投稿日 2023/05/20

PMF から LTV への旅。ベースフード KPI 変遷の戦略の狙いとは?

#マーケティング #戦略 #KPI


ビジネスの成長を左右する重要な要素がマーケティングですが、自社のマーケティング戦略に十分な自信が持てているでしょうか?

何から手をつけてよいのか、どの指標に注目すればよいのか、悩んでいませんか?

この記事では、ベースフードの成功例を通じて KPI の設定、具体的には 「PMF (Product Market Fit) 」 と 「LTV (Life Time Value) 」 のバランスの重要性について掘り下げていきます。これがビジネスを次のレベルへと導くカギとなるかもしれません。

それでは、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

ベースフードの KPI 設定


こちらの記事を読みました。

ゼロイチで市場をつくるためにマーケターができること ベースフード齋藤氏 × ノバセル田部氏対談|MarkeZine

ノバセルの田部正樹さんが毎回、マーケティングの専門家を招いての連載記事です。栄養素がバランス良く入った食品 BASE FOOD を提供するベースフード CMO の齋藤竜太さんとの対談でした。

ベースフードの KPI 設定の話が興味深かったです。

田部: KPI は事業フェーズに応じてどのように変遷していったのですか。

齋藤: 創業から 「BASE PASTA」 や 「BASE BREAD」 を出すくらいまでは PMF を最重要視していました。その後は LTV を KPI に設定しています。ユーザー数の拡大だけでなく、LTV を伸ばし続けることが今後の成長に必要だと考えているからです。

注目したいのは KPI 設定の順番です。

最初は PMF (Product Market Fit (後で詳しくご説明します) ) を重視し、その後で LTV 向上に取り組むという順です。なぜ PMF 、あとから LTV なのでしょうか。


学べること


PMF とは


PMF は Product Market Fit の略です。日本語に直訳をすると 「プロダクトが市場にフィットしている状態」 です。

マーケティングの観点での PMF の意味合いは商品やサービスが市場に受け入れられている状況、つまりお客さんから必要とされ、これなしではいられずプロダクトが愛されている状態を指します。

PMF の前提は正しい市場にいることです。ここまでの話を図に表すと以下のようになります。


PMF になる前 vs PMF になった後


PMF を達成した前後で状況は大きく異なります。


PMF 前はさながら重い岩を押しながら山を登っている状態です。

PMF がない商品は広告を出稿しても申込みはなく、営業パーソンが必死に売り込みをかけても発注をもらうこともできません。自分たちのプロダクトは PMF になっているかと疑問に思う時点で、そもそも PMF ではないわけです。

一方の PMF 後は山からの下山で重い岩も勝手に山の斜面を転がっていくイメージです。

PMF となっていれば商品はお客さんに引っ張られるようにどんどん売れていき、引く手あまたな状態になります。お客さんは商品を使い続けてくれ、口コミをして他の顧客を連れてきてくれたりもします。

PMF の前後ではこれくらい状況が違います。

LTV を後にする意図


話をベースフードの KPI 設定に戻すと、重視した順番は最初は PMF 、PMF が達成された後に LTV でした。

LTV 向上を PMF の後にした意図や理由は2つだと考えます。

✓ LTV を後にする意図
  • LTV 算出に必要な期間
  • PMF を達成していない状況での LTV 施策は非効率

LTV 算出に必要な期間


1つ目の LTV 算出について、LTV は例えば 「1万 (1ヶ月) × 12ヶ月」 のように 「LTV = 顧客単価 × 顧客期間」 で計算します (利益ベースの LTV ならさらに利益率をかけます) 。

LTV 算出にはお客さんでいてもらえた顧客期間のデータが必要です。LTV の成果が結果として出るまでにはそれだけ待つことになります。その間はグロース施策の LTV 向上への寄与に確証を持てないという状態になります。

PMF を達成していない状況での LTV 施策は非効率


LTV を後にする2つ目の要因は PMF を達成していない状況での LTV 施策は非効率だからです。

LTV の前提として PMF があります。いくら LTV という客単価を上げたり顧客期間を長くする施策をしても、そもそもとして商品がターゲット顧客から必要とされていない PMF になっていな状態ではお客さんを獲得してもすぐに離反してしまいます。バケツにがんばって水を入れても穴が空いていて水が流れ出てしまう状態です。

LTV の前に PMF が達成され、水を入れるバケツの穴がふさがってから水を入れることに注力することが大事です。

ストーリーのある全体設計を


ベースフードの KPT 設定の事例からの学びを一般化すると、戦略と実行から結果までの時間展開を描く重要性です。

時間軸を入れたストーリーをつくります。

戦略の中の各項目、実行施策でのアクションアイテムを並列にただ並べているだけでは、目的達成や成功への道筋、時間展開がわかりません。ともすると絵に描いた餅になってしまいます。

ベースフードの事例で最初は PMF 、その後に LTV がきたように、何を・誰が・どういう順番で・どんな時間軸で展開するかの全体像を物語のように描くといいです。

マーケティングでやることを時間軸が入った構造にすることで、ストーリーのある全体設計になります。


まとめ


今回はベースフードの KPI 設定の事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 戦略と実行から結果までのストーリー展開
  • 戦略や実行施策の各項目を並列表記しているだけでは目的達成や成功への道筋、時間展開がわからない
  • 何を・誰が・どういう順番で・どんな時間軸で展開するかの全体像を描くといい
  • マーケティングでやることに時間軸を入れ構造化し、ストーリーのある全体設計をつくろう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。