投稿日 2024/06/13

異文化で彩る BENTO 。新しい顧客文脈を捉えての商品価値の再定義と顧客開拓

#マーケティング #顧客文脈 #顧客価値

日本人には馴染みのあるお弁当が、外国人観光客や在日外国人、海外でも 「BENTO」 として注目を集めています。

私たちはこの現象から、どんなことが学べるでしょうか?

この事例から、自社のビジネスが持つ潜在的な価値と、未開拓の顧客層へのアプローチ方法について、新たな視点を得ることができます。商品やサービスの意味合いを再解釈し、ビジネスの成長を加速させるヒントを探っていきましょう。

発想多彩な BENTO


出典: 日経

日本のお弁当が、世界では BENTO として人気を呼んでいます。

訪日外国人に人気に


ある日本の旅行サイトでは 「Bento Making Class」 を紹介し、インバウンド (訪日外国人) 客の中には、お弁当作り体験を旅行の目玉とする人たちもいたり、あるいは日本に住んでいる外国人も楽しんでいるようです。

 「すっごくかわいい!」 1月、オランダ出身の留学生マックスさん (19) はキャラ弁作りの体験教室に参加していた。メインはくちなし由来の着色料で黄色に染めた米を使ったピカチュウ。「ピカチュウがハッピーに見えるように」 と集中して作業を進めていく。

主催するのはインバウンド向けに文化体験などを提供する True Japan Tour (東京・港) だ。キャラ弁作りの教室は1月に本格的に始めた。「今は幅広い日本食が世界で受け入れられている。次はお弁当が人気になると思っています」 と担当者は語る。

おかず作りにもわくわくする要素を詰め込んだ。タコやカニのウインナーはその1つ。切れ込みを入れたソーセージをお湯に入れて足部分が反り返ると、わっと歓声が上がる。マックスさんは 「母国の携行食はチーズをパンで挟んだだけでつまらないけど、BENTO は工夫の余地がたくさんあって面白い」 と話す。

海外でも人気


日本にいる外国人だけではなく、海外にいる人にも日本のお弁当は注目されています。

自作の BENTO を Instagram などの SNS で発信する人も世界各国にいて、それぞれの国の文化や食材が色濃く出ています。

インドネシア在住のセンジャディダプルさん (35) は、てんとう虫をイメージした BENTO の写真をアップ。紫の羽は米とドラゴンフルーツの果汁を混ぜて作った。偏食気味の娘用で、「見た目がかわいいと食べてくれる。子どもがおいしそうに食べてくれるのに勝る喜びはないでしょ」 

香港に住む b.for.bento さん (32) はカキと鶏肉の入った BENTO を作った。カキの形は昔の中国の金塊に似ており、鶏肉の発音は中国語で幸運を表す言葉に似ているといい、旧正月向けに縁起の良いお弁当にした。

シンガポールのチェンさん (39) は、バランスの取れた食事を教えるために中身は息子と一緒に考えるそうだ。「BENTO は私たちの国でももっと一般的になると思う」 と話す。

学べること


では今回の BENTO の話から、学べることを掘り下げていきましょう。

普通のものが特別な存在に見える


日本人にとって日常の一部である 「お弁当」 が、外国人からは 「BENTO」 として注目される存在となっている事例は、ビジネスにおいても学びを提供してくれます。

この現象から見えてくるのは、自国の文化や習慣が、外国の異文化の中では新鮮さや独自の価値を持つ可能性があるという点です。

日本のお弁当は、各地域の食材や習慣が反映されたてきた歴史があり、最近ではキャラ弁と言われるようなかわいく美しい見た目にこだわるなど、日本独自の 「お弁当文化」 として発展してきました。

日本のお弁当は日本人の目にはいたって普通のものかもしれないものが、外国人から見れば、その独特の形態、美学、そして日本食への健康的なイメージも相まって、魅力的でユニークな存在に映るわけです。

買い手視点での商品価値


ビジネスの観点から考えると、自社が提供する商品やサービスを、新しい文脈や視点から再解釈することの重要性が浮き彫りになります。

売り手側の文脈としては、自分たちの提供する商品の機能や魅力が何であるかをよく理解しているつもりでも、一方の買い手にとっての自社商品の価値への受け止め方は、全く異なる場合があります。

ビジネスを成長させるために新たな顧客層を開拓することが必要です。そのためには、未顧客というこれから買い手になってくれる人の文脈やニーズに深く理解し、未顧客の立場と視点から商品やサービスの意味合いを見直すことが重要です。

外国人にとっての BENTO の魅力


日本のお弁当に話をつなげると、英語表記での 「BENTO」 が海外や訪日外国人の間で人気を博している背景には、BENTO の多角的な価値が認識されていることがあります。

具体的には、まるでアートのように多様な表現ができる見た目の美しさ、好きな推しキャラクターをお弁当で再現できたり、他には健康的な食べ物になったり、子どもが好き嫌いなく食べられるようになる、使い捨てではない環境に優しい容器などです。

これらは、日本人にとっては言われればそうだと気づきますが、日常ではこのようなお弁当への多面的な価値をあらためて考えることはあまりなく、普通にお弁当を食べているでしょう。

新しい顧客価値の再定義


BENTO の事例は、自社の商品やサービスを異なる文化や市場に参入させていく際に、従来の顧客価値を見直し、異なる視点での価値を探求することの大切さを教えてくれます。

自分たちの提供するものを 「異文化」 の中で再解釈し、その文化や顧客文脈、ニーズに合わせた価値を提供できれば、それまでとは異なるビジネスにできるでしょう。このプロセスは、売り手にとっても自社の商品やサービスに対する深い理解が促され、異なる価値感やニーズを持つ人々にとって価値あるものに再定義する機会をつくります。

ビジネスにおいて重要なのは、提供する価値がお客さんにとって響くものか、どれだけ顧客ニーズや期待を満たすかに他なりません。

日本のお弁当が日本だけではなく世界各地で BENTO として新しい命を吹き込まれ、多様な文化として受け入れられようとしている事例からは、ビジネスにおける視点の転換に学びがあります。今までとは異なる顧客文脈を捉え、顧客価値を再定義することの重要性です。


まとめ


今回は、日本のお弁当が 「BENTO」 として外国人に人気になっている話題を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 日本では日常的な弁当が外国人や海外で 「BENTO」 として新鮮さや独自の価値を持つ事例は、異なる顧客文脈において新しい価値を生み出せる可能性を示唆している

  • ビジネスの成長には新しい顧客を増やすことは不可欠。そのために未顧客の文脈やニーズを深く理解し、買い手の視点で商品やサービスの顧客価値を再解釈・再定義し、お客さんに魅力となるよう提案する


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。