同じ商品でも、人によってその値段で買いたいと思うかどうかは変わります。また、同じ人でも以前は買わなかったのに、状況や文脈が変われば、欲しいと思ってもらえることもあるでしょう。
商品が価値があるかどうかは、 誰にとって、どういう状況で、何と比べて魅力的かによって、その答えは大きく変わるのです。
今回は 「顧客文脈」 、「商品の顧客価値」 、そして 「価格」 の関係性について、ユニークなキャンプ用の食品の事例から、学びを深めていきましょう。
商品価値とは
マーケティングにおける商品の価値とは、商品に元からある特性だけではなく、それを受け取ったお客さんが感じ取る価値のことを指します。
たとえば、あるお客さんにとっては1000円でも価値を感じづらい商品でも、別のお客さんにとっては1万円を払ってでも欲しい商品であることがあります。
では商品の価値について、具体的な事例から掘り下げていきましょう。
アウトドアスパイスほりにしプレミアム (事例)
出典: Makuake
Makuake で人気を呼んだ 「アウトドアスパイスほりにしプレミアム」 は、どんな食材にもマッチするオールマイティスパイスです。
Makuake で約5,000万円の売上を記録しました (Makuake はこちら) 。その価格は調味料としては破格の1,500円台 (一般販売価格) でした。
ほりにしプレミアムは 「どんな食材にもマッチすること」 を謳っています。これは商品がもたらすメリットです。
しかし、様々な食材に味付けができるという点は、似たようなメリットを訴求する競合調味料が存在し、それらとの価格競争に巻き込まれる可能性があります。
価値の再定義
ここで重要になるのが 「価値の再定義」 です。
商品を使うことでの 「メリット」 に 「ターゲット」 という概念をかけ合わせることで、ターゲット顧客にどんな 「顧客価値」 を感じてもらえる商品なのかを再解釈することが、価値を再定義するということです。
ほりにしプレミアムは、アウトドアファンというターゲット顧客を設定することで、 「どんな食材にもマッチする」 というメリットを 「キャンプにたくさんの調味料を持っていく煩わしさからの解放される」 という価値へと昇華させました。
キャンプでおいしい食事にするために、様々な調味料を買い揃えるのには手間がかかり、複数の調味料を毎回準備しキャンプに持っていく労力は、アウトドア好きな人たちにとっては潜在的な不満になっていたことでしょう。
ほりにしプレミアムは1500円以上の値段でしたが、これ1つで済み、キャンプで 「どんな食材にもマッチする」 という価値は値段以上のものだったのです。
ちなみに、アウトドアファンをターゲットにしたほりにしの商品シリーズは 「アウトドアスパイス」 というネーミングで商標権を取得しています。他社が謳えない独自の新カテゴリーを商標として確立している点も注目したいです。
学べること
では、「アウトドアスパイスほりにしプレミアム」 の事例から学べることを掘り下げていきましょう。
学びを一般化すると、価値をどう捉えるかに示唆があります。
価値とは相対的
価値について押さえておきたいポイントは、価値は相対的であるということです。
相対的とは、「誰が」 、「どういう状況で」 、「何と比べるか (頭の中の他の選択肢) 」 によって変わるということです。
ほりにしプレミアムの例では、スパイスをもし家庭でのキッチンで利用するという文脈であれば、「どんな食材にもマッチしこれ一本で OK 」 という訴求には1500円以上の価値にはならなかったことでしょう。
一方で顧客文脈がキャンプでの調理となれば、ほりにしプレミアムのコンセプトの魅力が最大限に価値として発揮されます。その結果、1500円を超える破格とも言える値段でも人気になるという WTP (Willing to pay: その値段でも買いたい意向) が成立したわけです。
顧客文脈と価値と価格
汎用的な学びとして整理をすると、次の3つがつながり、さもストーリーのようにきれいに流れていくことが大事です。
- 顧客文脈
- 商品の顧客価値
- 価値に見合う価格
まずは、お客さんの置かれた状況やシチュエーション、利用シーン、課題感、望みや不満などのバックグラウンドが 「顧客文脈」 としてあります。
そうした顧客文脈にフィットしたベネフィット、すなわち商品を使ったり保有することで得られる 「顧客価値」 がもたらされ、価値に見合う価格であれば、人は 「買いたい」 という気持ちになるのです。
まとめ
今回は 「アウトドアスパイスほりにしプレミアム」 の事例から、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 商品の価値は相対的。「誰が」 、「どういう状況で」 、「何と比べるか (頭の中の他の選択肢) 」 によってお客さんにとっての商品の価値が変わる。価値はお客さんの置かれた状況や比較基準などの顧客文脈によって決まる
- たとえば、「アウトドアスパイスほりにしプレミアム」 の価値は、キャンプでの食事という特定の顧客文脈で最大限に発揮され、高価格でも購入意欲 (WTP) が生まれた
- 顧客文脈、商品の顧客価値、価値に見合う価格の3つが連動することで、マーケティングでビジネスの成功に貢献できるストーリーになる
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