投稿日 2023/05/05

買いにくい障壁を壊せ!パナの壁掛け専用テレビの見込み客へのマーケティング

#マーケティング #顧客獲得 #選ばれる理由


壁掛けテレビがリビングにもたらす価値。パナソニックが開発した 「ウォールフィットテレビ」 はどのようにしてお客さんの悩みを解決し、注目を集めているのでしょうか?

この記事では、事例からのマーケティングへの学びとして見込み客へアプローチする方法を解説します。これを読めば、マーケティングの知見が増えること間違いなし!ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

✓ わかること
  • パナソニックの壁掛け専用テレビ 「ウォールフィット」 
  • 5% の背後に見たビジネスチャンス
  • 見込み客へのマーケティング
  • 買いにくい障壁を解消しよう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ウォールフィットテレビ



壁掛け専用テレビ


今回取り上げたいのはパナソニックの壁掛け専用テレビ 「ウォールフィットテレビ」 です。

パナソニックホールディングス (HD) が2022年11月に発売した有機 EL テレビが話題だ。同社初の壁掛けに特化したテレビで量販店や消費者から 「テレビとしては過去にないほど問い合わせを受けている」 (同社) という。

壁と一体化するデザイン性の高さと設置のしやすさを打ち出し 「壁掛け専用」 という新市場の開拓を狙う。

開発の狙い


パナソニックが壁掛け専用のテレビを開発した狙いはどこにあったのでしょうか?

本当は壁掛けにしたいのに断念している人は多いのではないか――。パナソニック HD 傘下で黒物家電を手掛けるパナソニックエンターテインメント & コミュニケーション (PEAC) が開発した 「ウォールフィット (WF) テレビ」 (市場想定価格33万円前後から) はそんな仮説から開発が始まった製品だ。

PEAC によると、テレビを壁掛けで設置する人は 5% 程度にとどまる。設置のための工賃や手間がかかるほか、賃貸マンションでは壁を傷つけられない点が課題となっていた。

一方、PEAC 商品企画部の野村美穂さんは 「設置のハードルを低減できれば、潜在需要は大きいと思っていた」 と話す。「在宅時間が増え、リビングを広く使いたいと考える人も増えている」 (野村さん) ことも開発を後押しした。

デザインの特徴


壁掛け専用のテレビとして設置しやすいように、ウォールフィットテレビはデザインで工夫をしました。

画面サイズは55型と大きいが、特別な工事なしで壁に設置できるのが特徴だ。従来はネジを使って壁に穴を空けて留め具を取り付ける必要があったが、WF テレビは細長いピンを壁に刺すだけで設置できる。跡が残りにくいため、賃貸物件の壁にも対応できる。

同型のテレビは通常20キログラムほどあるが、WF テレビは画面部分を12.5キログラムに抑えた。チューナーや画像処理を担う部分は別端末に分け、映像データは無線で飛ばす仕様にした。重量の削減はデザイン性の向上にもつながった。WF テレビの厚さは3.5センチに抑え、横から見ると一枚板のような形状に仕上げた。

 (中略) 

壁掛けが前提の WF テレビは全面をフラットにした上で、側面を壁と同化しやすい白色にすることで、壁から画面が浮き出てたように見える効果を狙った。

学べること


ではウォールフィットテレビから学べることを掘り下げていきましょう。

利用用途の振り切り


パナソニックの自社調査ではテレビを壁掛けで設置している人は 5% でした。しかし実は壁掛けをしたいのに諦めている人がいると見て、ビジネスチャンスだと捉えました。

壁掛けをするには手間や工事費がかかる、賃貸物件なので壁掛けをするには抵抗がある、あるいは壁掛けできるテレビが売られていないなどの要因があり、壁掛けをしている人は実際は 5% にとどまっていると解釈したわけです。

興味深いのは、ウォールフィットテレビは 「壁掛け “も” できるテレビ」 ではなく、はじめから壁掛け用に特化したことです。壁掛けという用途に絞って振り切っています。

買いにくい要因の解消


ウォールフィットテレビの事例をマーケティング視点で一般化すると見込み客や未顧客の買いにくい要因の解消です。

欲しいと思っているのに買うハードルがあることで結局は選ばれていない理由を見極め、買いにくい理由を消しました。

✓ 買いにくい要因の解消
  • 設置のしやすさ。手間がかからず、設置の別途工費の支払いが不要
  • 壁に跡が残りにくいので賃貸住宅でも設置できる
  • 壁と一体化するデザイン。リビング等の壁にあっても圧迫感や威圧感がなく自然に置ける

一定数の人が持っているであろう 「欲しいのに買いにくい理由」 がなくなれば、壁掛けテレビは選ぶ候補に入り買ってもらえる可能性が出てきます。

見込み客や未顧客へのマーケティング方法


マーケティングでやることはお客さんからの選ばれる理由をつくることです。

今回の事例からの学びは見込み客や未顧客へのマーケティングとして、(実は) 欲しいのに選びにくい理由をなくす重要性です。

具体的には、次のように1つ1つ解きほぐしていきます。

  • 最初からそもそも買いたいと思わない人ではなく、買いたいのに何かしらの要因で買うのをあきらめている人を見つける
  • 買っていない物理的な阻害要因は何か
  • 奥にある心理的なバリアーは何か

買いにくい理由を解像度高く理解し、本当は欲しいと思っているのに買いにくい障壁をいかに解消できるかがポイントです。


まとめ


今回はパナソニックの壁掛け専用テレビ 「ウォールフィットテレビ」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 見込み客や未顧客へのマーケティング方法
  • マーケティングの役割はお客さんから選ばれる理由をつくること
  • 一定数の人が持っているであろう 「欲しいのに買いにくい理由」 がなくなれば、買ってもらえる可能性が出てくる
  • 買っていない物理的な阻害要因や奥にある心理的なバリアーを理解し、買いにくい理由を解消しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。