自社のマーケティングが本当に成功していると言えるでしょうか?
それとも、何かが足りないと感じていないでしょうか?
実は見落としてしまっている基本的な 「問いかけ」 に立ち返ることで、効果的なマーケティングを展開でき、ビジネスを成功へ導くことができます。
今回は、マーケティングの基本に戻り、理解を深め、最後に 「マーケティング」 をどのように実践するかを解説します。
「顧客は誰か?」
売りたい商品があっても、それを必要としているお客さんがいなければ、売ることはできません。
マーケティングの第一歩は 「お客さんが誰かをはっきりさせること」 です。これができていないと、どんなにすばらしい商品を持っていても、それを買ってはもらえないでしょう。
「顧客は誰か」 という問いかけは、あらゆるビジネスに当てはまります。自分たちのビジネスがどういうものかを知るために良い方法は、「顧客は誰か」 という問いを投げかけることです。
具体的には、
- 最初のお客さんは誰だったのか
- その後にお客さんになってくれた人は誰か
- 長くお客さんであり続けてくれている人は誰か
- 将来の潜在的な見込み客は誰か
- 過去にお客さんだったが、今は離れていってしまった人は誰か
ひとくくりにお客さんとせずに、自社のお客さんの解像度を高めるほど、それはすなわち自社のビジネスの特徴を知ることにつながります。
お客さんは誰かを決めることはマーケティングの成功のカギを握ります。マーケティングの目的があり、目的を達成するための戦略を立て、戦略から施策を実行し展開していくにあたって、最初にはっきりさせるべきなのは 「自分たちのお客さんは誰か」 なのです。
マーケティングとは
あらためてマーケティングとは何でしょうか?
ここで 「マーケティングとは何か」 を言語化しておきましょう。
マーケティングについては、様々な方が色々な表現をされていますが、ここでは私自身のマーケティングの定義を紹介させてください。マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。活動全般と言っているように、マーケティングを広く捉えています。
お客さんに選ばれるとは、商品を買ってもらえる、使ってもらえる、来店してくれる、指名されることです。こうした行為への 「選ばれる理由」 をつくり商品やサービスがお客さんから選ばれ続けることによって、商品は生き残っていけます。ひいては自分たちのビジネスも存続できます。
お客さんから自分たちが選ばれるのを偶然に頼るのではなく、ビジネスの文脈では自社商品やサービスが意図的に選ばれる確率を高めるのがマーケティングの役割です。
選ぶという行為の主体者はお客さんです。誰に、なぜ選ばれるのかを解像度高く理解することが重要になります。そのために一番初めにくるのが 「顧客は誰か?」 という問いなのです。
以上のようにマーケティングを捉えると、マーケティングは専門化された機能にとどまらず全社的に関わる活動です。マーケティング活動をするのはマーケティング部だけではなく、マーケティングへはマーケティング部以外の企業内のあらゆる人が関わり、かつ実践したい考え方とスキルなのです。
先ほど、マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 と定義しましたが、「活動全般」 と表現にしたのは、マーケティングは社内の一部門だけでやるのではなく、会社全体で取り組む活動という意味を込めてのことです。
マーケティング活動の全体像
では次に、マーケティング活動の全体像について見ていきましょう。
次のようになります。
✓ マーケティング活動の全体像
- お客さんを決める
- そのお客さんのことを理解する
- お客さんが抱えている困りごとを見つける
- 困りごとを解決する商品を用意する (なければつくる)
- お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
- お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
- お客さんに他ではなく自社商品を選んでもらえる状態をつくる
では順番に見ていきましょう。
[Step 1] お客さんを決める
最初のステップは、ターゲットとなるお客さんを明確に定めることです。誰を顧客とするかを決めることで、その後のマーケティング戦略がより具体的かつ効果的なものになります。
