投稿日 2022/09/22

サントリー 「ゴロチャ」 がプロモーションをしない理由に学ぶ、成功体験をあえて捨てる重要性

#マーケティング #成功体験


今回は 「成功体験のスクラップ & ビルド」 という話です。

おもしろいと思ったサントリーの飲料商品のマーケティング戦略から、成功体験をあえて捨てる重要性を見ていきましょう。

✓ わかること
  • サントリー 「ゴロチャ」 の大胆なマーケティング戦略
  • 思い切った決断の理由
  • 成功体験をあえて捨てる重要性
  • 「成功体験のスクラップ & ビルド」 と 「チャレンジ」 (学べること) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ゴロチャのマーケティング戦略


こちらの記事を読みました。

謎のサントリー 「ゴロチャ」 情報なし、広告なしで売る理由|日経クロストレンド


以下は記事のリード文です。

事前の発売情報なし、広告もなし。一部のセブン-イレブンやスーパー、Amazon のみで突然発売されたフルーツティーが、サントリー食品インターナショナルの 「GOROCHA (ゴロチャ) 」 だ。

専用ページはあるものの、情報がほとんど出回っていないため、商品を購入するには偶然出合うしかない。あえてプロモーションをしない理由は何か。同社の戦略に迫った。

あえてプロモーションをしない理由


サントリーが新商品でプロモーションをやらなかったのは理由がありました。

この商品がユニークなのは、プロモーション活動をほとんど行わないことだ。

発売日である22年7月12日まで告知をせず、東京都港区にある一部のセブン・イレブン、東京、神奈川、埼玉の一部のスーパー、そして Amazon にて数量限定の販売を開始した。認知度が低く、タッチポイントが限られるため、実店舗やネットで偶然見つけて買うしかないレアな商品といえる。

 (中略) 

告知をしないのは、商品に関する "リアルな数字" が欲しいためだ。「どこで買われ、SNS でどう拡散され、最後に Amazon で購入されるか、といった観点で一から検証するのが目的」 と白石氏 (引用者注: ゴロチャのブランディングを担当したイノベーション開発部の白石文香氏) は明かす。

例えば、情報が何もない状態でゴロチャを発売すれば、消費者は店舗で衝動的に購入することになる。購入者は SNS で情報を発信し、その投稿を見た人がゴロチャをネットで検索。サントリーの特設ページを経由して Amazon の販売ページから購入するという仮説を立て、各フェーズでの定量データを収集する。

思い切った決断の背景


サントリーが新商品の 「ゴロチャ」 でプロモーションを一切やらなかったのは現状への問題意識からでした。

思い切った決断の裏には、サントリーの危機感がある。

近年、新型コロナウイルス禍で消費行動が変わり、若者のテレビ離れも加速している。これまでと同じプロモーションが将来的には通用しなくなるのではないか――。

そんな問題意識から、一度ゼロベースで商品の売れ方を分析し、今後の商品開発・マーケティングに生かそうと考えたのだ。「少数生産・少量販売で、消費者のリアルな声を傾聴しながら商品をブラッシュアップしていくのは珍しく、チャレンジングな取り組みになる」 (白石氏) 

 「ゼロベースで」 という思考は、全く新しいブランドを立ち上げて商品を展開したことにも表れている。テストマーケティングなら、「クラフトボス」 などの既存ブランドから出す方法もあるが、こうしたブランドは消費者に既に知られている。ゼロからの検証のために、在庫リスクを抱えてでもリアルな数字にこだわった。

実店舗にコンビニやスーパーを選んだのも、効果を検証しやすいためだ。「どちらも生活の動線上にあって直観的に選んでもらいやすいため、より現実的な数字になる」 (白石氏) 。効果を正確に測るため、「開発チームや関連部署全体に、店頭で見かけても EC でも『買わないで!』と一斉メールした」 というほどだから、その本気度がうかがえる。

成功パターンをあえて捨てる


サントリーがゴロチャでやったことは過去の成功体験との決別です。

サントリーと言えば話題性のある大規模なプロモーションからのマスマーケティングを得意としています。 例えば 「伊右衛門」 では本木雅弘さんや宮沢りえさん、「金麦」 には柳楽優弥さんなどの著名人を起用しました。

サントリーの危機意識は、こうした自分たちの 「勝ち筋 (成功パターン) 」 がこれからは通用しなくなるのではという現状認識によるものです。認知がゼロの新商品 (ゴロチャ) で、あえて勝ちパターンをやらないとどうなるかをリアルな実際の販売で検証したわけです。


学べること


ではゴロチャから学べることを掘り下げてみましょう。

成功パターンの持続可能性


ゴロチャのマーケティング戦略から学べるのは成功体験にあぐらをかかないことの重要性です。

今までの成功パターンがこれからも通じるとは限りません。むしろ勝ち筋が過去のものになったにもかかわらず、成功体験に固執しすぎると環境変化に適応できない要因になりかねません。大きな捉え方をすれば 「イノベーションのジレンマ」 が起こるわけです。

そこで有効なのはゴロチャのように意図的に成功パターンを外してみることです。これが意味するのは強制的な制約の下での新しいチャレンジです。

成功のスクラップ & ビルドを


企業や組織だけではなく個人のレベルでも当てはまります。

今までの自分の得意なこと、成功パターンにあえて乗らず、新しい領域に入ってみたり他人や今までの自分のやり方とは違うことをやってみるのです。チャレンジの機会をつくるきっかけになります。

そのためにも、

  • 自分の得意とする勝ち筋は何か
  • 今の勝ち筋はこれからも有効なのか
  • あえて勝ち筋を捨てるとどうなるか

を意識して考えてみて行動に移してみるといいです。


まとめ


今回はサントリー 「ゴロチャ」 のマーケティング戦略を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 勝ち筋の 「スクラップ & ビルド」 
  • 成功体験に固執しすぎると環境変化に適応できなくなる
  • 過去の成功体験にあぐらをかかず、意図的に成功パターンを外してみるといい。チャレンジの機会になる
  • 自分の得意とする勝ち筋は何か、今の勝ち筋は今後も有効か、勝ち筋を捨てるとどうなるかを考え、行動に移してみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。