投稿日 2023/05/25

アテニア流 顧客インサイト活用術。これがインサイトからの価値提案のマーケティング

#マーケティング #顧客インサイト #価値提案


お客さんの隠れた本音は、どのように捉えればいいのでしょうか?

今回は化粧品ブランドのアテニアの事例から、お客さんのインサイトを探り出し、新商品を生み出した成功事例を学びます。

どうすればお客さんの 「心のホットボタン」 を押し、共感を得られるのでしょうか?一緒にお客さんに共感されるマーケティングの方法を探っていきましょう。

アテニアの顧客インサイト活用


出典: アテニア

ご紹介したいのは化粧品のドレススノーを展開するアテニアの事例です。

20万人のファンコミュニティを形成し、得た本音を活かした商品がヒットしているとのことです。

化粧品会社のアテニアが2021年にリリースしたスキンケア製品 「ドレススノー」 。美白とエイジングの両方の効果を備えた画期的な製品で、同社のスキンケア製品売上向上に大きく貢献した。誕生したきっかけは、同社が運営する 「アテニア ファンコミュニティ」 から得たインサイトだったという。

得られた顧客インサイト


具体的な事例を見てみましょう。コミュニティからどのように顧客インサイトを得たのでしょうか?

最も大きな成果は、ここ数年の業績を大きく引き上げた 「ドレススノー」 が誕生したことです。コミュニティのコメントをよく見ると、お客様の本音やインサイトをつかめます。そのため、我々社員もコミュニティの話題を見る癖がついているのですが、この商品もまさにインサイトから生まれました。

アテニアのターゲットである40代の方は、肌でいえばシワ対策を行うエイジングケアか、シミ対策の美白ケアかで迷う方が多いんです。多くの化粧品ブランドはエイジングと美白で別々の商品ラインを持っているのですが、コミュニティ内では 「本当はシワが気になりつつも美白ラインを使っている」 「美白対策に後ろ髪を引っ張られている」 といった、どちらを使ったらいいか悩んでいる声がありました。これにより、選ぶことに関するストレスがインサイトとして浮かび上がったんです。

コミュニティメンバーからは 「シワ対策を行うエイジングケアか、シミ対策の美白ケアかで迷う」 という声が見られました。

見出したインサイトは 「選ぶことに実はストレスを感じている」 というものです。

✓ 顧客心理
  • 肌ケアと美白のどちらか2つで迷う
  • 美白に後ろ髪を引っ張られながら選ばざるをえない
  • 選ぶことにストレスが生じている

化粧品を買うときに心の中ではもやもや感があり、確信を持てない状態で買っている様子がうかがえます。自分にピッタリの商品というよりも、仕方なく選びストレスになっていたわけです。

新しい価値提案


見出した顧客インサイトをもとに新しい価値提案につなげました。

そこで当初は美白ラインとして出そうとしていたドレススノーを、美白とシワ対策の両方を同時にかなえるスキンケアとして開発し、「私は、選ばない」 というメッセージを出しました。

商品の機能ではなく、「背景にある『選ぶこと』に関するストレスを解消するためにドレススノーを開発した」 という想いが多くの共感を呼びました。これにより、2021年の基礎スキンケアの売上がコロナ禍にも関わらず前年比 126% となり、大きな成長となりました。

学べること


では学べることを掘り下げていきましょう。

アテニアの事例からは 「お客さんに共感されるマーケティング」 への学びが得られます。

結論から先に言うと次のプロセスで進めると良いです。

✓ 顧客インサイトからの価値提案
  • 顧客インサイトを見出す
  • インサイトに応える価値提案をつくる
  • 提供価値に共感できるメッセージに落とし込む

顧客インサイトの見出し


顧客インサイトとは 「人を動かす隠れた気持ち」 です。

心のホットボタンとか心のツボのようなものです。普段は本人は意識していないものの心のボタンを押されると態度が変わり、行動を起こす奥にある心理です。

お客さんが奥に持っている本音まで掘り下げるわけですが、本音は必ずしも言語化されていたり、お客さんから直接説明されるわけではありません。顧客インサイトはお客さんに教えてもらうというより、マーケターが自ら発見するものです。

インサイトからの価値提案


顧客インサイトを見出すのは簡単ではありません。試行錯誤や紆余曲折を経てようやく発掘できます。

ただしインサイトを見出したとしてもまだ道半ばです。お客さんに響くように言い換える必要があります。顧客インサイトからの価値提案が次のハードルです。

今回のアテニアの事例では価値提案は 「化粧品を選ぶのに悩まなくていい」 というものでした。ポイントは肌ケアと美白の両方の効果を持つ商品特徴を直接的に訴求したのではなく、「悩まなくていい」 と顧客インサイトに寄り添って言い換えたことです。

顧客インサイト、価値提案 、メッセージという順番が大事です。お客さんの奥にある本音 (顧客インサイト) を起点にしたお客さんに共感されるマーケティングです。


まとめ


今回はアテニアの顧客インサイトを活用した商品開発やマーケティングの事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ お客さんに共感されるマーケティング
  • 顧客インサイトとは 「人を動かす隠れた気持ち」 。心のボタンを押されると態度が変わり行動を起こす奥にある心理
  • お客さんに共感してもらうために、① 顧客インサイトを見出す、② インサイトに応える価値提案をつくる、③ 提供価値に共感できるメッセージに落とし込む
  • 商品特徴を直接的に訴求するよりも、顧客インサイトを起点にお客さんにとっての価値を伝えよう


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。