投稿日 2023/05/10

サンクゼール流!マーケターが生活者理解で小売提案力を強化する方法

#マーケティング #顧客理解 #価値提案


お客さんの理解を最大限に活用して、提案力を伸ばす方法を知りたくありませんか?

今回のテーマは生活者理解です。相手が知らないレベルまで生活者を理解し、深い理解を提案の武器にしようという話です。

食品製造販売のサンクゼールがどのように顧客理解を活かし、成果を上げているのかを解説します。成功事例からマーケティングに活かせるヒントを一緒に見つけにいきましょう!

✓ わかること
  • 生活者理解で小売への提案力を強化するサンクゼール
  • 深い生活者理解からの提案方法
  • マーケターの役割と武器

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

サンクゼールの取り組み


ご紹介したいのは食品製造販売のサンクゼールの取り組みです。

食品製造販売のサンクゼールが、食品スーパーなどへの自社製品の卸売りを強化している。自社店舗の顧客へのリサーチや販売データ分析を基に、売れ筋の商品を取引先にアピールする。2023年3月期の卸売りの売上高は約33億円と、3年前の4倍近くになる見通しだ。

同社は 「久世 (くぜ) 福商店」 「サンクゼール」 のブランドで全国のショッピングセンター内などに156店舗を展開しており、だしの素 (もと) や瓶詰、菓子など様々な自社ブランドの加工食品を販売している。

自社店舗以外の販路開拓


サンクゼールは自社店舗以外の食品スーパーなどに販売先を広げています。

自社ブランド店舗での販売が同社の主力だが、出店余地が狭まっていることや、新型コロナウイルス禍の影響で、ここ数年は店舗数が頭打ち傾向にある。

インターネット通販の拡充と並行し、食品スーパーなどへの自社製品の卸売りを強化している。

小売への提案方法


自社店舗以外の販路拡大を強化しようとしても、小売にいきなり食い込むのは簡単ではありません。

小売にとってサンクゼールの商品を新たに扱うということは、今まで仕入れて売っていた他社商品からのスイッチングコストが発生します。取り扱う商品を変えるだけのメリットが小売には必要になります。

ではサンクゼールは小売との商談でどのように提案しているのかを記事から見てみましょう。

久世 (くぜ) 良太社長は 「 (食品スーパーの) バイヤーが恐れるのは在庫リスク。エビデンスを示しながら提案する」 と話す。POS (販売時点情報管理) データや自社アプリの利用状況などを分析して売れ筋製品をアピールする。

例えば、コロナ禍によって家で食べる高価格の食品を購入する人が増えたことで、瓶詰の総菜 「ご飯のお供 (ごはんのおとも) 」 シリーズの販売が伸びた。提案を強化することで卸売りの伸びにもつながったという。

提案力を高めるための取り組みも進めている。22年には同社製品の購入頻度が高い消費者のコミュニティーを組織した。アンケート調査やグループインタビューを通じて、購買行動には表れてこない潜在的なニーズを拾い上げ、食品スーパーなどへの提案にも生かす。

スーパーなどの小売への商談には自社店舗の POS データや自社アプリのデータを活用しています。

アプリにはお気に入り商品や登録店舗の最新情報が届く。ポイントもたまる (出典: 久世福商店

興味深いのは自らコミュニティをつくり、会員へのアンケートやインタビューまで実施しているとです。POS やアプリデータだけでは捉えきれない潜在的なニーズを汲み取り、小売への提案に活かしているのです。

前半のまとめ


では一度ここまでをまとめておきます。

  • 食品製造販売のサンクゼールは、ここ数年は店舗数が頭打ち傾向にあるため、ネット通販や食品スーパーなど小売への自社製品の卸売りを強化している
  • サンクゼールは小売との商談で自社店舗の POS データやアプリデータを活用し、売れ筋商品を提案している
  • さらに、消費者コミュニティを構築し、アンケートやインタビューを実施して潜在的なニーズを把握し、小売への提案に活かしている


学べること


ではサンクゼールの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

生活者理解からの提案


サンクゼールが小売への提案の根拠にしているのは生活者理解です。

それも小売が持っていない情報を活用し、バイヤーが恐れていることが起きない方法として自社商品や売り方 (棚割り) を提案しています。

注目したいのは生活者理解と活用が仕組みとしてできていることです。

✓ 生活者理解と活用の仕組み化
  • 自社店舗やアプリの生活者接点を持っている
  • コミュニティを運営しアンケートやインタビューを自ら実施
  • 収集データの分析から小売への意味合いを抽出し、商談に活用

POS やアプリのデータだけではなく、消費者へのアンケートやインタビューから生活者の行動と心理を理解しての提案はまさにマーケティングです。

✓ マーケティング的なアプローチ
  • 生活者の深い理解
  • バイヤーのニーズや恐れていることを把握
  • データに基づいた根拠から小売にメリットがある提案

マーケターの役割


マーケティングへの学びとして一般化すると、マーケターとして大切な姿勢は市場や顧客理解によって考えたり行動し成果を上げることです。

例えば社内での企画提案やクライアント企業への提案においても、マーケットの理解をベースにします。提案相手がそこまで知らないであろう深い理解から、相手にとっての意味合いやメリットを見出すことで説得力のある提案になります。

そして何よりも提案を実現することで相手の成果を生み出します。深い生活者理解は提案や成功の武器になるのです。

市場や生活者を理解するためにはマーケターは自ら足を運び、必要ならお金を払ってでも取りにいくべきです。マーケターの役割は市場とお客さんを理解し、理解から実行と成果につなげることです。


まとめ


今回はサンクゼールの販路拡大の事例から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ マーケターの武器は深い生活者理解
  • 市場や生活者を理解するためにはマーケターは自ら足を運び、必要ならお金を払ってでも取りにいくことが大事
  • 洞察から他者・他社が行き着いていない深い理解をし意味合いを見出そう
  • 深い生活者や顧客理解はマーケターが考え行動し成果を上げるための武器になる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。