投稿日 2023/05/01

共感を生むマーケティング術。「走りたくなる春がきた。」 CM からの学び

#マーケティング #広告 #価値提案

出典: AdverTimes

春の訪れと共に、新しい生活が始まる季節。ABC マートとアンダーアーマーが、心躍る CM 「走りたくなる春がきた。」 を公開しました。

この記事では、CM から学べる共感を生むマーケティングの秘訣を解説します

どのようにお客さんを理解し、相手の文脈に寄り添った意味づけから価値提案が行われているのか、興味ありませんか?ぜひ読み進めて一緒に見ていきましょう。

✓ わかること
  • ABC マート × アンダーアーマーの青春 CM
  • CM のストーリーの狙いとは?
  • 共感を生むコミュニケーションの方法

ABC マート × アンダーアーマーの青春 CM


靴小売業の ABC マートが、スポーツブランド 「アンダーアーマー」 との新 WebCM 「走りたくなる春がきた。」 を公開しました。


ABC マートで販売されているアンダーアーマーの靴が、学生のスポーツや青春を充実させることを伝える広告です。

CM では靴を主役にしながらも、リアルな高校生の共感が得られるストーリーを描いています。コロナ禍が落ち着いた春の開放感を表現し、学生たちの気分を高めることを狙いました。

クリエイターはこのオリエンを聞いて何を意識したのか。

本クリエイティブを第1回から担当する電通の岩田泰河氏は、シリーズで一貫してきた 「青春」 というテーマをより大きく捉え、さらに進化させることに力を注いだという。

 「『青春ってこういうもの』という共感を得るのではなく、コロナも終息に向かいつつある『開放感』と、学生生活の新しい『はじまり』を感じさせ、最大化させることで、多くの学生たちの気分を高めて、元気づけられるのではないかと考えました。コピーも、あえて 「青春」 というフレーズを外し、『走りたくなる春がきた。』としています。キャンペーンが始まった2021年から、制約のあるなかでスポーツを楽しんできた部活生たち。ようやく全力でスポーツと向き合う環境が整い、感情を爆発させる時がきたと思いました」 (岩田氏) 。

学べること


では、ABC マートとアンダーアーマーの CM から学べることを掘り下げていきましょう。

次の3つのポイントで見ていきます。

  • お客さんの理解
  • 相手の文脈に寄り添った意味づけ
  • 共感を生むコミュニケーション

では順番に解説しますね。

お客さんの理解


マーケティングはターゲットとなる向き合う顧客のことを知るところからです。お客さんの日常や環境をリアルに捉え、お客さんの奥にある課題感、望みや不満までを理解していきます。

ABC マートとアンダーアーマーの CM では、コロナ禍が明ける開放感や春という新しい季節の到来において、新学年や新生活がどんな意味があるのかを掘り下げました。

お客さん目線になるとは、お客さんの側に立って、お客さんと同じ光景やものごとを見ることです。お客さんの理解があってこそ、成功するマーケティングの第一歩になります。

相手の文脈に寄り添った意味づけ


お客さんの理解から商品の位置づけを再解釈します。

今回の CM では、新しい季節と生活が始まるという相手の文脈に合わせて商品の存在意義を解釈し直し、お客さんにとってアンダーアーマーの靴の意味合いを見出しました。それを 「走りたくなる春がきた。」 という言葉に落とし込み、CM でお客さんに対して新しい価値として提案したわけです。

この順番がポイントです。商品を出す前に物語で共感を生み、自然とお客さんがその商品に興味をもち、自分にとって必要な存在になる提案です。商品が主役になるものの、入り方は最初に共感されるストーリーを持ってきてお客さんに唐突感を与えないようにします。

共感を生むコミュニケーション


共感を生むコミュニケーションの流れを整理すると、以下のようになります。

  • お客さんの理解
  • お客の文脈に沿った商品の再解釈と意味づけ
  • 価値提案と商品の訴求

共感をもたらすためには、いきなり自社商品をアピールしないことが大事です。

相手の状況を鑑みて、どのタイミングならお客さんが自分ごと化できるかを考えてみるといいでしょう。お客さんの理解をもとに、お客さんにとっての意味を捉え、魅力に思ってもらえるような価値を提案につなげることが共感を生むコミュニケーションのポイントです。


まとめ


今回は、ABC マートとアンダーアーマーの CM を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 共感を生むマーケティング
  • お客さんを理解: お客さんの置かれた状況や課題感、望み、不満を理解する。お客さん目線になるとは、お客さんの光景と同じものを見ようとすること
  • 再解釈と意味づけ: 相手の文脈に合わせて商品の存在意義を再解釈し、意味づけを行い、価値を見出す
  • 共感を生む提案: 顧客理解、価値提案、商品訴求の順番で進め、お客さんに魅力だと思ってもらえる価値を提案しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。