出典: 食品産業新聞社
今回のテーマは戦略です。
おもしろいと思ったコンビニを取り上げ、戦略に学べることを掘り下げています。具体的には 「弱者の戦略」 を見ていきましょう。
✓ この記事でわかること
- 6年連続で顧客満足度 No.1 のセイコーマート
- セイコーマートの戦い方
- 戦略の本質
- 弱者が強者に勝つ方法
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
北海道のコンビニ 「セイコーマート」
今回ご紹介したいのは、北海道を中心にコンビニを展開するセイコーマートです。
以下は ITmedia の記事からの引用です。
顧客満足度の最も高いコンビニエンスストアは、6年連続でセイコーマート――そんな結果が、日本生産性本部 サービス産業生産性協議会が実施した2021年度 JCSI (日本版顧客満足度指数) の第4回調査で分かりました。
百貨店や家電量販店など、さまざまな業種業態の満足度調査結果が掲載されているのですが、中でもコンビニ業界でのセイコーマートの存在は際立っていました。
では、セイコーマートがどうやって顧客満足度を高めているかを、戦略の観点から紐解いていきましょう。
セイコーマートの戦い方
セイコーマートには弱者の戦略で学びがあります。
具体的には次の3つです。
✓ セイコーマートの弱者の戦略と戦い方
- 局地戦
- 一点集中
- ゲリラ戦
では順番に見ていきましょう。
局地戦
セイコーマートの特徴は、北海道に特化した出店戦略です。
セイコーマート最大の特徴は、何といっても北海道にほぼ特化した出店政策にあります。1176店舗 (22年2月度) のうち、北海道内に1084店舗、埼玉に9店舗、茨城に83店舗と店舗の 92% は北海道内にあります。
セイコーマートは、戦う場所を広く取る広域戦ではなく、出店地域を北海道に絞った局地戦を展開しています。
一点集中
セイコーマートが絞っているのは、出店エリアだけではありません。売っている商品も北海道をテーマにしています。
セイコーマート店内に入ると、北海道の地名を使ったドリンクやカップ麺、北海道限定ビールや地酒、北海道産原料の酒のつまみから北海道産の米に至るまで、「セコマ」 マークの北海道ブランド商品が陳列されているのが目に入ります。現在、店内の取り扱い品3500アイテムのうち、1000アイテムがセコマオリジナルという構成です。
セイコーマートの PB 商品第1号は、95年に発売されたアイスクリームです。「北海道といえば乳製品」 というイメージが強いと思いますが、その北海道ブランドイメージを活用して、アイスには特に力を入れています。安くておいしいのが特徴で北海道でも人気があるため、他のコンビニに比べて売り場のアイスの在庫量もダントツ一番です。
自分たちの独自のプライベートブランド (PB) に集中し、中でも北海道ブランド商品に注力しています。扱うアイテムを色々とバランス良く置くのではなく、北海道という一点に集中させているわけです。
ゲリラ戦
セイコーマートは大手にはできない非効率な店舗運営をやっています。
これも記事から引用すると、
セイコーマートを語る際に欠かせないコンテンツが 「ホットシェフ事業」 です。これがあるからセイコーマートに行くという人もいるほどです。ここで提供される総菜や弁当など、店内の厨房で作られるあたたかい食事が、熱烈なセコマファンを作る一大要素となっています。
店内に厨房を作るので投資資金が必要です。厨房スペース分だけ売り場が減ります。人手も手間もかかります。当然、時間がかかる場合もあるでしょう。店内調理の価値は認めつつも大手コンビニが長くこの事業をやってこなかったのは、利便性、効率性、スピードが売りのコンビニにとって非効率の極みだったからです。
しかし、北海道に根を張るセイコーマートは、「だからこそ必要」 だと感じたわけです。
セイコーマートの 「ホットシェフ事業」 は、店内で人が調理をするので手間がかかり、お店の中で場所を取ります。効率を追求するコンビニ経営とは、決して相性が良くありません。事実、大手のコンビニはやっていないわけです。
しかし、あえて泥臭いことをやることで、差別化を図りお客さんへの価値につなげています。
戦略の本質
そもそもの話になりますが、戦略とは何でしょうか?
一言で表現すれば、戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。
ポイントは後者の 「やらないこと」 にあります。順番としてまず 「やらないこと」 を決め、残った 「やること」 に注力します。戦略をつくるのは、やらないことを決めるためと言ってもいいくらいです。
弱者の戦い方
セイコーマートに話をつなげると、セイコーマートは強いプレイヤーではないからこその戦い方をしています。
強いプレイヤーとは、人・モノ・金という資本力を豊富に持つ企業です。
資本が少ない弱者が、強者と同じ戦い方で正面から立ち向かっても勝ち目はないでしょう。しかしだからといって弱者はあきらめるしかないかと言うと、決してそうではありません。
今回のセイコーマートのように、
- 広域に戦線を展開しない局地戦
- あれもこれもではなく、注力することを絞りリソースを投下する一点集中
- 非効率な泥臭いことを徹底し、顧客に価値を提供するゲリラ戦
といった、大手がやっていないこと・やろうとしてもできないことに勝機があるのです。
まとめ
今回はコンビニのセイコーマートを取り上げ、戦略の観点で学べることを見てきました。
最後にまとめです。
戦略の本質
- 戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと
- まず 「やらないこと」 を決め、残った 「やること」 に注力する
- 戦略をつくるのは、やらないことを決めるため
弱者の戦略
- 資本が少ない弱者が、強者と同じ戦い方で正面から立ち向かっても勝ち目はない
- 弱者はあきらめるしかないかと言うと、決してそうではない
- 大手がやっていないこと・やろうとしてもできないことに勝機がある
セイコーマートの戦い方
- 広域に戦線を展開せず、出店エリアを北海道を中心とする局地戦
- 扱う商品を北海道ブランドに注力する一点集中
- 非効率な 「ホットシェフ事業」 (店内で調理した惣菜や弁当の販売) で泥臭いことを徹底し、顧客に価値を提供するゲリラ戦
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