投稿日 2024/06/23

リテールシェフレストラン。インターナルとエクスターナルマーケティングの融合でビジネスを加速

#マーケティング #顧客接点 #インターナルマーケティングとエクスターナルマーケティング

自社のビジネスでは、お客さんとの 「直接の接点を増やす打ち手」 をとっているでしょうか?

今回は小売の会社が開催したユニークなレストランイベントを取り上げます。

顧客接点をつくる重要性、インターナルマーケティングとエクスターナルマーケティングの相乗効果を生む秘訣を紐解きます。

リテールシェフレストラン


出典: 日経

マルエツなどの食品スーパーを運営するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス (USMH) が、調理スキルを持つ社内人材の育成に力を入れています。

小売の従業員がコースメニューを提供


2024年2月上旬に会社として初めて、社員が一般のお客さんに料理を振る舞う1日限りのレストランとなる 「リテールシェフレストラン」 を開きました (参考記事) 。

午前と午後の二部制で、マルエツやカスミの利用客の中から抽選で選ばれた約20人が招待されました。

コースメニューを作ったのは、USMH の研修制度を利用して約1年半にわたって調理スキルや食卓提案を学んだ6人の社員です。2人ずつ合計3チームに分かれて料理を提供しました。

メニュー開発から担当し、前菜、メインディッシュ、デザートまでです。料理の中には様々なスパイスを活用したメニュー、食物繊維が豊富な食材を使った腸活メニューなど、各チームごとに趣向を凝らした食事が振る舞われました。

開催する意義


ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの研修プログラムを企画する経営企画本部の担当者は、次のようにコメントをしています。

 「顧客の顔が見える状況で食事を提供する経験は何にも代えがたい。例えば、だしの取り方を知っているかどうかで、売り場の作り方も変わってくる。顧客の発見につながるような提案型の売り場作りに生かしてほしい」 


学べること


では、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの 「リテールシェフレストラン」 の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

リテールシェフレストランの事例から学べるのは、ビジネスにおいて直接の顧客接点をつくることの重要性です。

この事例は顧客接点を起点に、従来の食品スーパーの枠を超えた顧客体験の提供と、社員のスキルアップおよびモチベーション向上を同時に目指した取り組みとして注目に値します。

顧客接点の創出


まずは、イベント化による顧客接点の創出について見てみましょう。

リテールシェフレストランでは、1日限定のレストラン運営を通じて、お客さんと対話できる機会を設けました。

この直接的な顧客接点は、お客さんからのニーズ、話をしたり調理をした食事メニューを食べてもらっての素直な反応をダイレクトに捉えることができます。そうした目の前のお客さんからのフィードバックは、商品開発や売場づくりにも反映させる貴重なインプットとなります。

顧客接点の創出を 「リテールシェフレストラン」 というイベントにすることで、従業員と顧客の双方にとって印象や記憶に残る特別感のある体験となったことでしょう。

インターナルマーケティングとエクスターナルマーケティングの相乗効果


リテールシェフレストランは、インターナルマーケティングとエクスターナルマーケティングの相乗効果という観点からも学びが得られます。

インターナルマーケティング


インターナルマーケティングとは、Internal と書くように内部に向けて行うマーケティングです。

1日限定のこのレストランでは、6人の社員が2人ずつ3チームに分かれ、前菜からデザートまで様々な料理を提供しました。

1日だけとはいえ、お客さんの顔が見える状況で食事を提供することによって、普段の業務では獲得できない貴重な経験になったことでしょう。社員自身が働く意味合い、お客さんに喜んでほしい気持ちなど、社員の前向きな態度変容、さらには仕事のやり方への行動変容が起こることが期待できます。

社員を 「社内のお客さん」 と見立てれば、リテールシェフレストランは社内に向けたインターナルマーケティングと見ることができます。

エクスターナルマーケティング


一方でお客さんに対しては、限定レストランでその日限りの特別な食事体験を提供することで、エクスターナルマーケティングが実現します (エクスターナルは External で “外部” の意味) 。

このようにインターナルとエクスターナルの2つのアプローチが相まって、従業員のモチベーションや能力の向上と同時に、顧客満足度への貢献にもつながっているのです。

学びのまとめ


それでは最後に、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの 「リテールシェフレストラン」 の事例から学べることをまとめてみましょう。

ビジネスにおいて直接的な顧客接点をつくり、顧客接点を通じて得られるお客さんへの洞察を商品開発やサービス提供に活かすことの重要性です。

また、従業員の動機や能力開発を促すインターナルマーケティング、顧客サービスの質を高めるエクスターナルマーケティングは、両方を展開することで相乗効果を生み出せる点も重要です。

このような取り組みは、顧客満足度の向上、ブランド資産の強化、そして最終的にはビジネスの持続的な成長に貢献します。

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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。