投稿日 2022/06/29

ホテルニューオータニの18歳新成人お祝いプラン。ブランドの本質とつくり方


今回のテーマは、マーケティングのブランドです。

おもしろいと思ったホテルのあるサービスを取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • ホテルニューオータニの18歳新成人お祝いプラン
  • 新プランの狙いとは?
  • 顧客接点の早期化
  • 特別な体験からのブランド構築

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

18歳新成人お祝いプラン


ご紹介したいのは、ホテルニューオータニが始めたサービスプランです。

欧米式の社交界デビューを再現


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

きらびやかな衣装に身を包み、高級フレンチでディナーを味わう――。ニュー・オータニは4月1日から、ホテル館内にあるフレンチの名門 「トゥールダルジャン東京」 にて、欧米で社交界デビューを祝う 「デビュタントディナー」 を味わうプランを始めた。

デビュタントとは欧州伝統の文化で、社交界デビューする女性を指す。現地では高級レストランでパーティーを開くのが通例で、同ホテルで初めての導入となった。

 (中略) 

毎週木曜 ~ 日曜の週4日間で予約を受け付ける。1人2万1000円のフルコース料理に、ホテル館内でのヘアメイクやドレスの着付けをオプションで追加できる。主に女性の新成人をターゲットとし、高級感ある体験を味わいたいニーズを狙う。
ホテルニューオータニ東京内のレストラン 「トゥールダルジャン」 で新成人をお祝いするプラン (出典: ホテルニューオータニ

ホテル館内での着付けもできる (出典: PR TIMES

新プランの狙い


ホテルニューオータニが新しくプランを始めた背景と狙いについて、記事から見てみましょう。

同レストラン (引用者注: ホテルニューオータニ東京内のレストラン 「トゥールダルジャン」 ) は、高級フレンチとして敷居が高いイメージが強く、「これまでは会食での利用など大人同士に使われることが多かった」 (担当者) という。

今回は18歳と19歳をターゲットとし、親子や友人家族との利用を想定する。新成人のお祝いをきっかけに、若い世代でも記念日や祝い事の際に利用する層の拡大を狙う。

* * *

ではここからは、ホテルニューオータニの新成人お祝いプランからマーケティングに学べることを見ていきます。

次の2つです。

✓ 新成人お祝いプランから学べること
  • 顧客接点の早期化
  • 特別な体験からのブランド構築

順番に解説しますね。


顧客接点の早期化


学びの1つ目は、ホテルやレストランを利用する機会を従来のお客さんよりも早いタイミング (年齢が若い時) にしたことです。

これまでは、ホテルニューオータニ内のレストランは、高級店だったこともあり大人同士での会食に使われていました。

18歳や19歳という新成人になったタイミングで利用してもらい、末永くお客さんになってもらうことを狙っています。新成人お祝いプランは、LTV (顧客生涯価値) を長くする施策で、そのために顧客接点を早期化したのです。


特別な体験からのブランド構築


2つ目の学びはブランディングです。

ブランドとは


ホテルニューオータニのブランディングの話に入る前に、そもそもブランドとは何かを見ていきましょう。

一言で表現をすれば、ブランドとは 「顧客からの好ましい感情が伴った商品やサービス」 です。好ましい感情とは、好き・共感・満足・誇り・憧れ・応援する気持ちです。これらの感情が深いほど強いブランドです。

ブランドを数式で表せば、「商品 + 感情 = ブランド」 です。

マーケティングでのブランドは 「お客の頭の中にある価値イメージや信頼」 と捉えます。

ブランドのつくり方


ではブランドはどうやってできるかも見ていきましょう。

マーケティングの文脈でブランドとは、顧客の頭の中にある価値イメージでした。この意味で、売り手や提供者側はブランドを直接管理することはできません。あくまで間接的に相手に働きかけをして顧客に商品・サービスへの感情移入をしてもらい、頭の中にブランドが結果としてできるようにします。

商品やサービスがブランドになっていくプロセスを整理すると、次のようになります。

✓ ブランドのつくられ方
  • 商品やサービスのことを知ったり使う (ユーザー体験) 
  • 体験から好ましい感情が生まれる
  • 感情移入から商品・サービスへの価値イメージができる (ブランド化) 

このように、ブランドができるプロセスを整理すると、「体験 → 感情 → 価値イメージ → ブランド」 です。

ブランドになると選ばれ方が 「~ でいい」 消去法的なものから、「~ がいい」 という能動的になります。言葉だけを見ると、てにをはレベルの違いだけですが、マーケティングの観点でこの 「~ でいい」 と 「~ がいい」 の違いは大きいです。

新成人お祝いプランからのブランディング


ここで話をホテルニューオータニに戻しますね。

自分が成人になるのは、一生に一度しかありません。昔からある成人式ではなく、ホテルニューオータニのお祝いプランで祝福してもらう体験は、きっと忘れられない思い出になるでしょう。

これをブランドができるプロセスに当てはめると、

✓ 新成人お祝いプランからのブランディング
  • お祝いプランでの特別な体験
  • うれしい・幸せなどの感情が生まれる
  • ホテルニューオータニ (サービスや料理など) への価値イメージ形成
  • ブランド化

特別な体験をした結果として、ホテルニューオータニが他にはない存在になります。

新成人お祝いプランは、ブランディングによって今後もまたホテルニューオータニを選んでもらう打ち手なのです。


まとめ


今回はホテルニューオータニのサービスを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

ブランドの本質
  • ブランドとは顧客からの好ましい感情が伴った商品やサービス (商品 + 感情 = ブランド) 
  • 好ましい感情とは、好き・共感・満足・誇り・憧れ・応援したい気持ち。こうした感情が深いほど強いブランド
  • 「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成」 でブランドができる

新成人お祝いプランの狙い
  • 顧客接点の早期化
  • 特別な体験からのブランド構築
  • 年齢が若いタイミングでの利用機会を提供し、今後もホテルニューオータニを選んでもらう打ち手


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。