たとえば、ファッション商品では若者をお客さんに決める、健康食品では高齢者を対象にするというように、自社商品のお客さんに最もなってほしい顧客層を見極めます。
[Step 2] お客さんのことを理解する
誰がお客さんかを決めたら、次はその見込み顧客がどのような人々 (または企業) で、何を望み、どのような生活をしているのかを深く理解することが求められます。これには市場調査が欠かせません。
調査を通じて顧客の年齢層、性別、職業、趣味、ライフスタイル、好き嫌い、望んでいること、ものの考え方や価値観などの情報を集め、お客さんの行動パターンや心理を把握します。
[Step 3] お客さんが抱えている困りごとを見つける
お客さんへの理解を深める過程で、どのような問題や困りごとを抱えているかを特定していきます。
マーケティングでは、これをお客さんが痛みを抱えている状況と捉え 「ペインポイント」 と呼ぶこともあります。
ペインポイントを商品やサービスによって解決すべき主要な問題点とみなします。たとえば、日々忙しく時間がなく、特に平日は健康的な食事を満足にとる時間が確保できないというビジネスパーソンの困りごとを見つけます。
[Step 4] 困りごとを解決する商品を用意する (なければつくる)
お客さんの生活やビジネスシーンの中で問題を明らかにした後は、それを解決するための具体的な商品やサービスを用意します。
たとえば、お客さんが時間がないことを問題としている場合、速く便利で、かつ見栄えのよい食品や時短を助ける家電が解決策となるでしょう。
既存の自社製品で解決できそうになければ、新たにつくります。商品開発では、困りごとを解決できる技術的な実現可能性、開発や販売にどれくらいお金がかかるかのコスト面、市場での競合する製品との競争力など、多角的な視点から検討を進めます。
[Step 5] お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
商品が用意できたら、見込み顧客に知ってもらい、興味を持ってもらえ、購入への後押しをします。マーケティングでの代表的な活動は広告や販売促進 (プロモーション) です。
この段階では、ウェブやテレビ等での広告、公式ウェブサイト、SNS 、著名人やインフルエンサーとのコラボレーション、広報、イベントの開催など、多様な方法と顧客接点を通じて情報を発信します。
大切なのは、商品の特徴やお客さんにとってのメリットをわかりやすく伝え、相手が商品を自分ごと化でき、その価値にお金を払ってでもほしいと思ってもらえることです。
[Step 6] お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
自社商品を購入してもらうことはゴールではなく、むしろスタートです。お客さんが実際に商品を使ってみて困りごとを解決でき、それによって商品価値を実感することです。
売り手にとっては商品を売って終わりにせず、その後の利用まで見届け、商品の存在や顧客体験に満足してもらうことが重要です。
[Step 7] お客さんに他ではなく自社商品を選んでもらえる状態をつくる
マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 でした。
お客さんから選ばれるのを一度きりにせず、選ばれ続けることが重要です。長期的な顧客関係を築くためには、継続的にお客さんとの接点を持つことが大事です。たとえば買ってもらう前だけではなく、購入後のアフターサービスの充実、お客さんの声を反映した商品の改善などのコミュニケーションを行うことが有効です。
選ばれ続けるには、お客さんが他社の商品ではなく、継続して自社の商品を選ぶような状況を目指します。お客さんにとって代替ができないような独自の価値を提供し続けることがカギを握ります。
顧客不在の事業活動が行き着くところ
ここまでマーケティング活動の全体像を見てきました。
マーケティングで起点になるのは 「顧客は誰か?」 です。お客さんを中心に据えて、マーケティングを展開していくことが理想です。
しかし、その逆であるお客さんのことを見ない、お客さんではなく単に自社都合のビジネス活動になると、どのような状況に陥るのでしょうか? 「顧客不在のビジネス活動」 について、反面教師として見ておきましょう。
結論として、次のような流れが起こります。
✓ 顧客不在の事業活動
- 自分たちのお客さんは誰かが明確ではない (顧客設定がされていない)
- お客さんのことを理解できない
- お客さんに響く価値が何かわからないので、他にはない魅力的な価値を生み出せない
