投稿日 2023/05/27

市場創造の真髄とは?ユニ・チャームのインドでの女性起業家支援の戦略

#マーケティング #市場創造


市場創造とは何をすることでしょうか?

これはマーケターが日々直面する課題で、答えを探すのは決して簡単ではないですよね。

今回はユニ・チャームのインド市場への進出を例に、この難問に迫りたいと思います。長期的なビジョン設定、需要を生み出す施策、未来の市場をつくるための問い...。これらから学べる市場創造の秘訣をぜひ一緒に探求していきましょう。

ユニ・チャームがインドで女性起業家を支援



ユニ・チャームがインドで生理用品販売によって女性起業家を支援しています。

ユニ・チャームがインドでの生理用品普及に向け、農村部での女性の起業家育成に注力している。現地法人が生理用品を販売する女性を支援する事業を進めている。

同国では地方を中心に生理自体をタブー視する風潮が根強く、女性の社会進出の妨げになってきた。同社は2030年までに3500人の事業主創出をめざし、人々の啓発と需要拡大を図る。

インド北部ウッタルプラデシュ州の農村。コンビニエンスストアやドラッグストアが見当たらない地域で直近、ユニ・チャームの生理用品 「ソフィ」 などを扱う店舗が次々と誕生した。店主となった20代の女性は 「これまでは生理用品を買うのに、8キロメートルほど先の街まで行く必要があった。自分のように顔なじみから買える方が、男性の視線を気にせず女性の抵抗感も少ない」 と話す。

生理用品の使用率が低い農村部


インドではとりわけ農村部では生理用品の使用率が低い状況です。

依然としてインドでは農村部を中心に生理用品の使用率が低い。ユニ・チャームの調べではナプキンの使用率は 40% 程度にとどまる。生理の時に学校を休まざるを得ない女性も多いという。

農村部で低い自社シェア


ユニ・チャームにとっては、農村部の自社シェアが低いのをどう高めるのかが課題です。

ソフィのシェアは都市部では1割を占めているが、人口の多数を占める農村部では 4% 程度だという。プロジェクト・ジャグリティの推進によって農村部でも継続的に同社の生理用品を購入できる体制を整えていく。22年末まで現地法人で同事業などを担ってきた同社グローバルウェルネスケアマーケティング本部の浪井康弘氏は 「女性の社会的地位向上とナプキンの使用率拡大を同時に実現する」 と話す。

プロジェクトを実施した地域における1店舗あたりのソフィの売上高は、農村地域全体の平均の2倍程度になっているという。

SDGs が入った取り組み


ユニ・チャームの最終的な狙いはインドでの生理用品マーケットを拡大させ、自社シェアを高めることです。特徴的なのは SDGs の要素を入れているところにあります。

✓ SDGs の要素
  • 生理への啓蒙活動と生理用品の利用促進から女性の QOL (生活の質) 向上 [SDGs ゴール 3: すべての人に健康と福祉を Good health and well-being]
  • 女性起業家を育成し社会進出を支援 [SDGs ゴール 5:ジェンダー平等を実現しよう Gender equality]


学べること


ではユニ・チャームの取り組みから学べることを掘り下げていきましょう。

ゴールまでの長期ロジック


ユニ・チャームの最終的なゴールはインドでの自社商品の売上を増やし持続的なビジネスにすることです。

そのための女性起業家の支援や生理への啓蒙活動は、ゴールに至るまでの道のりが長い取り組みです。

  • 生理への正しい知識を提供
  • 生理用品を使うことの意味合いや方法を伝える
  • 農村部までの流通販売網を整備
  • 女性起業家を育成し社会進出を支援

これだけの下地を整え生理用品市場を大きくし、自社商品シェアを高めようとしているわけです。

市場創造とは何をすることなのか


ユニ・チャームがやっていることを例えるなら、人々に魚をただ与えるやり方ではありません。魚を食べることの意味から伝え (例: 良質なタンパク質などの栄養素を摂れ健康的になれる) 、釣り竿と釣り方を提供しています。

ユニ・チャームは、市場創造とはこのようにやるというのを実践して示してくれています。

  • 未来に市場はできるか
  • お客さんは誰か
  • 自分たちの商品をお客さんに欲しいと思ってもらえるか
  • お客さんに選んでもらえるためにはどこから必要なのか

市場をつくっていくためにマーケターが向き合いたい問いかけです。


まとめ


今回はユニ・チャームのインドでの取り組みから、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 市場創造とは何をすることなのか
  • 市場がまだない状態ではカテゴリーへの正しい知識を提供し、使うことの意味合いや方法を伝えることから
  • 流通販売網やコミュニケーション媒体などの顧客接点を整備し、売り手を支援する下地づくりも必要
  • 未来に市場はあるのか、お客さんは誰か、商品をお客さんに選んでもらえるためにはどこから必要なのかに1つ1つ答え市場をつくっていこう


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、今日から活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。