ビジネスで直面する挑戦の1つは、「何を変えるべきか、何を変えざるべきか」 という問いに答えを出すことです。
今回は 「らーめん山頭火」 の海外展開の事例を取り上げ、ブランドアイデンティティの保持と現地化の舵取り、そして、顧客中心の差異化戦略の秘訣を紐解きます。
らーめん山頭火が海外で好調
出典: 日経
北海道・旭川発祥の 「らーめん山頭火」 が海外で好調です。
北米やアジアなど8カ国・地域で40店舗を展開し (2024年1月時点) 、これは国内14店舗 (同) の3倍近い規模にあたります。海外の売上高は全体の 80% 以上を占めるとのことです (参考記事) 。
日本の店舗で働いた経験を持つ人が現地で活躍し、日本式のラーメンづくりや接客を徹底しているところに人気の秘密があります。
人気の理由は味や接客の一元化だ。米国の店舗では基本的に山頭火の国内店で経験を積んだ店長クラス以上のスタッフが品質管理や接客対応を従業員に一から教える。例えば、店舗ごとに水質も違うため、煮出し時間などを調整する必要があるからだ。
本場の味を追求するため、それぞれの店舗でだしからスープをつくる。セントラルキッチンを持たない店舗展開はコストが増すが、「スープの鮮度が良く一番おいしい状態で提供することにこだわっている」 (山頭火を運営するアブ・アウトの菊田伸一社長) 。麺や具材といった食材は基本的に現地で調達するが、味に影響する場合は日本から送る。
海外の店舗ではメニューの表記も英語や現地語のほか、必ず日本語も記載する。客が席に着いたら水を置くという日本流の接客も一部店舗で取り入れる。
(中略)
創業当時から提供する定番の 「しおらーめん」 は小梅のトッピングが好評。看板メニューは全世界で同じ味を提供している。
独自価値を提供し続けた結果としての差異化
らーめん山頭火の海外展開で現地のお客さんから人気を呼んでいるのは、他の飲食店に比べて差異化され、他にはない独自の価値があるからです。
らーめん山頭火の事例から学びとしたいのは、差異化が 「結果としてできている」 ということです。
アイデンティティ保持と現地化
らーめん山頭火は、単に海外に進出している成功例としてだけではなく、ブランドとしてのアイデンティティを保ちながらも、現地の文化や顧客ニーズに適応するにはどうすればいいかへの示唆を与えてくれる事例です。
らーめん山頭火の今のやり方は、主力スタッフを現地で雇用して任すのではなく、日本での店舗経験のある人を送り日本のやり方をベースとしつつも、現地のやり方と融合していくアプローチをとっています。
自分たちが信じる最もおいしいラーメンを提供するベストな方法を模索し続けたからこそできあがったものです。これは、お客さんに少しでも喜んでほしい・満足してほしいと思いを持ち続けてのことでしょう。
おそらくですが、競合他社のラーメン店や他の飲食店と違うことをやろうという対抗意識よりも、あくまで自社商品を磨き、お客さんのためにおいしい一杯のラーメンをつくり続けてきたからこそのはずです。
また、らーめん山頭火は海外店舗のメニューに日本語も記載し、日本流の接客を取り入れることで、日本の接客スタイルや飲食文化を伝える役割も果たしています。海外に進出するときに、自国の文化的アイデンティティを維持しながらグローバルに展開する方法の例としても注目に値します。
価値提供を磨き続ける
差異化は、顧客不在の競合との比較競争に陥ってはいけません。自社商品やお客さんへの深い愛情と、何よりもお客さんに商品を最高の形で提供したいという強い思いからの創意工夫から生まれるものだということです。
「お客さんのために」 を愚直に追求していった先に、他にはない独自な価値が提供できます。差異化はあくまでその結果としてです。
海外の現地で新しくオープンするらーめん山頭火のお店にはオープン当日に行列が並ぶほどです。それほどの知名度を獲得し、「らーめん山頭火のラーメンを食べたい」 と期待される人気チェーン店となっています。
まとめ
今回は 「らーめん山頭火」 の事例から、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ブランドや企業としてのアイデンティティを維持しつつ、変えるところは柔軟に現地化や現場への権限移譲をはかるなど、「変えないこと」 と 「変えること」 のバランスを取ることがビジネスを成功させるカギ
- 差異化とは 「お客さんのために」 を追求し、お客さんへの他にない独自価値をもたらし続けた先の結果としてできるもの
- 顧客不在の競合との差別化競争に陥るのではなく、つくった違いがお客さんにとって価値のあることが大事
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