マーケティングを成功させるには、どのようなプロセスを進んでいけばいいのでしょうか?
今回は冷凍食品のサブスクサービスの事例から、マーケティングの全体像を探り、ビジネスに汎用的に活かせる方法を紐解きます。
冷食おかずの宅配サブスク 「三ツ星ファーム」
出典: 日経クロストレンド
冷凍されたおかずプレートを家庭に届ける、宅配サブスクリプションサービスの 「三ツ星ファーム」 が好調です。
2021年6月のサービス開始から2年で累計販売500万食を達成し (2023年6月) 、そこから勢いを増し、半年後の2024年1月には累計1000万食を突破しました (参考記事) 。
三ツ星ファームは、糖質 25g 以下、たんぱく質 15g 以上、350kcal 以下という 「三ツ星基準」 を設けて、バランスの取れた低糖質おかずプレートを提供しています。
顧客理解からの価値提案
販売が好調な要因は、2023年から取り組んだお客さんの声を生かすマーケティングにありました。
会員の声を集めてマーケティングや商品開発にフィードバックするプロセスを強化しています。顧客セグメントごとにデジタル広告やウェブページ (ランディングページ) を制作し、さらに UGC (ユーザー生成コンテンツ) も活用するなどして、コンバージョン率や会員継続率を向上させました。
顧客理解の解像度
冷凍食品のおかず宅配サブスクの 「三ツ星ファーム」 から学べるのは、顧客理解の重要性です。
顧客理解の "質" と "量" の両方を高めていくことでお客さんに対する解像度が上がります。解像度が上がれば、より具体的にお客さんのことを理解できるという好循環が生まれます。
では具体的に三ツ星ファームの事例に当てはめてみていきましょう。
三ツ星ファームの顧客理解への取り組み
三ツ星ファームで展開していたデジタル広告やウェブサイトは、以前はお客さん全体が意識するであろう 「価格」 や機能的価値である 「おいしさ」 や 「手軽さ」 など、汎用的な価値を訴求する内容や表現になっていました。
多くの人に共通するであろう魅力を打ち出していたわけですが、一方で個々のお客さんのニーズに応えたり、具体的な体験価値を伝える内容になっていませんでした。
そこで2023年4月ごろから、お客さんの声を集めてマーケティングなどにフィードバックするプロセスを強化しました。具体的には、既存顧客である三ツ星ファームの会員を招いて新商品の試食会を実施し、得られた声を商品開発に反映したり、会員1人ひとりへの対面でのインタビュー調査です。
また、定期的にアンケート調査を実施し、試食会とインタビュー調査と併せることで、何がどんなお客さんに魅力になっているのかという顧客理解を、定量・定性の両面から細かく把握する仕組みを整えたとのことです (参考記事) 。
顧客理解からの価値提案
想定する顧客イメージ像の解像度が上がり、顧客理解が深まれば、お客さんが求めていることに沿ってのそれぞれの顧客文脈にフィットした価値提案につなげられます。
三ツ星ファームは、得られた顧客理解にもとづいて、商品や施策効果に違いが出るよう顧客セグメントを分けました。たとえば働くママ、1人暮らし若年男性などです。
それぞれの顧客セグメントに合わせて広告バナーなどのデジタル広告、広告から遷移するランディングページ (LP) を制作しました。ここでは UGC も積極的に活用しています。
たとえば、子どもを育てている母親向けには、子どもと一緒に食べていたり、料理を食卓に並べたりするビジュアルを採用し、「簡単調理」 や 「指定添加物不使用」 などとうたいます。一方で1人暮らしの男性向けには 「レンジで5分、おいしい料理を時短調理」 を訴求し、「たんぱく質がこれだけ入ってこの価格、コスパよし」 といった表現でアピールしました。
顧客セグメントによって訴求ポイントを変え、広告のクリック率やコンバージョン率の向上を図ったわけです。
得られた成果
顧客セグメントに応じての出し分けや、UGC も積極的に活用した訴求は、UGC を使う前の LP に比べて、CVR (コンバージョンレート (成約率) ) が平均で1.3倍になりました (参考記事) 。
ここまで見てきたように、三ツ星ファームの取り組みはマーケティングの全体的な流れがきれいにつながっています。
- ターゲットとするお客さんを決める
- 質と量から解像度を高めお客さんのことを深く理解する
- 顧客グループごとに合わせた顧客価値を磨き込む
- 顧客文脈に沿った商品価値を提案する
三ツ星ファームは、お客さんからの声を価値に転換し、マーケティングの成果につなげた成功事例です。
まとめ
今回は、冷凍されたおかずの宅配サブスクのサービスである 「三ツ星ファーム」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントとして、マーケティングの全体像をまとめておきます。
- ターゲットとするお客さんを決める
- 質と量の両方から顧客理解の解像度を高める
- 顧客グループごとに合わせた顧客価値を磨き込む
- 顧客文脈に沿った商品の魅力を伝え、商品価値を提案する
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