普段の仕事で新しいアイデアが思い浮かばないのは、もしかしたら見えないバイアスが原因かもしれません。「こうあるべき」 という固定観念にとらわれていないでしょうか?
新たな視点から問題を捉え、解決策をつくるには、新しいアイデアをつくり出すことが必要になります。
今回のテーマは、こうあるべきから脱却しイノベーションを起こす方法です。日高光啓 (SKY-HI) さんのビジネスと音楽論を入り口に、「バイアスブレイク」 というイノベーションを起こす方法をご紹介します。
一緒に新たな世界への扉を開け、固定観念を解き放つ冒険に出かけませんか?
✓ わかること
- 日高光啓 (SKY-HI) さんのビジネスと音楽論
- BE:FIRST を成功体験にしない
- 日本の芸能界や音楽業界の課題
- こうあるべきから脱却しイノベーションを起こす方法
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
BE:FIRST を成功体験にしない
日高光啓 (ひだかみつひろ / SKY-HI) さんへのインタビュー記事を読みました。日高さんは人気グループ 「AAA (トリプルエー) 」 のメンバーで、音楽事務所 BMSG の最高経営責任者 (CEO) を務める方です。
―― BMSG の経営で気をつけていることは何ですか。
「アーティストが長く幅広く、前向きに活動し、愛され続けるため、BE:FIRST を『成功体験』にしないと決めています。BMSG は大資本が入っていませんし、大企業の子会社でもありません。そんな個人経営のスタートアップに所属するアーティストがデビュー2年目で『NHK 紅白歌合戦』に出場できました。これは快挙だとは思いますが、この事例を成功体験にしてはいけません。BE:FIRST を追随して、他のアーティストでも同じことをやろうとしてはいけない」
「また、BMSG をバッファ (余裕, ゆとり) が常にある会社にしなければとも思います。所属アーティストが本筋以外の活動にも打ち込める環境を整えて、ファンに追っかけていくと面白いと思ってもらえる状態でありたいと思います」
―― 日本の芸能界や音楽業界の課題は何ですか。
「様式美が決まりすぎています。『アイドルとはこうあるべき』『この事務所はこうあるべき』が固定され、様式美から外れた才能が生まれなくなっています。また、芸能界のガラパゴス化も感じます。例えば、安易な『世界デビュー』のワード。今どきは楽曲を配信した時点ですでに世界デビューです。アーティストなのに『作詞作曲に挑戦』や『弾き語りに挑戦』を宣伝文句にする風潮も違和感があります」
「特定の会社やアーティストを批判する意図はありません。日本の音楽業界は CD が最も売れて音楽市場がピークだった1990年代後半から変わっていないのです。やはり、成功体験は怖い。同じビジネスモデルをなぞるばかりになってしまいます。内需だけで成り立たなくなり、グローバルに発展していった KPOP とは対照的です。BMSG のようなスタートアップはこうした課題の解決が役割だと考えています」
BE:FIRST という成功体験にあえて追随せず、アイドルや音楽事務所とはこうあるべきと固定化してはいけないという話が興味深いです。
学べること
では日高さんへのインタビューから学べることを掘り下げていきましょう。
こうあるべきからの脱却に関連してご紹介したい本があります。SHIFT - イノベーションの作法 (濱口秀司 (はまぐちひでし) ) です。
イノベーションを起こす 「バイアスブレイク」
イノベーションを起こすための 「作法」 を一言で表現をすれば、とらわれているバイアス (固定的なものの見方, 偏った発想) に気づき、意図的に壊すことで新しい切り口で強制的にアイデアを考えるというものです。
※ ちなみに、著者の濱口さんは 「バイアス破壊」 と書いていますが、私は 「バイアスブレイク」 と言うほうがかっこいい気がしています
バイアスブレイクからイノベーションを起こすプロセスは次のようになります。
✓ イノベーションを起こす発想術
- 可視化しバイアス (偏った思考) に気づく
- 固定観念とは逆を考えバイアスブレイクをする
- バイアスがない状態でアイデアを考え強制的に発想する
バイアスをなくした新桃太郎
本で説明されていた桃太郎の例がイメージしやすかったのでご紹介しますね。
出典: note
桃太郎へのバイアス (前提としてある物語の背後の設定) は2つで、
✓ 桃太郎のバイアス (背後にあるこうあるべき)
- 桃太郎が犬・猿・キジを連れて仲間 (チーム) で鬼を退治する
- 弱きを助け悪をやっつけるという 「勧善懲悪 (かんぜんちょうあく) 」 を良しとしている
上の図のようにマッピングし、あえて2つから逆に振って新桃太郎の話を作ってみるというのがバイアスブレイクです。
そして3つ目のステップであるバイアスをなくした状態にし、強制的に具体的なアイデアを考えていきます。
✓ バイアスブレイクからの新桃太郎のアイデア
- 桃太郎が単独で冒険する
- 善悪がはっきりしないグレーなキャラクター設定。例えば仲間にした猿は鬼のスパイのようなかつての敵が仲間になったり、昨日の仲間が敵になる物語。主人公の桃太郎は最後まで 「正義とは何か」 「悪とは何か」 に苦悩する
もちろん、このストーリー設定 (アイデア) をターゲットとなる読み手が気に入るかによりますが、最初にバイアスを可視化しブレイクすることで、今までにはないイノベーティブな昔話の可能性が広がります。
こうあるべきからの脱却
バイアスブレイクの方法は汎用的に使えます。前半で見た 「こうあるべきからの脱却」 への参考になります。
こうあるべきから抜け出すとは過去の成功体験に縛られないことにもつながります。
現状を可視化することでとらわれていた 「◯◯ とはこうあるべき」 に気づくことができます。今の捉え方とは逆に振り切り、意図的にバイアスをブレイクします。新しい切り口や着眼点から強制的にアイデアを多く出していきます。
流れを整理すると、
✓ こうあるべきから脱却しイノベーションへ
- 可視化しバイアス (こうあるべきという偏った思考) に気づく
- 固定観念と逆に振ってバイアスブレイクをする
- バイアスがない状態でアイデアを強制的に発想する
バイアスブレイクによって 「業界や社内のこうあるべき」 から抜け出すことでイノベーションにつながるのです。
まとめ
今回は日高光啓 (SKY-HI) さんのビジネスと音楽論から学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ こうあるべきから脱却しイノベーションを起こす方法
- 過去の成功体験や 「◯◯ とはこうあるべき」 にとらわれると新しいものが生まれない
- こうあるべきという偏った思考状態を可視化し、バイアスに気づくことが大事
- 固定観念から逆に振り切り (バイアスブレイク) 、バイアスがない状態でアイデアを強制的に発想してみよう
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