後発参入で市場に挑戦するとき、どうやって先行企業と差異化を図り、どのようにお客さんに新たな価値を提供すればいいのでしょうか?
今回は、後発でありながら好調な売上を誇る森永乳業のドリンク 「睡眠改善」 から、チャレンジャーの戦い方を学んでいきましょう。後発でも勝てるマーケティング術を一緒に見つけ出していきませんか?
✓ わかること
- 森永乳業のドリンク 「睡眠改善」
- 一番手ではないからこそ見出せる勝ち筋
- 後発参入チャレンジャーの戦い方
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
森永乳業のドリンク 「睡眠改善」
出典: 森永乳業
売上が好調
森永乳業のドリンク 「睡眠改善」 の売上が好調とのことです。
森永乳業が2022年9月に発売した機能性表示食品の紙パック飲料 「睡眠改善」 が好調だ。
睡眠に課題を感じる消費者に、起床時の疲労感を軽減する機能をうたう。糖類不使用で、歯磨き後の就寝前に飲めるようにした。新型コロナウイルス禍による生活リズムの乱れで、睡眠の質を高めたい消費者が増えたことをきっかけに開発。
発売2カ月で売上本数300万本を達成し、計画比2倍で推移する。
開発の背景
森永乳業の 「睡眠改善」 の開発の背景を見てみましょう。
コロナ禍で睡眠の悩みを抱える人が増えたと見てビジネスチャンスだと捉えました。
「睡眠の悩みを抱える人はコロナ禍で増えた」 。商品開発に携わったマーケティング統括部中長期ウェルネスマーケティンググループの滝本菜都美氏は語る。在宅勤務が定着し、運動不足や生活リズムの乱れから睡眠不足になる人が目立ってきているという。
実は同社が睡眠対策の飲料を発売するのは3回目。過去に販売が振るわず2度終売した苦い経験がある。ただ、21年9月に8900人の男女を対象に睡眠について調査をすると、「悩んでいる」 との回答が 48% に。「今こそ市場性があると感じた」 (滝本氏)
先行する他社商品との差異化
睡眠の質向上が期待できる飲料商品は他社がすでに出していました。ヤクルト本社の 「ヤクルト1000 / Y1000」 や日清ヨークの 「ピルクル ミラクルケア」 です。
すでに市場ができていて、森永乳業にとっては後発参入でいかに差異化をするかが課題でした。どこに勝ち筋を見出したのでしょうか?
三度目の正直をめざし、ライバル商品を徹底的に分析。ヤクルト本社の 「ヤクルト1000 / Y1000」 や日清ヨークの 「ピルクル ミラクルケア」 などを連日飲むと、甘さが口に残ることに気づいた。
滝本氏は 「継続して飲んでもらうには、後味の残らないスッキリした味が大事」 と実感した。約半年かけて100通り以上の味を試し、たどり着いたのがライチ味だ。
他社商品では飲むと甘さが口に残ることに気づきました。毎日継続して飲んでもらうためには後味が残らないことが大事ではと見て、すっきりした後味になるライチ味にしました。
味以外でも違いを打ち出しています。
商品名はストレートに表現。過去に発売したヨーグルトの知見で、機能を前面に出したネーミングが消費者の購入につながるとわかっていたためだ。パッケージの文言は年齢に偏りなく理解できるよう、新聞の見出し風にした。
ストックのしやすさも特長だ。機能性に関わるアミノ酸の一種 「L - テアニン」 は乳酸菌などの生菌 (せいきん) と異なり、冷蔵する必要がない。培った紙パック飲料の無菌充填 (じゅうてん) 技術を生かし、常温で150日間保存できるようにした。量販店のバイヤーからも 「陳列しやすい」 と反応は上々だ。希望小売価格は125ミリリットル入りの紙パック容器で税別120円。
新聞の見出し風にしたパッケージ (出典: 人生 = 旅)
学べること
では 「睡眠改善」 から学べることを掘り下げていきましょう。
一番手ではないからこそ見い出せる勝ち筋
森永乳業の 「睡眠改善」 の差異化を整理すると3つです。
✓ 味
- 他社商品は毎日飲むと甘さが口に残ることを発見
- 継続して飲んでもらうために後味の残らないスッキリしたライチ味にした
✓ 商品名やパッケージ
- 商品名は 「睡眠改善」 と期待効果をストレートに表現
- 機能を前面に出す商品名が購入意向につながるというヨーグルトでの知見を活かした
- パッケージの文言は年齢に偏りなく理解できるような新聞の見出し風にした
✓ ストックのしやすさ
- 小売へのメリットを訴求
- 冷蔵する必要のない L - テアニンを使い、紙パック飲料の無菌充填技術を生かし常温で150日間保存できるようにした
- ストックのしやすさが量販店のバイヤーからも 「陳列しやすい」 と評価
後発参入チャレンジャーの戦い方
森永乳業の睡眠改善から学べるのは 「後発参入チャレンジャーの戦い方」 です。
後発で市場に参入するプレイヤーが戦っていくためには、先行している他社商品ができていないところで差異化を狙うことが大事です。一番手ではないからこそのアドバンテージを活かすわけです。
ポイントは単に他社ができていない部分ではなく、お客さんにとって実は不便だったり不満の原因になっていることは何かです。ここに後発参入チャレンジャーの勝ち筋があります。
睡眠改善は二種類のお客さんに価値を生み出しました。
- エンドユーザーである生活者
- 消費者に商品を売ってくれる小売
お客さんの解像度を上げ、一番手が満たせていない課題を見つけ、お客さんに新しい価値を提供することがチャレンジャーの生きる道です。
まとめ
今回は森永乳業の睡眠改善を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 後発参入チャレンジャーの戦い方
- 先行している他社商品ができていないところで差異化を狙い、一番手ではないからこそのアドバンテージを活かす
- お客さんにとって実は不便だったり不満につながっていることに後発参入チャレンジャーの勝ち筋がある
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