投稿日 2022/06/27

ワコールのセクシー男性下着 「レースボクサー」 。今までにない商品のマーケティングと売り方


今回のテーマは、市場創造です。

おもしろいと思った男性向けの下着を取り上げ、「今までにない商品をどう売っていき、市場をつくり出すか」 について見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 男性用のセクシーな下着 「レースボクサー」 
  • 今までになかった商品の売り方
  • スモールスタートでのニーズ検証
  • 自らお店に立って接客をし、お客さんを理解する

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

男性用のレース生地の下着


ご紹介したいのは、ワコールの男性下着 「レースボクサー」 です。

出典: ワコール

以下は日経新聞からの引用です。

ワコールが2021年末に発売した 「レースボクサー」 が販売すれば完売という状態が続いている。

フロント部を除く全面に透ける花柄のレースをあしらった大胆な見た目だが、「セクシーだ」 とまとめ買いする人が続出。22年4月の増産分も完売した。
出典: ワコール

レースボクサーの価格は3,960円 (税込) で、カラーバリエーションは5色です。黒以外に、赤、青、茶、水色があります。


今までになかった商品の売り方


男性向けの下着で生地にレースが使われるものは、これまでにはなかったタイプの下着です。

ワコールはどのような売り方をしたのでしょうか?

女性の下着は種類や形が多様だが、男性の下着はウエストのテープ色を変える程度しか選択肢がない。溝口さん (引用者注: 商品営業課長) は 「男性の下着は日用品のようだ。自分のファッションを表現している人が選べる下着を作りたかった」 と強調する。

とはいえ、市場にない商品なだけに展開は慎重に始めた。テストマーケティングの意味を込めて、クラウドファンディングサイト 「Makuake (マクアケ) 」 で21年10月に先行予約を受け付けた。すると目標金額30万円に対して、約700人から320万円の購入があった。

伊勢丹新宿店 (東京・新宿) など3店舗とオンラインで販売を始めると3カ月分が10日で売り切れた。4月にも増産したが、すぐに完売となった。

溝口課長は2月に京都市の百貨店、藤井大丸のポップアップショップの店頭に立った。すると40 ~ 50代とみられる男性が 「セクシーではいてみたい」 と異なる色をまとめ買いしていった。「年齢にかかわらず、新しいもの好きの人が買ってくれた」 (溝口課長) という。

ワコールは最初はクラウドファンディングを立ち上げ、その後は3店舗とオンライン販売で販売チャネルを限定して展開していきました。


学べること


ワコールが 「レースボクサー」 で進めたアプローチは、一言で言えばスモールスタートです。ここには、今までになかった商品・サービスの販売やマーケティングへの学びがあります。

スモールスタートでのニーズ検証


自分たちがいけると信じている商品でも、とりわけ今までにない新しい商品ほどお客さんに良さが伝わるとは限りません。

男性向けのレース生地の下着はまさにこれでした。ワコールは、いきなり大々的なマーケティングや販売をするのではなく、あえて小さく始めて市場性が本当にあるのか、お客さんに欲しいと思ってもらえるかのニーズを検証しました。

クラウドファンディングで募集し、次に数店舗とオンラインに限定して販売をしました。いずれも完売し、増産分も売り切れるほどの市場が確認できたわけです。

自ら接客しお客さんを理解する


もう1つ注目したいのが、担当の商品営業課長の方がお店に入り、直接お客さんの接客をしたことです。

お店に立ったことで、現場でのリアルな生活者や購入者のことを知ることができました。

今までになかったタイプの商品を世の中に出すということは、市場創造です。

市場を新しくつくり出す時のアプローチとして、今回のワコールのやり方はアパレル業界以外でも汎用的で参考になります。


まとめ


今回はワコールの男性向け下着 「レースボクサー」 を取り上げ、販売やマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 今までになかった商品の売り方
  • 自分たちが信じている商品でも、特に今までにない新しい商品ほどお客さんに良さが伝わるとは限らない
  • クラウドファンディングや販売チャネルを限定するなどの最初は小さく始め、お客さんに欲しいと思ってもらえるかを検証をするといい
  • 直接お店に入るなど、営業、商品開発やマーケティングの担当者が現場でのリアルな生活者や購入者のことを知る機会をつくることも大事


ニュースレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスのヒット理由がわかり、マーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、今日から活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 2 ~ 3 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方には、レターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料登録をしていただくと、マーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。