けるとはいえ、ゼロから養殖業を立ち上げるのは時間もお金もかかってしまいます。

そこでフジは地元の養殖業者のいけすを活用します。マダイやブリのサケ以外の魚の養殖期間とずらし、養殖業者のいけすが空いている時期を使います。

地元の養殖業者の遊休資産を活用し支援する取り組みで、リスクはフジが負います。具体的には、生産したサーモンはフジが全量販売し、餌代など飼育にかかる費用もフジが負担します。

フジのやり方から思ったのは、売り手・買い手・世間の「三方よし」です。養殖業者、フジ、消費者の三者での Win を目指しています。


独自の提供価値


ここまでフジのビジネスモデルで見てきた1つ目の 「製造小売業」、2つ目の 「三方よし」は、どちらかと言えば売り手であるスーパーのフジ側の話です。

言ってしまえば、フジがどれだけ地元業者を支援しようが、買い手である消費者には関係のない話です。消費者にとって重要なのは「みきゃんサーモン」は他よりも魅力があるのか、どんな価値があるか、買いたいと思えるかです。

みきゃんサーモンは外国のノルウェー産サーモンに比べて、次のような特徴があります。

✓ みきゃんサーモンの特徴
  • 地元で養殖をしているので新鮮な状態で店頭に並べられる
  • 愛媛県産のみかんエキスが入った飼料で育てるので、サーモンにみかん風味がある

ノルウェー産サーモンにはない特徴で、これらを消費者が価値だと思えばみきゃんサーモンを選んでもらえます。

個人的に興味深いのはみかん風味を入れていることです。愛媛といえばみかんで、「愛媛らしさ」を打ち出しています。名前は 「みきゃんサーモン」で、これはご当地キャラクターからつけられていますが、単にネーミングだけではなく、実際の風味からみかんとつなげています。

個人的には、みかん風味のサーモンはイメージができずピンと来ませんでしたが、愛媛っぽい独自のアプローチが興味深いです。


学べること


では最後に 「みきゃんサーモン」のビジネスモデルや商品特徴から、ビジネスで一般的に学べることを整理しておきましょう。

次のような問いかけから、商品・アイデアや企画、新規事業、マーケティングへのヒントになります。

✓ 学べること
  • 社外にも目を向けて資産を有効に活用する機会はないか
  • 困っている人や会社を支援することで、自社のビジネスモデルを進化できないか (単に慈善事業としてだけではなく)
  • そのビジネスモデルによりエンドユーザーや消費者にはどんな恩恵があるか
  • 商品特徴に 「自分たちらしさ」をどうすれば入れられるか
  • 商品やサービスの独自の要素は買い手にとっての価値になっているか


まとめ


今回は、愛媛のスーパー・フジの 「みきゃんサーモン」のビジネスモデルについて掘り下げました。

最後にまとめです。

愛媛のスーパー・フジの 「みきゃんサーモン」
  • 県産ミカンのエキスを含む飼料で育てミカン風味があり、鮮度の高い独自商品
  • フジは県内の養殖業者の空いたいけすを活用し苦しむ養殖業者を支援する

みきゃんサーモンのビジネスモデル
  • 製造小売業。小売であるフジが生産から販売までを対応
  • 地元の養殖業者を支援し、養殖業者・フジ・消費者の三方よしのビジネス
  • 独自の提供価値 (地元で養殖をして店頭販売をするので新鮮で、愛媛らしさがあるみかん風味)


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。