投稿日 2023/05/13

ファミマ流・強みのつくり方 - ファミマがリテールメディアの広告効果を企業に提供

#マーケティング #広告 #強み


デジタルサイネージ広告に注力しているファミリーマート。その裏に隠された狙いはどこにあるのでしょうか?

この記事ではファミマがどのように独自の強みを構築し、お客さんと広告主の心をつかもうとしているのかを探求していきます。自分たちならではの強みをどう打ち出すのかを一緒に学んでいきましょう。

✓ わかること
  • ファミマのリテールメディア事業
  • 店内デジタルサイネージ広告効果を広告主に提供
  • 提供する狙いとは?
  • ファミマのバリュープロポジション
  • 強みのつくり方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ファミマのリテールメディア



ご紹介したいのはファミリーマートの店内デジタルサイネージ広告です。

デジタルサイネージ広告効果を見える化


ファミマが店舗に設置したデジタルサイネージの広告効果を分析し、結果を企業に提供しているとのことです。

ファミリーマートは店舗に設置したデジタルサイネージ (電子看板) の広告効果を分析し、企業に提供する。消費者へのアンケートや未設置店との売り上げ比較を通じ、広告や販促の効果を数値でみせる。データを示して企業にサイネージ広告への出稿を促す。

広告効果の可視化や分析は伊藤忠と共同出資する子会社のゲート・ワン (東京・港) が担う。ファミマのアプリ 「ファミペイ」 を通じて、どの程度広告が見られているかアンケートするほか、設置店と立地や売上高などの条件が近い未設置店の販売個数や認知度の改善効果を見える化する。

サイネージの広告効果


先ほどの記事ではファミマのデジタルサイネージ広告効果の例が載っていました。

ゲート・ワンによると、2022年3 ~ 7月にサイネージで広告を流した飲料メーカーの商品の場合、約2 ~ 4週間の広告期間中の販売個数が未設置店に比べて 8% 増え、広告終了後も 10% 増を維持したという。

広告を流した商品以外でも同一ブランドの販売シェアが上がる効果も確認した。約3カ月掲載した飲料は、掲載中はシェアが約6ポイント、掲載後も5ポイント増を維持していた。

興味深いのは広告期間中だけではなく広告終了後も広告効果が続いたこと (広告の残存効果) 、そして、広告で扱った商品以外の同じブランド名の商品にも波及効果があった点です。これはすごいことです。

結果を広告主フィードバック


注目したいのは、ファミマがデジタルサイネージの広告の結果を広告主にもフィードバックし共有していることです。

結果は出稿企業にフィードバックして広告の継続を促すほか、新規出稿企業の営業にも活用したい考えだ。

例えば、モニターの使い方。ファミマのサイネージはレジ付近にあり、モニターが3つ横に並んでいる。3つそれぞれが違う内容を流すより、内容をそろえた方が成果が出やすいと言うことがこれまでにわかっている。ゲート・ワンの速水大剛最高執行責任者 (COO) は 「発信する情報をしぼり、商品を大きく見せたほうが消費者に伝わりやすい」 と指摘する。

学べること


ではファミマの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

広告効果を提供する狙い


ファミマが広告主にも結果を提供する狙いはどこにあるのでしょうか?

狙いは自社のリテールメディアの優位性を示し、広告の投資対効果を数字でわかってもらう、広告出稿会社の満足度向上、広告の結果から知見を高めてもらうことです。他にもこれから新規でデジタルサイネージに広告を出したいと考えている企業に、広告を出稿してもらう提案にも活用しています。

ファミマにとっては店内に設置するデジタルサイネージ (リテールメディア) を広告メディアと捉え、広告メディアとしての優位性を打ち出せれば広告費という新たな収益源が生まれます。

バリュープロポジション


学びを一般化すると、今回の事例から学べるのは 「強みのつくり方」 です。比較優位を見出し自分たちならではの強みをどうつくるのかです。

そこで補助線としてご紹介したいのが 「バリュープロポジション」 です。

バリュープロポジションとは、以下の3つが当てはまる自分たちにしかできない価値提案です。

出典: lifehacker

  • お客さんが望んでいること
  • 自社ができること
  • 競合にはできないこと

これら3つが成立すれば強みになり、お客さんにとって他にはない価値となります。

ファミマのバリュープロポジション


ファミマのデジタルサイネージをバリュープロポジションに当てはめると、強みが見えてきます。

✓ お客さん (広告主) が望んでいること
  • 広告主は広告効果を数字で知りたい (実績を社内で示せ説明責任が果たせる) 
  • 広告によって結局のところ広告商品は売れたのか
  • 誰が・いつ・どこで・どれくらい買ったのか
  • 次も広告を出稿し期待する効果が得られそうか

✓ 自社ができること & 競合 (他の広告メディア) にはできないこと
  • ファミマは店内にデジタルサイネージを設置しているので、消費者が広告を見て広告商品をその場で買ってもらえる (メディア接点と購入接点の両方を持っている) 
  • 販売データと会員データから誰・いつ・どこで・どれくらい買ったかがわかる
  • 広告効果の分析に長けた子会社 (ゲート・ワン) がある

以上のようにファミマの店内デジタルサイネージを使うリテールメディアには、広告主にとって他の広告メディアにはない強みがあり、独自の価値をもたらします。

強みをどうつくるのかに示唆がある事例です。


まとめ


今回はファミマのデジタルサイネージへの取り組みをご紹介し、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 強みのつくり方
  • バリュープロポジションによって強みを見出す
  • ① お客さんが望んでいる、② 自社ができる、③ 競合にはできないことの3つを満たせば、他にはない価値をお客さんに提供できる
  • 独自の価値は自分たちが選ばれる強みになる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。