広告キャンペーンの役割が、一過性の注目を集めることになっていないでしょうか?広告からは、お客さんとの長期的な関係構築を目指すことはできないのでしょうか?
デジタルマーケティングのフロンティアとなり得る NFT とデジタルプレイスメント広告の組み合わせが、この疑問に示唆を与えてくれます。
お客さんとの継続的なつながりを築き、広告を一回限りの花火ではなく、長期間輝き続ける灯火へと変える方法がここにあります。
今回は、広告予算を単なる 「費用」 ではなく、お客さんとの関係を深め、ブランドの価値を最大化する 「投資」 へと転換するプロセスを解き明かしていきます。
NFT プレイスメント広告
Web3 事業を展開する SBINFT とデジタル広告事業のガイエが、NFT を活用した 「プレイスメント広告」 を共同開発しました (リリース) 。
プレイスメントとは、広告の文脈ではウェブサイト全体、ウェブサイトの特定のページ、動画内、スマートフォンのアプリの中などの様々な場所 (広告枠) を指します。
新たに開発された NFT を活用するプレイスメント広告では、収録済みの映像の中に AI を使って違和感なく広告画像を入れ込むというものです。ここに NFT を組み合わせた広告商品を表示させます。
プレイスメント広告のユーザー体験
デジタルのプレイスメント広告は、海外では消費者に自然な形で広告を見せる手法として一般的になっていますが、日本ではまだ普及しているとは言えません。
新たに共同開発された NFT も使うプレイスメント広告は、消費者になるべく自然な形で映像内の広告を見てもらうことを目指します。
収録済みの映像を AI を使って解析し、カメラの動きや背景、広告商品が露出される時間も考慮し、違和感なく映像内に広告画像を入れ込むことができます。たとえば、ビルの壁面の屋外広告の中、他には映像の中にポスターが出てきたときに、その中 (プレイスメント) に後付けで広告商品の表示に差し替えられます。
NFT の活用イメージ
さらに、ここに NFT を活用します。
普通なら広告を見て終わりになるところを、広告に接触した人に NFT を配布します。NFT を取得した人には、その後もプレゼントを提供したり、プレゼントが当たる抽選への参加を促します。
もう少し具体的に説明すると、たとえば、まずキャンペーンサイトを作り、サイト訪問者は映像を見たとします。次に、その映像の中に広告ポスターが何回出てきたかをクイズとして出題し、正解できれば特別な NFT がもらえるという仕掛けです。
広告を見て、かつ NFT も入手できることで、広告を見た後の態度変容 (認知, 興味喚起など) 、行動変容 (検索, 来店やサイト訪問, 購入) につなげることを狙うわけです。
学べること
では、NFT を活用したデジタルプレイスメント広告の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
継続的な関係をつくる
NFT とデジタルプレイスメント広告の組み合わせは、一過性のキャンペーンではなく、継続的な顧客関係を築く興味深い方法です。
一般的には広告キャンペーンは、一時的なスポットで終わりがちです。しかし広告に NFT 配布を組み合わせることで、NFT を所有してくれるユーザーに対してキャンペーン後も関係性を持てます。
広告費用から投資へ
また、広告に使う予算が 「費用」 ではなく 「投資」 になるという観点も示唆的です。
キャンペーン的な広告は、その効果も長くは続かないことが一般的です。一方で NFT のプレイスメント広告は、広告施策に使うお金が一過性のもので終わる 「費用」 ではなく、長く効果が蓄積するための 「投資」 に変わります。
ここまでの論点から、広告の新たな可能性が見えてきます。消費者に嫌われずコンテンツの中に自然とある広告を目にし、NFT のようなお客さんとつながれるきっかけを提供し、長い顧客関係をつくれることへの期待です。
一過性のものにせず、継続的なコミュニケーションを展開することで、広告は単なる費用から価値ある投資へと変わり、長い目で見ての効果を生み出すわけです。
普及へのカギ
では最後に、NFT を活用したプレイスメント広告を普及させるためには、どうすればいいかを考えてみましょう。
大きく3つあります。
✓ 消費者の理解と受け入れ
- NFT を使うデジタルプレイスメント広告のような新しい方法は、消費者がその体験のおもしろさや価値を理解し、受け入れることが重要になる
- これには啓蒙や教育的な働きかけが必要で、消費者が新しい技術・方法からの体験価値やメリットを理解でき、受容されるための活動が普及のカギを握る
✓ 法規制とガイドライン
- 新しい技術の導入と普及は、法規制やガイドラインによって影響を受ける
- 適切な法規制・ガイドラインが整備され、企業が安心して新しい技術を導入し活用できる環境が整うことが必要になる
✓ 消費者への安全性向上と技術の進化
- NFT やデジタルプレイスメント広告、特に NFT への安全性も重要な要素
- 今後も技術が進んでいくことが想定され、進化にともなった運用の安定性が実現できれば、企業も消費者も受け入れやすくなる
これらの3つの要素がそろっていくことで、NFT とデジタルプレイスメント広告の組み合わせという新しい広告やキャンペーンの手法は、将来はマーケティングコミュニケーションの1つとして普通のことになっているかもしれません。
まとめ
今回は NFT を活用するデジタルプレイスメント広告に注目し、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- NFT とデジタルプレイスメント広告を組み合わせることで、広告キャンペーンを通じた長期的なコミュニケーションからお客さんとの継続的な関係構築が期待できる
- 消費者とのつながりを深め、広告の価値を最大化できると、広告予算が一過性の 「費用」 ではなく、長期的な効果を生む 「投資」 となる
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