出典: 日経
今回のテーマは、無料サービスのつくり方です。
おもしろいと思ったミズノのサービスを取り上げ、戦略やマーケティングに学べることを見ていきます。
✓ この記事でわかること
- ミズノの無料での歩き方診断サービス
- 他社にはすぐに真似できない仕組みとは?
- 戦略的な無料サービスのつくり方
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ミズノの歩き方診断サービス
ミズノが直営店で、無料での歩行診断サービスを開始するとのことです。
以下は日経新聞からの引用です。
ミズノは24日、来店客に最適なシューズを提案するため、歩き方を診断するサービスを直営店で始めると発表した。
静止状態で腰や膝などを撮影後、専用アプリで分析し、4タイプに分類する。測定器の前で8メートル歩いてもらい、歩行速度や歩幅も可視化できる。国内のスポーツ用品市場が成熟するなか、高齢化などで高まる健康需要を取り込む。
ミズノオオサカ茶屋町 (大阪市) と MIZUNO TOKYO (ミズノトウキョウ, 東京・千代田) で始める。サービスは無料で利用できる。他店舗への展開も計画する。
診断方法
歩き方の診断は、スマホを使い簡単にできそうな印象です。
先ほどの日経記事によれば、スマートフォンで立ち姿勢を撮影し、専用アプリで分析するとのことです。診断の際は相手の足首や膝、腰に光を反射するマーカーを付けてもらい、マーカーからの反射光をカメラがとらえて計測する仕組みです。
マーカーの装着から撮影・分析まで、トータルで1分程度で歩き方のタイプが判明するそうです。
共同研究の知見を活用
歩行診断サービスのもう1つの特徴は、大学教授との共同研究で得られた知見を活かしていることです。
診断の決め手は骨盤や膝の傾きから分かる立ち姿勢だ。
大阪府立大学の岩田晃教授との共同研究により、姿勢ごとに歩き方に違いが出ることが分かった。それぞれに 「膝で体を持ち上げて歩く」 「股関節と足首で地面を蹴って歩く」 といった特徴があるという。
歩行診断から学べること
ではここからは、ミズノの歩行診断サービスから学べることを掘り下げていきます。
2つあります。
✓ 歩行診断から学べること
- 他社にはすぐに真似できない仕組み
- 戦略的な無料サービスのつくり方
順番に見ていきましょう。
他社にはすぐに真似できない仕組み
歩行サービス診断は、ミズノ以外のメーカーでもやろうと思えばできる取り組みです。
しかし、ミズノの診断サービスには他社にはすぐに真似できない仕組みが裏にあります。それが、大学教授との共同研究からの知見です。得られた成果を診断に活かしています。
共同研究にはそれなりの時間、おそらく年単位の期間がかかり、時間に加えて人とお金をかけています。共同研究は他社が今から始めても、成果が出るのはその先の話です。ここにミズノの歩き方診断サービスが、他社にはすぐに真似できない価値提供の実現理由があると見ました。
戦略的な無料サービスのつくり方
学びの2つ目は、歩行診断サービスを無料で提供していることからです。
ここには無料でもしっかりとお客さんに価値を提供し、シューズ販売という有料につなげる狙いがあります。
先ほどの記事から詳しく見ていきましょう。
ミズノはデータに基づいた提案で中高年を中心に購買を促したい考えだ。歩き方のタイプごとに最適なシューズや健康器具は異なる。例えば 「股関節と足首で地面を蹴って歩く」 タイプは、足首でしっかり地面を蹴れる、ソール (靴底) が硬めのシューズを履くと歩きやすくなるという。
歩き方診断と同時に、歩行能力の測定も直営店で始めた。「助走」 を含めて8メートル歩いてもらい、赤外線センサーを搭載した計測器で足運びを捕捉する。歩行速度や歩幅を可視化し、同性の同世代の平均値と比較できる。
サービスの利用客は主に中高年を想定。「歩行は健康寿命に関係する。能力の可視化は生活習慣の見直しにつながる」 (同社) 。健康意識を高めてウオーキングへのモチベーションを喚起し、靴を売り込みたい考えだ。
ミズノは、歩行サービス診断を戦略的に無料にしています。
戦略的と表現したのは、あえてサービスでの課金はやらず、時間軸を長く見て後から回収する 「損して得取れ」 だからです。
いきなりシューズを買ってもらわずに、歩行診断サービスという受け入れられやすい無料サービスを有料への布石にしています。
なお、このアプローチには1つ注意点があります。たとえ無料であっても、中身にお客さんは価値を感じなければやる意味はありません。
無料のサービスでもしっかりと価値を提供し、無料を単発で終わらせず、つまり 「点」 ではなく 「線」 ととらえ、有料につなげる無料提供をつくると良いです。
まとめ
今回はミズノの歩き方診断サービスを取り上げて、戦略やマーケティングに学べることを見てきました。
最後にまとめです。
他社にはすぐに真似できない仕組み
- お客さんへの価値提供は、自分たちしかできないことかは忘れないようにしたい視点
- 持続的なビジネスにするために重要なのは、他社にはすぐに真似できない価値提供の実現理由があること
戦略的な無料サービスのつくり方
- いきなり商品・サービスを買ってもらわずに、受け入れられやすい無料サービスを有料への布石にすると良い
- あえて課金はやらず、時間軸を長く見て後から回収する 「損して得取れ」 とする
- 無料を単発で終わらせず、「点」 ではなく 「線」 でとらえ有料につなげる無料提供をしよう
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