- お客さんの 「欲しい」 「買いたい」 気持ちをつくれない
- お客さんに買ってもらえず、売れない
逆の下からたどれば、自社商品やサービスが売れないという結果として起こる事象は、根っこにある顧客定義と顧客理解の問題に行き着くわけです。
売上停滞の要因はもちろん他にもありますが、「顧客は誰か」 が明確ではない状況では遅かれ早かれビジネスは衰退していくでしょう。
マーケティングを実践してみよう
冒頭でお伝えしたメッセージは、「誰をお客さんに決めるかが最初にやること」 でした。
では今回の学びを実践するために、マーケティングのことを日常生活や仕事に取り入れると、何ができるかを考えてみましょう。
たとえば、
- 企画書や報告書を書くときは、「この人」 と特定のだれか一人に決め、その人に向けて作成する (例: 上司の上司, 記載内容の前提知識が最も少ない人)
- 会議で報告をするときは、だれか特定の一人を聞き手に決め発表する
この場合の 「お客さん」 は何かを買ってくれる人ではなく、あなたの企画書や報告書などの成果物、会議で伝えたい内容を聞いてほしい相手になります。そしてあなたの成果物や会議で話す内容が 「商品」 です。
「お客さんを誰にするか」 とは、たとえば報告書などの成果物を自分の部署だけではなく他部署など複数いる場合は、「この人」 と誰か一人に絞ってみるといいです。
成果物の読み手の全員ではなく、あえて一人の誰か、たとえば 「あなたの上司の上司 (例: 事業部長) 」 と決めて、その人に自分の成果物に入れ込みたい内容を伝えようとするイメージです。あるいは、読み手の中で最も背景や前提知識が少ない人を成果物の 「お客さん」 と設定してもいいでしょう。
成果物を書く前の構成を考えるとき、実際に書いているときに、「この人 (背景や前提知識の少ない人) 」 と誰か一人に決めて成果物をつくると、その本人には伝わりやすいし、実は他の読み手の人たちにもわかりやすい内容になるはずです。
このように、マーケティングとは直接関係しない仕事においても 「今からやろうとしていることは、誰が “お客さん” なのか?」 を意識して考えて決めてみてください!
まとめ
今回は、マーケティングの基本のところをあらためて整理する回でした。基本的かつ最重要と言っていい部分です。
最後にポイントをまとめておきます。
✓ 「顧客は誰か?」 を決める重要性
- お客さんが誰かを明確にすることはマーケティングの出発点
- マーケティングの目的、目的を達成するための戦略を立て、戦略から施策を実行していくにあたって、商品やサービスが 「誰に必要とされるか」 を見極める
- 適切な顧客層を定めることが成功のカギを握る
✓ マーケティングの本質 (定義)
- マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」
- 選ぶという行為の主体者はお客さん。誰に、なぜ選ばれるのかを解像度高く理解することが重要
- マーケティングは専門化された機能にとどまらず全社的に関わる活動。マーケティングにはマーケティング部以外の企業内のあらゆる人が関わり、かつ実践したい考え方とスキル
✓ マーケティング活動の全体像
- お客さんを決める
- そのお客さんのことを理解する
- お客さんが抱えている困りごとを見つける
- 困りごとを解決する商品を用意する (なければつくる)
- お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
- お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
- お客さんに他ではなく自社商品を選んでもらえる状態をつくる
✓ 顧客不在の事業活動で行き着くところ
- 自分たちのお客さんは誰かが明確ではない (顧客設定がされていない) と、お客さんのことを理解できない
- お客さんに響くポイントがわからないので、他にはない魅力的な価値を生み出せない
- お客さんの 「欲しい」 「買いたい」 という気持ちをつくれない。その結果、お客さんに買ってもらえず、売れない
✓ マーケティングを実践してみよう
- 企画書や報告書は 「この人」 と特定のだれか一人に決め、その人に向けて作成する。たとえば、上司の上司、記載内容の前提知識が最も少ない人
- 会議で報告をするときは、だれか特定の一人を聞き手に決め発表する
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