投稿日 2023/05/29

ゲームと映画が創るブランド体験。スーパーマリオから学ぶブランディングの極意

#マーケティング #ブランド #ユーザー体験


映画 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」 を観てきました。

今回は、マリオの映画からマーケティングに着想を広げて、ブランディングというテーマでスーパーマリオブラザーズを解説します

では準備はいいですか?それでは、マリオとマーケティングの世界への冒険に、一緒に旅に出ましょう!

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー



ストーリーの概要


映画の主人公である双子の兄弟マリオとルイージはブルックリンの配管工です。ある日、彼らは地下の土管に吸い込まれ、現実とは違うキノコ王国という不思議な世界に迷い込んでしまいます。

この世界では、キノコを食べると身体が大きくなりパワーアップし、はてなボックスからはフラワーなどアイテムが手に入る不思議な場所でした。しかし、平和なキノコ王国に大魔王クッパという脅威が迫ります。

土管からキノコ王国に飛ばされる途中でマリオとルイージは離れ離れになってしまい、ルイージはクッパたちに捕まってしまいます。マリオは囚われたルイージを救うため、そしてキノコ王国をクッパの侵略から守るために、ピーチ姫とキノピオと共に冒険の旅に出ます。

マリオの世界観の忠実な反映


映画は、イルミネーションと任天堂による共同制作です。

プロデューサーも共同での体制です。イルミネーションの創業者で代表のクリス・メレダンドリ氏と、マリオの生みの親である任天堂フェローの宮本茂氏です。

映画の上映時間はおよそ1時間半です。最初から最後まで 「マリオっぽくない設定」 というのが全くと言っていいくらいなかったです。制作の中心に任天堂が入った影響は大きいんですよね。シナリオやシーンだけではなく、細かなキャラクターやキノコ王国の描写にいたるまでマリオの世界観が忠実に反映されています。

映画の中には、ファンがよく知っているマリオの世界そのものが存在していて、ゲームと同じように描かれています。大ヒットとなっているのも納得の作品でした。


マーケティングへの学び


ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーはマーケティングの視点でも学びがある映画でした。

映画マリオとブランド構築


マリオのこの映画には、マーケティングのブランドに示唆があります。

そもそもマーケティングにおけるブランドとは何かですが、ブランドとは 「お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス」 です。お客さんが 「好き」 「共感する」 「満足感を得る」 「憧れる」 「誇りに思う」 「応援したい」 と感じるほど、ブランドは強くなります。

ブランドでもう1つ大事なことは、ブランドとはあくまで 「お客さんの頭の中にある価値のイメージ」 だということです。

この意味において企業は自社のブランドを直接的に管理することはできません。様々なアプローチを通じて間接的に影響を及ぼすというアプローチを取ります。こうした 「働きかけ」 がブランディングと呼ばれる行為です。

ブランドが形成されるプロセスについても押さえておきましょう。

ブランドができるのは 「良いユーザー体験」 から始まります。その体験がお客さんの心に好ましい感情を引き起こし、結果として価値イメージが形成されます。そして価値イメージが重なり合い、ブランドになるのです。

シンプルに表現すると、ブランドができる流れは 「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成 → ブランド化」 です。

ブランド体験の共有 – ゲームから映画へ


映画 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」 は、スーパーマリオのアクションゲームやマリオカートと同じ世界観を再現して映画化しています。

マリオのいろいろなゲームで遊んだことがあれば、映画のキャラクターや世界観に触れることでその記憶が蘇り、映画を通して追体験できます。ゲームには楽しかったという感情や思い出があり、映画がこうした記憶と結びつくわけです。

これはまさにブランド体験の共有であり、マリオというブランドがもたらす独自の世界観での体験価値を提供してるのです。

また、今回の映画にはゲームをプレイしたことがない人に対しても、その魅力的な世界観を十分に伝えています。これが可能となるのは、映画というメディアが視覚と聴覚、物語性を通じての体験価値が提供されるからです。映画を見ることで新たにマリオの世界に触れ、その魅力を知ることができます。

ブランドの力とは、どれだけの豊かな体験を提供できるかによって決まります。映画 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」 は見事に実現しています。ブランディングの成功例と見ることができます。

ブランドとは積み重ねられた体験の価値


ブランドは一朝一夕でできるものではありません。時間をかけて1つ1つのユーザー体験が積み重ねられ、好ましい感情が伴い、価値イメージが頭や心の中に形成され、結果としてブランドが構築されるものです。

ブランドとは、一貫性のある体験を提供し続けることで、お客さんと共通の世界観をつくり上げるプロセスです。まるで1枚1枚のモザイクタイルを丁寧に敷き詰めていく作業に似ています。1枚のタイルだけではその全体像を理解することは難しいですが、それぞれのタイルが1つの場所に適切に配置されることで、全体像が見えてきます。

スーパーマリオブラザーズのゲームや映画が提供する体験も同じように、1つ1つがブランドの世界観をつくるピースです。独立して存在するのでなく、相互に関連し合いながら全体として一貫した価値イメージを生み出すのです。

この一貫性は、お客さんがブランドとの接触を通じて得る 「らしさ」 をつくり出します。その結果、お客さんは商品やサービス、あるいは企業そのものをブランドと捉えるようになるのです。


まとめ


今回は映画 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」 を観て、マーケティングの視点で思ったことでした。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ ブランドの本質
  • ブランドとは、お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス
  • 良いユーザー体験から始まり、感情移入と価値イメージ形成を経てブランドになる。ブランディングとはブランドを形成するための働きかけ
  • ブランド構築は時間をかけて1つ1つのユーザー体験が積み重なってできる。一貫性のある良い体験によってお客さんと共通の世界観を形成し、それがお客さんの中での 「ブランドらしさ」 を感じる源泉になる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。