投稿日 2021/10/08

戦略の本質から考える 「強者の戦略」 と 「弱者の戦略」 。弱者は強者とは真逆のことをやるべし


今回は、戦略の話です。

✓ この記事でわかること
  • 戦略の本質
  • 国内の自動車販売市場を例に 「強者の戦略」 と 「弱者の戦略」 を解説
  • 強者と弱者では戦略は真逆になる
  • 強者は全方位の総力戦、弱者は一点集中の局地戦
  • 弱者に陥りがちな落とし穴と解決方法

この記事を読んでいただきたいと思うのは、戦略の話を聞いたり戦略のことを考えたりするのが好きな方です。仕事で事業や商品・サービスの戦略をつくる役割にある方には特に読んでいただきたいです。

戦略の本質から、強者と弱者のそれぞれの戦略を解説していきます。ぜひ最後まで読んでいただき、何か少しでも参考になればうれしいです。

戦略の本質


いきなりの質問ですが、戦略とは何でしょうか?

ここでは私の一言の説明を共有したいのですが、戦略とは目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。別の表現をすれば、目的達成のためのリソース配分の方針です。リソースとは企業であれば 「人・モノ・金 (予算) 」 です。

戦略としての 「やること」 「やらないこと」 は、立場によって変わります。強者にとってのやることと、弱者にとってのやることは異なり、真逆になります。これは今回の一言のメッセージでもあります。


強者とは


ここで言う強者とは次の2つを満たすプレイヤーです。

✓ 強者の条件
  • その市場でシェアが1位
  • シェアは 26% 以上

補足をすると、1つ目のシェア1位を満たしていてもシェアの数字が 26% 未満であれば、ここでは強者には含めません。

26% はランチェスター戦略からで、「下限目標値」 と呼ばれます。ちなみにランチェスター戦略では他にも代表的なシェアの目標値があり、42% の安定目標値、74% の上限目標値です。まとめると、

✓ 市場シェアの三大目標
  • 上限目標値: 最終的な目標数値 74%
  • 安定目標値: 首位を独走する状態 42%
  • 下限目標値: トップの位置になれる最低限のシェア 26%


日本の自動車販売台数シェア


では、この後に見ていく 「強者の戦略」 と 「弱者の戦略」 の具体例に使うために、日本国内の自動車販売シェアをご紹介します。

2020年の新車販売台数は、軽自動車を除いた場合と軽自動車を含めた場合では、次のようになります (出所は日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の統計) 。


軽自動車を除けば1位であるトヨタのシェアは 51.1% で、販売される車の2台に1台はトヨタの車です。2位のホンダ (10.2%) 、3位の日産 (9.2%) とは5倍の差があります。

軽自動車を含めた場合でもトヨタは 32.7% と、日本の自動車販売市場ではトヨタは強者です。


 「強者の戦略」 と 「弱者の戦略」 


ここで話を戦略に戻します。冒頭でも触れましたが、強者戦略と弱者戦略は正反対になります

強者がやることは弱者のやらないことで、強者がやらない・できないことが弱者がやることです。整理をすると、次のようになります。

✓ 強者の戦略
  • 総力戦
  • 広域戦
  • 全方位

✓ 弱者の戦略
  • 局地戦
  • 接近戦
  • 一点集中

このように強者と弱者ではやることが180度違うのです。


トヨタの戦略とホンダの戦略


先ほどの国内自動車販売シェアで見たようにトヨタは強者です。強者であるトヨタがやるのは全方位での総力戦です。

もし2位以下のメーカーが新しいコンセプトや車種を出し、その筋が良いと見れば徹底的に真似をし相手がやろうとしている差別化を消します (これを戦略の専門用語では同質化戦略 (ミート戦略) と言います) 。強者は広域に展開しリソースを存分にかけて、2位以下と全方位で戦います。

これは詳細は触れませんが、シェアが1位である強者が自ら率先して差別化を図ると最強です。例えばの例はコンビニのセブンイレブンです。

一方の弱者の戦略は、強者であるトヨタとは逆のことをします。トヨタがやっていない・できないような差別化戦略をとり、差別化からの独自化です。

トヨタには無い技術やコンセプト・デザインを実現し、かつ簡単には真似できないことを追求します。リソースが強者のように十分にないからこそ、一点集中で市場全体ではなく小さなカテゴリーで1位を目指します。

弱者の顧客規模は強者に比べて多くはないので、1人ひとりに丁寧な対応するなど (例: 顧客に手書きのハガキを書いて送る) 、弱者は顧客への接近戦を展開します。


注意点


最後に、弱者にとっての注意点です。

気をつけたいのは、本来は弱者なのに自分たちのことを強者だと勘違いし、強者の戦略 (全方位の総力戦) をとってしまうことです。

弱者が強者と同じやり方をしたり、強者と真正面からぶつかっても勝ち目はありません。

弱者が目指す 「競争目標」 は1位のプレイヤー (強者) だとしても、戦う相手である 「攻撃目標 (戦闘相手) 」 は他の勝ちやすい弱者です。

弱者は強者とは違う戦い方 (一点集中の局地戦) をし、直接対決をするなら潰しやすい弱者を相手にします。2位以下のホンダや日産にとっては、日本では強者であるトヨタとは決して真っ向勝負を挑まないことが弱者の取る道です。


まとめ


今回は、「強者の戦略」 と 「弱者の戦略」 についてでした。

最後にまとめです。

戦略の本質
  • 戦略とは目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと
  • 目的達成のためのリソース配分の方針。リソースとは企業であれば人・モノ・金

 「強者の戦略」 と 「弱者の戦略」 
  • 強者にとってのやることと、弱者にとってのやることは真逆になる
  • 強者がやることは弱者のやらないことで、強者がやらない・できないことが弱者がやること
  • 強者の戦略は総力戦・広域戦・全方位、弱者の戦略は局地戦・接近戦・一点集中

弱者にとっての注意点
  • 本来は弱者なのに自分たちのことを強者だと勘違いし、強者の戦略 (全方位の総力戦) をとってしまうこと
  • 弱者が強者と同じやり方をしたり、強者と真正面からぶつかっても勝ち目はない
  • 弱者は強者とは違う戦い方 (一点集中の局地戦) をし、直接対決をするなら潰しやすい弱者を相手にする


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。