投稿日 2021/10/14

レアジョブの日本人講師レッスン開始に学ぶ、一度完成されたビジネスモデルの自己否定と再構築


今回は、マーケティングとビジネスモデルの話です。

✓ この記事でわかること
  • レアジョブが日本人講師による英会話レッスンを開始
  • マーケティングとビジネスモデルでの意味合い
  • ビジネスモデルに学べること

この記事を読んでいただきたいのは、サービス設計や企画、マーケティングの仕事をされている方です。

英会話レッスンのサービス事例を取り上げ、マーケティングやビジネスモデルに学べることを解説しています。

異業種の事例は本質を見出せれば、自分たちの業界のヒントが得られます。ぜひ最後まで読んでいただき、何か少しでも参考になればうれしいです。

日本人講師の英会話レッスン


オンライン英会話サービスを展開するレアジョブが、日本人講師によるレッスン提供を開始するとのことです (公式サイトはこちら) 。

これまでのレアジョブの英会話レッスンでは先生はフィリピン人で、リモート通話で現地とつないでのレッスンでした。これに加えて、新たに日本人講師からのレッスンが受けられるようになります。

2021年8月のニュースリリースによれば、日本人講師レッスン開始の狙いは英会話初心者の声に応えるためです。具体的には、相手が外国人との英会話には不安を感じる、レッスン中のわからないところは日本語で説明して欲しいというニーズです。


日本人講師のレッスンは、フィリピン人の先生に比べて割高の設定になっています。

日本人講師のレッスンを受けるにはチケットが3枚必要で、通常は1枚なので単純に3倍のレッスン料金です。価格感はチケットは13枚セットで6600円なので (2021年10月現在) 、1枚あたり508円から計算するとチケット3枚分だと1500円超です。


マーケティングとビジネスモデルの意味合い


では、ここまで見てきた日本人講師の英会話レッスン開始について、マーケティングとビジネスモデルの観点から掘り下げてみましょう。

2つあります。

✓ マーケティングとビジネスモデルの意味合い
  • 初心者の不を解決
  • ビジネスモデルの自己否定と再構築

では順番にご説明していきますね。

初心者の不を解決


どんな人でも、最初にその商品やサービスを使い始める時は初心者です。

初心者がつまずきやすいところはしっかりとケアをし、途中で意図せぬ脱落を防ぐことが顧客維持の観点からは大事です。

オンライン英会話で言えば、英会話の初心者にとっては英語を話すこと自体が不慣れです。相手が外国にいるフィリピン人講師と英語だけで1対1で25分のレッスンを受けることは、緊張や不安が伴います。また、レッスン中にわからないことが出てきたり、教えて欲しいことを聞きたくても、英語ではうまく相手に伝えられません。

このようなレッスン体験が積み重なると、英会話の上達が実感しにくいです。レッスンは楽しいというよりも、緊張やフラストレーションの時間になってしまいます。

こうした初心者の 「不」 を解決するのが、日本人講師レッスン開始のマーケティングでの意味合いです。

ビジネスモデルの自己否定と再構築


2つ目の日本人講師レッスン開始の意味合いは、ビジネスモデルの観点からです。

レアジョブはフィリピン人によるオンライン英会話を始めた先駆け的な存在です。

当時は英会話レッスンは駅前ビルなどのスクールに通い、講師との対面でのレッスンが一般的でした。講師はアメリカ人やイギリス人、他にはカナダ人やオーストラリア人などの英語圏のネイティブでした。オンラインレッスンもありましたが、あくまでサブで対面レッスンの補助的な位置づけでした。

ここにレアジョブはビジネス機会を見出し、スクール店舗を持たず講師をフィリピン人にして格安の英会話レッスンを実現しました。英会話レッスンにおいて新しいビジネスモデルをつくったのです。

今回のレアジョブの日本人講師レッスンの開始は、自分たちのビジネスモデルを自らの手で書き換えるものです。フィリピン人講師を使うからこその低価格レッスンから割高になっても、レアジョブは初心者の不を解決し顧客満足度を高めることを狙っています。


ビジネスモデルに学べること


では今のビジネスモデルについて、最後にもう少し掘り下げてみましょう。

あらためて学べることを一言で表現すれば、「ビジネスモデルは手段であり、完成されたビジネスモデルに固執せずに時には自ら壊そう」 です。

 「壊す」 という過激な表現をあえて使いましたが、手段であるビジネスモデルを維持することにこだわると本末転倒になります。レアジョブの例に当てはめると、もしもレアジョブがフィリピン人講師を使うことに執着すると、外国人との英会話に苦手意識を持つ初心者の不には応えることはできません。

いくら完成度が高いビジネスモデルであっても、新たな顧客の不やビジネス機会を発見したなら、一度は完成されたビジネスモデルを見直してでも価値提供を実現していくことが大事なのです。


まとめ


今回は、レアジョブの日本人講師レッスン開始のニュースリリースから、マーケティングとビジネスモデルに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

レアジョブが日本人講師による英会話レッスンを開始
  • 日本人講師レッスン開始の狙いは英会話初心者の声に応えるため
  • 具体的には、相手が外国人との英会話には不安を感じる、レッスン中のわからないところは日本語で説明して欲しいというニーズ
  • 日本人講師のレッスンはフィリピン人の先生に比べて割高。通常はチケット1枚が3枚必要

ビジネスモデルの自己否定と再構築
  • レアジョブはフィリピン人によるオンライン英会話を始めた先駆け的な存在
  • 日本人講師レッスンの開始は、自分たちのビジネスモデルを自らの手で書き換えるもの
  • たとえ割高になっても、初心者の不を解決し顧客満足度を高めることを狙っている

ビジネスモデルに学べること
  • ビジネスモデルは手段であり、完成されたビジネスモデルに固執せずに時には自ら壊すことが大事
  • いくら完成度が高いビジネスモデルであっても、新たな顧客の不やビジネス機会を発見したなら、一度は完成されたビジネスモデルを見直してでも価値提供を実現していこう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。