投稿日 2024/05/22

チョコザップの会員獲得の秘訣。"◯◯ をしたい" を多く叶える多彩な入口 (CEP) で顧客を魅了

#マーケティング #顧客文脈 #カテゴリーエントリーポイント

今回は、コンビニジムとも言われ、気軽に運動エクササイズができる 「チョコザップ」 を取り上げます。

チョコザップは様々な顧客ニーズに応える多彩なメニュー提供を通じて、お客さんの 「◯◯ をしたい」 という思いを叶えることで、会員数を増やしています。

顧客獲得への秘訣を、ぜひ一緒に紐解いていきましょう。

チョコザップ



コンビニジム


chocoZAP (チョコザップ) は、ライザップが展開するトレーニングジムです。チョコザップのことをコンビニジムと表現し、間口の狭い店内にトレーニングマシンが約数十台ほどある小規模ジムです。

チョコザップの特徴はスタッフがいない完全無人営業という運営にあります。運動後に汗を流すシャワーもありません。一見すると不便なように見えますが、運動用のシューズやウェアが不要で、手ぶらで利用できる気軽さがあります。

運動トレーニング以外のメニューが豊富なのもチョコザップの特徴です。たとえばセルフでの脱毛やネイル、他には歯のセルフホワイトニングも用意されています。

チョコザップの料金は、月額2980円 (税込3278円) で24時間365日通い放題。コンビニジムという位置づけで、1日5分の 「ちょいトレ習慣」 を打ち出しています。

開業1年超で会員数が業界首位に


チョコザップの会員数の増加スピードは驚異的な早さです。


チョコザップは事業を開始して13ヶ月目にあたる2023年8月に、会員数80万人を突破し日本一利用者の多いフィットネスジムになりました。翌月の9月下旬には店舗数1000店を達成しています。

さらに2023年11月の決算発表では、会員数は101万人に上り、全国40都道府県に1160店を展開していると発表されました。その後は店舗数は全国44都道府県で1333店 (2024年2月14日時点) に達しています (参考記事) 。チョコザップは開業してわずかな期間で、業界の勢力図を一変させたのです。

総合型ジムと一線を画すチョコザップのコンセプト


チョコザップはコンセプトがわかりやすいです。

チョコザップは 「来店して5秒で開始、5分で終える」 という気軽さとわかりやすさを打ち出しています。隙間時間を効率よく使って鍛えるというコンセプトが、時間への価値を重視する 「タイパ (タイムパフォーマンス) 」 のトレンドに合致したのでしょう。

チョコザップと総合型ジムを比較すると、チョコザップのユニークさが見えてきます。

総合型のジムは施設が広く、シャワー、スタジオ、プールなど設備が豊富です。インストラクターが直接指導する運動プログラムも充実しています。利用料は、都市部の総合型ジムは月額1万円以上の店舗が目立ちます。

一方のチョコザップは月額は3千円台とリーズナブルです。チョコザップは1人で隙間時間にトレーニングしたいサラリーマンや主婦、子育てでなかなか時間がとれないママやパパが主なターゲット顧客でしょう。

それに対して総合型ジムの主要な客層は、トレーニング機器で本格的に運動をしたい人、トレーナーや利用者とのコミュニケーションを重視している人で、チョコザップのメインユーザー層とは明らかに異なります。


お客さんを増やす秘訣


チョコザップで注目したいのは、運動以外のメニューが充実していることです。

運動メニュー以外も充実



個室でのセルフエステやセルフ脱毛は、大手サロン店が導入している本格マシンが用意されています。

他にはセルフネイル、歯のセルフホワイトニング、マッサージチェア、ピラティス、ゴルフの打ちっぱなし、カラオケ、ランドリー、さらには運動をしながら仕事ができるデスクバイク、ワークスペースへセルフカフェまであります。

チョコザップでは運動ではなく、エステやリモートワーク、コーヒーやマッサージチェアの利用でリラックスするだけという使い方もできます。

想起や来店のきっかけを多く持つ


チョコザップが運動以外のメニューを多く取り揃えていることについて、マーケティングの観点で捉えると 「チョコザップへ行くきっかけ」 を多く提供しているということです。

通常の運動ジムであれば運動をしにいったり、トレーナーや会員同士でのコミュニケーションが来店動機になりますが、チョコザップは運動以外でも利用機会を用意しています。

それによって新しい見込み客や既存会員の人も、たとえば次のようなお客さんそれぞれの文脈やシチュエーションで、チョコザップが受け皿になります。

  • 指先の爪を見てきれいにしたいと思ったとき
  • 歯のホワイトニングに興味を持ってやってみたいと思った
  • 肩こりをやわらげたい
  • ゴルフの練習をしたい
  • オフィスでも自宅でもない別の場所でパソコンで少し仕事をしたい
  • ちょっとコーヒーを飲んで気分転換や休憩をしたい

こうした 「◯◯ をしたい」 と思ってチョコザップのことを思い出してもらえ、チョコザップに行くという流れにおいて、◯◯ に入るシチュエーションを多くチョコザップは持っているわけです。

これが意味するのは、チョコザップのことをさまざまな顧客文脈において想起してもらえるチャンスが、一般的なジムに比べてチョコザップには豊富にあるということです。

顧客文脈でどれだけ接点があるか


お客さんを増やすためには、多くの想起や利用の機会を持っているか、打ち出しているかです。

マーケティングの専門用語で 「カテゴリーエントリーポイント (CEP: Category entry point) 」 と言いますが、エントリーポイントという "入口" がたくさんあるほど、心理的または物理的な顧客接点が増えます。

もう少しマーケティング用語を続けると、チョコザップは 「メンタルアベイラビリティ」 と 「フィジカルアベイラビリティ」 の重要性を示しています。

メンタルアベイラビリティとは、どれだけの “思い出してもらいやすさ” があるか、フィジカルアベイラビリティは、いつものお店に売っていたり商品棚の目立つところに置かれているなど “商品の見つけやすさ・買いやすさ” です。

お客さんを増やすためにカギを握るのは、商品がどれだけ多くの顧客文脈で想起され、利用できる環境をつくっているかです。

すなわち顧客文脈という 「◯◯ をしたい」 となったときに、自社商品やサービスが一丁目一番地として頭の中に思い浮かび (メンタルアベイラビリティ) 、お店やウェブサイトに行け、買いやすいこと (フィジカルアベイラビリティ) があることです。


まとめ


今回はコンビニジムのチョコザップを取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • チョコザップは運動だけでなく、セルフエステや脱毛、ネイル、ホワイトニング、ゴルフの打ちっぱなし、カラオケ、リモートワークができる設備など多彩なメニューを提供している

  • 運動以外のメニューを充実させることで、多様な顧客ニーズに対応し、チョコザップの利用機会を増やす。お客さんが 「◯◯ をしたい」 と思った瞬間にチョコザップを選ぶきっかけになる

  • 顧客獲得のためには、お客さんが特定のニーズやシチュエーションで自社のサービスの存在感を高めることが大事。多くのエントリーポイントを提供し顧客接点を増やし、各接点 (エントリーポイント) でお客さんから思い出されやすく、買いやすい・利用できる状況を提供する


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。