投稿日 2022/09/03

ライオン NONIO の 「ちょっと気持ちいい」 提案に学ぶ、相手に自ら動いてもらう方法

出典: ライオン

今回のテーマは、「相手に自ら動いてもらうためにはどうすればいいか」 です。

おもしろいと思ったライオンのキャンペーン事例から、学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • ライオン社のエコへの取り組みと提案
  • やりがいをつくる3つの要素 「Will, Can, Must」 
  • 相手に自ら動いてもらう方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ライオンのエコの取り組み


日用品メーカーのライオンが、歯磨き粉やマウスウォッシュのブランド 「NONIO (ノニオ) 」 で、マウスウォッシュの詰替タイプを提供するとのことです。

出典: ライオン

NONIO の詰替タイプ


以下は日経新聞の記事からの引用です。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて衛生意識が高まり、洗口液を使う人が増えている。

利用者層が広がる中、無理なく環境負荷削減に取り組んでもらおうとライオンは4月に 「NONIO」 から詰め替えタイプを発売し、注目を集めている。SDGs (持続可能な開発目標) に配慮した選択肢を用意することで、若い世代の共感を得ている。

 (中略) 

600ミリリットル入りのボトルタイプと比べ、今回の詰め替え品ではプラスチックが 76% 減、廃棄する場合に発生する二酸化炭素 (CO2) は 72% 減を見込む。掬川正純 (きくかわ まさずみ) 社長は5月の記者会見で 「若い世代と一緒に無理なく実践できるエコの習慣作りを推進していく」 と意気込んだ。

SDGs 疲れ


ライオンは SDGs を目指しているわけですが、一方でただ SDGs を振りかざしても消費者には響かないという問題意識を持っていました。

地球温暖化や海洋ごみ問題など環境への配慮が叫ばれる中で、消費者の意識も変化している。洗口液のボトルについて 「容器を捨てることに罪悪感がある」 「容器を捨てるのがもったいない」 といった声が消費者から寄せられ、今回の詰め替え品の開発に至った。

一方で 「社会課題への意識が高まる中、エコが義務化され、戸惑いが芽生え始めている」 と指摘するのはオーラルケア事業部の青木智弘氏。

エコに良いことをしなければという義務感が強くなりすぎると、やっている側には気疲れが生まれます。始めはがんばろうと思っても続かず、習慣として定着しないのです。

ライオンの提案


そこでライオンはあえてハードルを低くし、「ちょっとしたことからやってみよう」 という提案をしています。

 「 (環境に配慮する行動が) 義務だからではなく、気持ちいいから続けられるというのが本当の意味でのサステナブルな生活や社会に貢献する」 として、「#世界をちょっと気持ちよく」 をテーマにイベントを実施。キャンペーンサイトでは、「ちょっと気持ちいい」 につながるコンテンツを随時更新していく。

ボトルに愛着を持ってもらおうとアーティストとコラボして特別なデザインのボトルを販売する取り組みも既に実施している。お気に入りのボトルを長く使ってもらうことで、詰め替え品の購入のきっかけにもつなげる。

こちらがキャンペーンサイトです。NONIO の詰替タイプについてのインタビュー記事もあります。


相手に自ら動いてもらうために


 「すべき」 と 「したい」 


一般的に 「~ すべき」 という義務を相手に押し付けすぎると、一時的に動いてくれても、長い目で見れば効果は薄れていきます。やらされ感が強くなり次第に嫌になるでしょう。

そこで大事なのは、相手が自ら 「~ をしたい」 と思える設計や配慮です。

やりがいのバランス (Will, Can, Must) 


1つ補助線としてご紹介したいのが、やりがいの3つの要素 「Will, Can, Must」 です。

出典: 飛企画

✓ Will, Can, Must
  • Will: 自分 (たち) がやりたいこと
  • Can: できる, できそうなこと
  • Must: 相手から求められていること

Will, Can, Must の3つが当てはまると、やりがいが大きくなります。

SDGs に当てはめると、SDGs では、ともすると Must という義務感の要素が強くなりすぎてしまいます。

一方のライオンの 「ちょっと気持ちいい」 という提案には、「~ したいという意思 (Will) 」 や、「これなら自分にもできそう (Can) 」 があります。Will, Can, Must の3つがバランスよく入っています。


学べること


では最後に、今回の話から学べることを整理してみましょう。

人を巻き込んでいく時に、相手に自ら動いてもらうという状態を目指すといいです。動くことへの義務感が強くなりすぎず、受け身でのやらされ感を生まず自分からやりたくなるように工夫してみるのです。

動く一歩目のハードルを下げてみるのもライオンの事例から学べることです。小さくても1つ1つの積み重ねが、やがては大きな行動と成果につながります。


まとめ


今回は、ライオンのエコへの取り組みと提案から学べることを見てきました。

最後にまとめです。

やりがいをつくる三要素
  • Will: 自分 (たち) がやりたいこと
  • Can: できる, できそうなこと
  • Must: 相手から求められていること

相手に自ら動いてもらうために
  • 義務的なことを声高に叫ぶと Must の要素が強くなりすぎ、長い目で見ればやらされ感が強くなり次第に嫌になる
  • 相手が 「~ したい」 や 「これなら自分にもできそう」 という Will と Can があると、やりがいを持って自ら動いてもらえる
  • 動くことへの義務感が過剰になりすぎず、受け身でのやらされ感が生まれないように配慮しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。