投稿日 2024/05/24

八代目儀兵衛の 「U-5 農家」 支援。将来の事業資産に投資する重要性

#マーケティング #ビジネスパートナー支援 #事業資産

今回は、京都の老舗米屋の 「八代目儀兵衛」 のユニークな取り組みから、ビジネスに私たちが学べることを考察します。

長い目で 「事業資産」 に投資をし、将来の競争優位性の構築や成長のために今何をするべきか。この観点で掘り下げていきます。

八代目儀兵衛が U-5 農家を応援


橋本儀兵衛社長 (左) と U-5 部門最優秀賞の白井涼輔氏 (出典: 日経

お米の販売や企業への助言を手掛ける京都の八代目儀兵衛が、新人農家の応援に力を入れています。

1月24日に東京都内で主催した 「お米番付第10回大会」 で、今回はじめて新設されたのが就農5年目以下の部門 「U-5」 でした。この大会では、審査員が実際にお米を食べ、甘さ・のどごし・ツヤなど独自の7つの指標にもとづいておいしいお米の生産者を選び表彰します。

U-5 を新しく設けた狙いについて、八代目儀兵衛は次のように説明しています。

 「米の未来を支える新規就農者を精いっぱい支援する」 。八代目儀兵衛の橋本儀兵衛社長は、就農して間もない農家を対象にした賞を設けた理由についてこう説明した。「イベントが10回目を迎えたこともあって新しい風を吹かせたかった」 との思いもあったという。

学べること


では八代目儀兵衛の取り組みの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

八代目儀兵衛の U-5 の意味合い


八代目儀兵衛の取り組みは、新進気鋭の農家を発掘し、育成することによって、将来の食文化と農業経済に貢献するという長期的な視野の重要性を示しています。

では、八代目儀兵衛がやっていることを抽象化し、一般的な会社関係に当てはめるとどうなるでしょうか?

創業して間もない企業やベンチャー企業の支援を会社として行い、将来的な取引先の芽を育てるということです。

一見すると、新しく創業したばかりの 「ぽっと出のような会社」 に自社の資源を割り当てるのは、リスクが伴うように思えます。しかし、八代目儀兵衛の事例が示すように、こうした支援は将来の成長ポテンシャルへの投資と見なすことができます。

新たなビジネスの関係を今からの早いうちに築くことで、新しいアイデア、技術、製品が得られたり実現する可能性が生まれるでしょう。既存のビジネスモデルや市場に新しい風を吹き込み、競争優位を確保することにもつながります。

業界を牽引し活性化させる


さらには業界全体のイノベーションの促進にもなるでしょう。

新規参入者への支援は、単にその企業が提供する製品やサービスの質を高めるだけでなく、業界全体のスタンダードを引き上げる効果が期待できます。新規プレイヤーが成功すれば、将来的には強力なビジネスパートナーとなってもらえ、さらなるビジネスチャンスを生み出す可能性もあるわけです。

新しい取引先やビジネス関係の積極的な開拓は、持続可能な成長と変化を促進する上で不可欠です。

こうして見てみると、八代目儀兵衛の取り組みにおいては、新しい農家への支援は単に優秀なお米を表彰すること以上の意味を持ちます。農業という産業の持続可能性を高め、新しい世代の生産者を育てるという長期的な視点にもとづいています。

ビジネスにおいても、新しい関係を築くことは、新たな市場へのアクセス、技術革新、さらには企業文化の活性化を促すこともできます。

投資し 「事業資産」 を育てる


八代目儀兵衛の取り組みの意味合いを広げて解釈をすれば、新しい取引先や人の開拓を常にやっておくことの重要性を私たちに教えてくれます。

今までの取引先やパートナーとの関係を無下に切り捨てる必要はもちろんありませんが、貪欲に時にはこちらから支援してでも新しい関係性や環境を積極的につくりにいくことが大事です。少し長い目で見て投資と捉え、今のうちから取引先やビジネスパートナーの充実という 「事業資産」 をつくりにいくわけです。

捉え方として強調したいのは、新しい取引先や人材に対する支援は将来への投資であるということです。新しいパートナーを支援し、育成することで、ビジネスエコシステム全体が恩恵を受けるでしょう。

今までの関係を大切にしつつも、新しい環境を積極的につくりにいくことが、持続可能な成長へのカギを握ります。このような長期での視点を持った戦略と活動は、変化する市場環境の中で企業が生き残り、持続的なビジネスを展開していくために必要不可欠なのです。


まとめ


今回は八代目儀兵衛の事例から、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 八代目儀兵衛は就農してまだ間もない農家を発掘し、育成することによって、将来の食文化と農業経済に貢献するという長期的な視野の重要性を示している

  • 新たなビジネスの関係を今から築くことで、新しいアイデア、技術、製品が得られ実現する可能性が生まれる。既存のビジネスモデルや市場に新しい風を吹き込み、競争優位を高められる

  • 新しい取引先や人の開拓を常にやっておくことが大事。長い目で見て投資と捉え、今のうちから取引先やビジネスパートナーの充実という 「事業資産」 をつくっておくといい


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。