市場の競争環境が激しく変化する中、どのように勝ち筋を見出せばいいのでしょうか?
今回の記事では、マーケティングの世界で大切な市場の見極めについて、具体的な事例や理論を交えながら解説します。イノベーター理論やハイプサイクルも活用し、変化に対応し勝ち進む術を一緒に身につけていきませんか?
✓ わかること
- 薬局のデジタル決戦が激化。各社の取り組み
- 競争環境が変わるとはどういう状況か
- マーケット視点で競争環境の変化を捉える方法
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
薬局の競争環境が激化
2023年2月10日の日経 MJ の一面は、服薬指導や医薬品の販売をめぐって競争が激しくなっている状況を特集する記事でした。
各社の取り組み
出典: 日経
以下は記事のリード文です。
処方箋を薬局に持ち込み、薬剤師から薬を受け取る ―― 。
これまで当たり前だった薬局のあり方が変わろうとしている。規制緩和を追い風に異業種が参入するなか、ドラッグストア大手はオンラインによる服薬指導を多様化する。オンライン対応の成否は、薬局機能を収益力の要として集客してきたドラッグストアのビジネスモデルの成長性を左右する。
オンライン診療・服薬指導サービス 「ソクヤク」
特集記事ではオンライン診療やオンライン服薬指導の例で 「SOKUYAKU (ソクヤク) 」 が紹介されていました (ソクヤクの公式ページはこちら) 。
ソクヤクでは自宅にいながら医師の診察を受けられ、処方薬を受け取ることもできます。風邪でしんどい中の通院や診察待ち、処方薬を受け取る負担が減り、病院や薬局での二次感染のリスクもなくなります。
特集記事ではソクヤクの利用事例が載っていました。
「九死に一生を得た」 。埼玉県在住の男性会社員 (31) は当時をこう振り返る。
2022年8月、新型コロナウイルスの感染 「第7波」 がピークを迎えた頃、会社でクラスター (集団感染) が発生した。自身も感染し、自宅療養を余儀なくされた。まもなく、妻と2人の子どもも感染。40度近い高熱が続くなか、発熱外来に家族を連れていく体力はなかった。
そこで頼ったのが、オンライン診療やオンライン服薬指導を提供する 「SOKUYAKU (ソクヤク) 」 というアプリだった。サービスに登録し医療機関と薬局に予約すると当日中にオンライン診療、オンライン服薬指導と進んだ。その翌日には解熱鎮痛剤やせき止め用の処方薬が自宅に配送された。「病院での待ち時間や移動の手間がなかった。また使いたい」
「ここまで一気にオンライン化が進んだことは過去になかった」
大手ドラッグストアのツルハドラッグや杏林堂薬局、サンドラッグもソクヤクに参画したとのことです。
ドラッグストア大手の担当者のコメントで印象的だったのは 「ここまで一気にオンライン化が進んだことは過去になかった」 と語っていたことです。
学べること
マーケティングで大事なのは市場の見極めです。今の市場で何が起こっているのか、市場はどうなるのかの洞察を持つ重要性です。
薬局のオンライン化によるデジタル決戦の激化の事例からは、「競争環境が変わるとはどういうことか」 「競争環境の変化を捉える方法」 に学びが得られます。
競争環境が変わるトリガー
次の3つが1つでも多く起こると業界や市場の競争環境が大きく変化します。
✓ 競争環境が変わるトリガー
- 生活環境の変化。例: 新型コロナ感染拡大, 原材料高や円安による値上げ
- 技術の進歩、全く新しい商品・サービスの提供
- 規制の緩和または強化
市場の前提から変わることで、生活者や企業の心理や行動に影響を与えます。
新しい問題や課題が生まれ、ニーズも新たに顕在化します。変化をチャンスと見たプレイヤーが異業種からも参入し競争が激しくなっていきます。薬局の業界変化はまさにこの状況です。
変化の時間的な展開
市場の競争環境を捉えるためには今だけの点での 「静止画」 ではなく、時間的変化も入れた線での 「動画」 で見るといいです。
時間軸の要素を入れる時に使えるのがイノベーター理論です。
イノベーター理論とは、人々を大きく5つに区分し、新しい技術や商品・サービスが普及する時の浸透度合いを理論化したものです。
出典: ONE Marketing
✓ イノベーター理論の5つのグループ
- 新しいものに真っ先に飛びつく人 [イノベーター]
- 流行に敏感でオピニオンリーダーのような人 [アーリーアダプター]
- 取り残されないように後から追いかける人 [アーリーマジョリティ]
- 保守的でなかなか取り入れない人 [レイトマジョリティ]
- 最後まで決して動かない人 [ラガード]
このような順番で新しいものが普及していくという考え方がイノベーター理論です。
イノベーター理論というレンズを使えば、市場や業界の競争環境の変化の今と将来の展望が見えてきます。
イノベーター理論以外にも 「ハイプ・サイクル」 という理論もあります。
出典: Gartner
✓ ハイプサイクルの5つのステージ
- 黎明期: 大きな注目が集まる。しかしまだ使用可能な製品は存在せず、実用化の可能性は証明されていない
- 「過度な期待」 のピーク期: 数多くのサクセスストーリーが紹介される。失敗事例は見過ごされやすい
- 幻滅期: 実験や実装で成果が出ないため関心は薄れる。一部では投資は継続される
- 啓蒙活動期: 具体的な事例が増え始め理解が広まる。保守的な企業は慎重なまま
- 生産性の安定期: 普及していく。テクノロジーの適用可能な範囲と関連性が広がる
新しい技術やサービスが登場してから市場に受け入れられるまでは、このような順番で同じ経過をたどります。
競争環境の変化を捉える方法
市場の競争環境を見極めるには売り手視点だけではなく、マーケットからの顧客目線で変化を捉えることが大事です。
まとめると、
✓ 競争環境の変化を捉える方法
- 前提の変化: ① 生活環境の変化、② 技術やサービスの進化、③ 法整備などの規制の緩和または強化
- 影響を受ける生活者や企業の心理 (価値観や認識) と行動の変化、新しい問題とニーズの顕在化
- 時間的な展開の把握。例: イノベーター理論やハイプサイクルから現状と将来の見極め
業界地図が書き換わるような大きな変化が起こっているときに、ただなんとなく眺めるだけでは不十分です。
解像度を上げることが大事です。具体的には、
✓ 解像度を上げる方法
- 見る領域と時間軸の視野を広げる
- 見る着眼点を増やす
- 要因を掘り下げる
- 構造化して全体像を見る
- 時間的な展開と変化も見据える
最終的に今は要するにどういう状況なのか、これから競争環境はどうなっていくのかに常に自分なりの答えを見出すことをマーケターは求められます。
まとめ
今回は薬局のデジタル決戦の事例から学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 競争環境の変化を捉える方法
- 市場の競争環境の変化を捉える方法は、前提の変化 (生活環境, 技術進歩, 規制の緩和または強化) に注目し、お客さん目線で新しい問題やニーズを把握する
- 時間的な展開を把握するためにイノベーター理論やハイプサイクルを活用し、現状と将来の市場展望を見極める
- 解像度を上げる方法は視野を広げ着眼点を増やし、要因を掘り下げて全体像を把握することで競争環境の変化に対応しよう
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!