投稿日 2022/06/23

花王が WOTA と組みインドネシアで水環境を改善。商品やカテゴリーを活性化させる方法


今回のテーマは、参入カテゴリーをどうやって普及させたり活性化させるかという話です。

おもしろいと思った花王の取り組みをご紹介し、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 花王と WOTA のインドネシアでの取り組み
  • 日用品ビジネスの花王が水環境を整備する狙いとは?
  • 商品より2つ上の視座
  • 生活者視点から商品やカテゴリーを活性化させる方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

花王と WOTA の取り組み


取り上げたいのは、花王と WOTA がインドネシアで始めた取り組みです。

以下は、日経新聞の記事からの引用です。

国内最大手の花王も東南アジアでの事業拡大に動く。

3月、水処理技術開発のスタートアップ WOTA (東京・中央, ウォータ) との業務提携を発表。ウォータは水を循環させて水道がない場所でも使える手洗い器 「WOSH (ウォッシュ) 」 を手掛ける。4月からインドネシアに WOSH を持ち込み、普及促進に向けて実証実験を始める。

WOSH は活性炭などのフィルターと紫外線照射、消毒剤で使用済みの水を再生する。センサーで水の汚れを把握し、人工知能 (AI) で汚れの程度に応じて水処理を自動で行う。せっけんで手を洗った後の水も、ドラム缶サイズの機器のなかで飲用可能な水質にまで浄化できるという。

せっけんや洗剤は水が使える環境があってこそ普及する。花王グローバル事業推進センター長の小泉篤執行役員は 「東南アジアは水道のない地域も多い。水やせっけんを使って衛生的な生活ができるように事業展開したい」 と話す。水環境の整備は現地で社会貢献にもなり、日用品の顧客基盤の拡大にもつながる。
WOTA の水循環型手洗いスタンド 「WOSH」 (出典: PR TIMES


花王の狙い


引用した記事内で注目したいのは、最後にあったコメント 「水やせっけんを使って衛生的な生活ができるように事業展開したい」 のところです。

このコメントが意味するのは、せっけんや洗剤は 「きれいな水が使える環境があってこそ普及する」 ということです。より一般化して表現すれば、対象カテゴリー (例: 洗剤) の下地が整っている必要があります。

花王の事業は洗剤などの日用品の製造と販売です。水環境は花王のメインの事業ではありませんが、花王はインドネシアなどの新興国で日用品ビジネスを展開するために、前提となる人々がきれいな水を使える環境を積極的に支援していくのです。だからこそ花王は、スタートアップの WOTA と組むことを決断したわけです。


商品より2つ上の環境整備


今回の事例からマーケティングの観点で学べるのは、参入カテゴリーの上位や周辺領域にまで視野を広げる重要性です。

上位とは、洗剤で言えば水環境です。自社の商品が存在できるのはそのカテゴリーがあるからで、さらにもう1つ上にも今回の水環境のように洗剤カテゴリーが普及する前提があります。

このように一段も二段も視座を上げてみると、新しい着想が得られます。


商品やカテゴリーを活性化させる方法


視野を広げたり視座を高めるとは、生活者視点になることでもあります。

というのは、生活者にとっては使っている商品は生活の中では 「one of them」 でしかないからです。例えば、洗剤と一緒に使う洗濯機や水があってこそ衣服の洗濯ができます。

これは生活者には当たり前すぎることです。しかし、売り手の立場になり洗剤カテゴリーや自社の洗剤に目が行き過ぎると、当たり前なことが置き去りになってしまいます。

ご紹介した花王と WOTA の事例のように、視野を広げ参入カテゴリーを活性化させる取り組みをすることで、めぐりめぐって自社商品を買ってもらえる下地を作ることも、時には 「急がば回れ」 で大事なことです。


まとめ


今回は花王と WOTA のインドネシアでの取り組みから、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 商品を買ってもらう下地をつくろう
  • 生活者にとっては使っている商品は生活の中では 「one of them」 でしかない
  • これは生活者には当たり前だが、売り手の立場になり自社商品に目が行き過ぎると置き去りになってしまう
  • 視野を広げての参入カテゴリーの活性化から、めぐりめぐって自社商品を買ってもらえる下地を作ることは、時には 「急がば回れ」 で大事


ニュースレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスのヒット理由がわかり、マーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、今日から活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 2 ~ 3 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方には、レターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料登録をしていただくと、マーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。