今回のテーマは 「競合と顧客への向き合い方」 です。
ある記事を読んで考えさせられた競合分析の意味合いと、そこから着想を広げてマーケターの役割について掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- 「競合分析は毒」 とは?
- 戦う相手は競合ではなく、向き合うべきは顧客
- マーケターの役割は 「顧客の代理人」
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
戦う相手は競合ではない
こちらの記事を読みました。
キリン改革支えたマーケターの戒め 競合分析は毒にも|日本経済新聞
顧客視点になることの重要性をあらためて教えてくれる記事でした。
記事で書かれているのは、プロクター・アンド・ギャンブル (P&G) 日本法人からキリンに転職し、キリンビバレッジを経て2017年にキリンビールのマーケティング部長に就任した山形氏の考え方です。
山形氏は自身を 「マーケターだと思っていない」 と言う。ヒット商品は作ろうと思っても生まれるものではないと知っているからだ。
P&G で化粧品などを担当していた時代には、週末ごとにドラッグストアに入り浸り、買い物客が手にする商品からその人間像を想像した。そこで感じたことこそが商品に反映されるべきであり、戦うべき相手は競合ではなかった。
現場を知らない会社の経営層は 「マーケティング」 に対して 「NO」 を突きつけるかもしれない。「それでも市場から『GO』の声が聞こえるなら進むべきだ」 と山形氏は語る。
競合分析の落とし穴
この記事のタイトルには 「競合分析は毒」 とあります。
私の解釈は、毒とは競合を意識するあまり、いつしか本当に向き合うべきお客さんを見なくなってしまう競合分析の弊害です。顧客不在の競合分析や競合との差別化を続けることによって、知らず知らずのうちにまるで毒に侵されるように自分たちの顧客を見る力、向き合う力が弱っていくのです。
記事では次のように書かれています。
山形氏は、競合の分析が悪いわけではないが、競合を基準とした商品やサービスづくりにはリスクがあると指摘する。
A 社の商品が100億円売れたなら、当社が後追いすれば50億ほどは売れるだろう。こうした考え方は経営陣に響きやすい一方で、なぜ売れるのかという本質を見失いがちになってしまう。その繰り返しは企業の礎である商品やサービスの開発力を奪い、やがて経営を迷走させる遅効性の毒となる。
では毒にやられないためにはどうすればいいのでしょうか?
向き合うべきは顧客
ビジネスの原点回帰と言えるようなことで、お客さんにしっかりと向き合うことが大事です。
発泡酒や第三のビールでも健康志向で機能系が増えたが、ビールには存在しなかった。おいしさと健康が両立できるなら誰もが望む商品となる。
「キリンにはビールで糖質ゼロを実現する研究開発 (R&D) の力があった。あとは商品を魅力的に感じてもらえるよう、顧客とコミュニケーションを取るだけだった」 と山形氏は言う。
では、どのようにコミュニケーションを取ればいいのか。「そのやり方はお話しできない」 と山形氏はいたずらっぽく語るが、ヒントをくれた。大切なのは 「温度感」 を感じることだという。
要は簡単なことだ。「顧客が何を考えているのか、朝起きてから夜寝るまでの生活を何人にも、何人にも聞いて、その温度感を感覚として持つほかはない」 (山形氏) と言う。そして、街を歩いていても、電車に乗っていても、人間に興味を持って観察を続ける中で太くて大きなニーズの形を探り出す。
学べること
では今回の話から学べることを整理してみましょう。
マーケターは 「顧客の代理人」 であるべきです。
顧客像の具体的な描写、お客さんは何に困っているのか、本当のニーズ、奥にある隠れた不満や望みを理解し社内でお客さんのことを代弁するのがマーケターなのです。
競合を見ることも重要ですが、競合分析や競合との差別化にとらわれすぎると 「顧客不在の差別化競争」 になり、差別化自体が目的化してしまいます。
差別化はあくまで手段です。大事なのは差別化によってお客さんに他では得られない価値を提供し、体感してもらうことです。
だからこそ顧客の代理人であるマーケターはお客さんに向き合い、何が価値なのか、なぜそれを価値に感じるのかを理解しお客さんを主語にして社内に伝えていくことが求められるのです。
まとめ
今回は競合分析をやりすぎることによる弊害と、そこからマーケターの役割を見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
競合分析の落とし穴
- 競合を意識するあまり、いつしか本当に向き合うべきお客を見なくなってしまう
- 顧客不在の競合分析や競合との差別化に注力すると、知らず知らずのうちに、まるで毒のように自分たちの顧客を見る力、向き合う力が弱っていく
マーケターの役割
- マーケターは 「顧客の代理人」 でありたい
- 顧客像の具体的な描写、お客さんの困りごと、本当のニーズ、奥にある隠れた不満や望みを理解し、何が価値なのか、なぜそれを価値に感じるのかを社内で代弁する
- ビジネスの原点回帰で、お客さんにしっかりと向き合おう
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