昔の携帯電話に思い出が詰まっていたり、何か特別な価値を感じたことはありますか?
今回は、au が実施している 「おもいでケータイ再起動」 というユニークなイベントを取り上げ、古い携帯電話に宿る記憶がいかにマーケティングと結びついて、ユーザーに価値をもたらしているかを一緒に探っていきたいと思います。
懐かしの思い出を蘇らせ、顧客体験を最大化するという真の価値とは何なのでしょうか?
昔のケータイを復活させるイベント
出典: ITmedia
取り上げたいのは au が実施している昔のケータイを復活させるイベント 「おもいでケータイ再起動」 です。
おもいでケータイ再起動
ある男性が持ち込んだ携帯電話に残っていた愛犬の写真 (出典: ITmedia)
このイベントは6年以上も続いているとのことです。
どんなイベントなのか様子を見ていきましょう。
「おもいでケータイ再起動」 は、参加者が持ち込んだ電源が入らなくなったケータイ (フィーチャーフォン) を復活させるイベントだ。古くなったケータイには、使っていた人の歴史が刻まれている。イベントに参加したある男性のケータイには、10年ほど前に孫が生まれ、初めての七五三を迎える成長の記録が写真として残されていた。
数百枚の写真や、家族や友人とのやりとりが残されたフィーチャーフォンも、いつか動かなくなるときが来る。充電器がなくなってしまうこともあれば、バッテリーが劣化して起動できなくなることもある。
おもいでケータイプロジェクトでは、そんな電源が入らなくなった復活させるための体制を整えている。フィーチャーフォン時代はメーカーやキャリアによって形状が違った充電器は、撤退したメーカーも含めて十数社分を確保。バッテリーの劣化により起動しなくなった電池を一時的に復活させるための専用の機材まで準備している。
お客さんを身近に感じる機会
昔の携帯電話を復活させる 「おもいでケータイ再起動」 のイベントは、消費者からの au への愛着が高まる場になるだけではなく、KDDI の社員にとってもお客さんのことを身近に感じる機会になっているとのことです。
KDDI にとって、おもいでケータイプロジェクトは直接利益を生む事業ではない。参加料は無料で、au ユーザーでなくとも参加できる。
au 以外のキャリアのフィーチャーフォンも持ち込み可能 (スマートフォンは対象外) 。プロジェクトを統括する KDDI の西原由哲氏は、「au ブランドを身近に感じていただける機会であり、KDDI の社員にとってもお客さまを身近に感じる機会になっている」 と語る。
イベント参加は無料なので運営コストを考えれば赤字です。
しかしイベントから直接の売上はなくても、携帯ショップ以外にお客さんとの直接の接点を持てる側面に重きを置いています。「自分たちの商品やサービスがこんなふうに1人ひとりに役に立っている」 という実感を持てる機会になっているわけです。
学べること
では au の 「おもいでケータイ再起動」 から学べることを掘り下げていきましょう。
復刻商品の価値
昔のヒット商品を限定で再度売り出すなどの復刻商品はよくある手法です。懐かしさのあまりつい欲しくなります。
au が 「おもいでケータイ再起動」 のイベントでやっていることは復刻商品の提供です。
厳密に言えば昔のケータイが復刻モデルとして発売されるわけではありませんが、持ち主にとってはイベントの時だけでも自分だけの 「復刻商品」 が手に入るわけです。
ユーザーにとってはケータイというモノの復活に加え、使っていた当時の記憶が蘇ります。モノと思い出の両方が得られることに価値があるのです。
懐かしの思い出マーケティング
au がやっているのは 「懐かしの思い出を蘇らせるマーケティング」 と見ることができます。
今回の話からの学びを一般化するとお客さんにとっての本当の価値を見極め提供する重要性です。
かつての商品を復活させることは手段です。大事なのはその先で、使っていたモノをもう一度手に入れられる価値、今回の事例で言えば動かないものが直ることでのお客さんへの本当の価値は何かです。
au のおもいでケータイ再起動のイベントは思い出が蘇ることに価値があります。
イベント化して会場に来てもらい、au ユーザーではない人にもオープンにしています。お客さんの体験価値を目の前で見て、自分たちも共感できる直接の顧客接点を持てないかを考えてみるとマーケティングコミュニケーションのヒントにつながります。
まとめ
今回は au の 「おもいでケータイ再起動」 イベントを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 思い出を蘇らせるマーケティング
- 復刻商品は使っていたモノをもう一度手に入れることに加え、使っていた当時の記憶が蘇る。モノと思い出の両方が得られることに価値がある
- かつての商品を復活させることは手段。お客さんにとっての本当の価値を見極め提供することが大事
- お客さんの体験価値を目の前で見て、自分たちも共感できる直接の顧客接点を持とう
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