投稿日 2024/06/19

HIS 「海鮮バイキングいろは」 。既存事業と新規事業の異業種連携で相乗効果を生む方法

#マーケティング #新規事業 #相乗効果

新規事業を立ち上げる際、既存の事業をどのように活かせばいいのでしょうか?
既存事業との相乗効果を生み出すためにはどうすればいいでしょうか?

今回は HIS が展開する飲食店 「海鮮バイキングいろは」 の事例を通して、事業を 「点」 ではなく 「線」 で結びつける重要性と、異なる事業間でシナジーを生み出す方法を解き明かします。

海鮮バイキング いろは



旅行業を主力事業とする HIS が、豊洲の新しい観光施設 「千客万来」 に海鮮バイキング 「いろは」 を開業しました。

バイキングのメニュー


いろはでは豊洲市場で仕入れたマグロやカニなどの海鮮バイキングを提供します。

目玉はマグロの解体ショーで、解体したマグロの刺し身の他に、本ズワイガニを含む50 ~ 60種類程度の料理が食べ放題です。店内は約130席で、国内外の団体客にも対応します。

プレオープンとなった1月30日に千客万来を訪ねると、国内外から大勢の客が訪れていた。いろはにはベビーカーを押す家族連れの姿が目立った。都内在住の40代の女性は 「マグロ目当てで来たが、カニも1年分くらい食べた。全体的に広々としていて駅から近く、子供連れでも来やすい」 と満足げだった。

開業の背景と狙い


海鮮バイキングの 「いろは」 は、HIS の飲食事業での最大規模の店舗です。

HIS は新型コロナ禍の2020年10月に飲食事業への参入を果たしました。旅行業界はコロナで大きな打撃を受け、HIS にとって旅行だけに頼らない経営を模索した1つの事業が飲食だったわけです。

HIS は旅行業からの多角化を図り、2023年になってからの訪日客増加の流れを受けて、観光客向けサービスも強化しています。インバウンド市場の成長を背景に、訪日客向けツアーを通じて観光客を海鮮バイキングの 「いろは」 に送客し、飲食事業の成長を狙っています。


学べること


HIS の事例から学べるのは、既存事業と新規事業での相乗効果の生み出し方です。それぞれの事業を 「点」 としてではなく、複数の事業を 「線」 で結びつける視点の重要性です。

観光サービスからの送客を狙う


HIS が飲食事業への進出を決めた背景は、新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けた旅行業界の中で、HIS は旅行だけに依存しない経営を模索したことでした。

注目したいのは、単に新しいビジネスに挑戦するのでなく、新規事業が既存の旅行事業との連携を狙った点です。

豊洲の新たな観光スポット 「千客万来」 の中に HIS が開業した海鮮バイキング 「いろは」 は、訪日外国人観光客を含む観光需要をターゲットにしており、旅行業としての HIS の既存ビジネスと相性が良いでしょう。

観光客を送客することで飲食事業への集客につなげる、または逆の流れの 「いろは」 の来店客に旅行・観光サービスを展開するなど、旅行業と飲食事業の双方への恩恵が期待できます。

新しいビジネスを既存事業との相乗効果を出す


HIS は新規ビジネスである飲食事業においても、旅行業で培ったノウハウや資源を活かせます。

たとえば、海鮮バイキング 「いろは」 の設立にあたっては、豊洲市場で仕入れた新鮮な海鮮を提供することで食材の質を高め、さらにはマグロの解体ショーというエンターテイメント性の高い企画を加えることで、来店客に特別な体験を提供します。

HIS がこうした展開が実現できるのは、「いろは」 の開業前に2020年から飲食事業をやっていたこと、もともとの旅行業で 「人に楽しんでもらうノウハウ」 が HIS にはあるからです。

このように、新しいビジネスを立ち上げる際には、既存事業の強みやリソースを最大限に活用し、相乗効果を生み出すことが重要です。

 「点」 ではなく 「線」 で結びつける


相乗効果を起こすことを別の視点で捉えると、1つ1つの 「点」 をつなげ、単一の事業を点ではなく、複数の事業を 「線」 で結びつけるということです。

今回の HIS の事例では、飲食事業と旅行事業の間に直接的な連携を図り、異なる事業間で顧客基盤を共有できます。これをお客さんの立場になって捉えれば、お客さんにとっては1つのサービスから別のサービスへと自然に流れるような体験になるでしょう。

HIS の海鮮バイキング 「いろは」 から学べるのは、新しいビジネスを成功させるためには、既存の事業との関連性を見出し、それらを有機的に結びつけることの重要性です。

そして、ビジネス間のシナジーがあることで、お客さんにとって魅力のある価値になっていることが大切です。HIS の事例は、変化する市場環境の中で事業多角化を進める企業にとって、参考になるモデルです。


まとめ


今回は HIS が展開する 「海鮮バイキング いろは」 の事例から、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • HIS の事例からは、既存事業と新規事業の間で相乗効果を起こし、1つ1つの事業を 「点」 で独立させるのではなく、大きく見て 「線」 で結びつけることの大切さを学べる

  • HIS が新たに開業した 「海鮮バイキング いろは」 は、観光施設での飲食事業なので、HIS の主力既存事業の旅行業と連携できる。旅行業と飲食業で顧客基盤を共有し、お客さんを送客し合うことで双方に恩恵をもたらす


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。