投稿日 2022/09/04

[CM 分析] カップヌードルのテレビ CM はなぜあんなにもハチャメチャなのか?


今回は、広告についてです。カップヌードルのテレビ CM を取り上げます。

✓ この記事でわかること
  • テレビ CM の役割
  • ハチャメチャな日清カップヌードルの CM
  • カップヌードルの CM の分析 (戦略的な狙いとは) 
  • 「日清10則」 からの掘り下げ

今回はテレビ CM の分析です。カップヌードルの CM の狙いを、マーケティング視点で掘り下げています。

この記事を読んでいただきたいと思うのは、マーケターの方です。特に広告などマーケティングコミュニケーションの仕事をしている方をイメージしています。

他にはカップヌードルの CM はなぜあんな内容になっているのか、マーケティング的にどういう意図があるのかと思った方にも参考になればと思います。ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。

テレビ CM の役割


カップヌードルの CM をご紹介する前に、そもそものテレビ CM の役割を整理してみましょう。

広告主は、次のような狙いからテレビ CM に多額のお金を使います。

✓ テレビ CM の役割
  • 商品やサービスの認知 (新しく知ってもらう) 
  • 定期的に CM で流し思い出してもらう (リマインド効果) 
  • 興味を持ってもらい、検索やアプリであればダウンロードしてもらう
  • ブランドイメージを頭の中に残してもらう
  • 店頭で商品に目が止まった時に 「あの CM のやつだ」 と思い出してもらう
  • CM を見て 「買いたい」 と思ってもらう


カップヌードル CM


では、日清カップヌードルの CM を見ていきましょう。

昔のものですが、実際の CM がこちらです。

Hungry 原始人 篇

ゴルバチョフ 篇

最近だとこちら。

カプヌのプロ リピーター続出 篇

日清の YouTube 公式チャンネル には、他にも多数の CM 動画がアップされています。

これは個人的な見立てですが、カップヌードルの CM は好き勝手にやっている印象があり、良い意味でも大手企業の CM っぽくないです。

では、カップヌードルの CM にはどんな狙いがあるのでしょうか?

カップヌードル CM の意図


カップヌードルはすでに知名度は確立できているので、認知の観点から言えば新しい味が登場した場合はそのアナウンスを目的の1つにしています。

他には CM を見た人に、「そういえば最近カップヌードルを食べていないかも」 や 「また食べてみようかな」 と思ってもらう意図もあります。コンビニやスーパーのラーメン売場でカップヌードルの CM がふと頭に浮かび、思い出したことによる親近感から手に取って選んでもらうことも狙っています。

あとはブランドイメージの強化です。

では、「ブランドイメージ強化」 について掘り下げてみましょう。

CM からブランドイメージ形成


カップヌードルのテレビ CM は色々なバージョンがあります。

私が思ったのは、カップヌードルの CM にはブランドイメージとして 「ユニークさ」 を持ってもらう意図があるということです。他にはない独自化されたポジション形成を狙っています。

確かに1つ1つの CM はバラバラで好き勝手にやっているように見えます。しかし 「点」 ではなく 「線」 で捉えれば、他にはないユニークさで共通しています。

ここには 「一見すると部分では非合理だが、全体を俯瞰すれば合理」 という戦略ストーリーがあります。つまり点で見れば遊び半分のような CM でも、背後にある狙いやつくり手の想いには共通することがあるのです。

 「日清10則」 からの分析


ここで、つくり手の想いを掘り下げるために1つ補助線を入れます。

日清には 「日清10則」 という行動規範があります (2018年8月に改定) 。

✓ 日清10則
  1. ブランドオーナーシップを持て
  2. ファーストエントリーとカテゴリー No.1 を目指せ
  3. 自ら創造し、他人に潰されるくらいなら、自ら破壊せよ
  4. 外部の英智を巻き込み、事業を加速させよ
  5. 純粋化した組織は弱い。特異性を取り込み、変化できるものが生き残る
  6. 知識と経験に胡坐をかくな。自己研鑽なき者に未来はない
  7. 迷ったら突き進め。間違ったらすぐ戻れ
  8. 命令で人を動かすな。説明責任を果たし、納得させよ
  9. 不可能に挑戦し、ブレークスルーせよ
  10. 仕事を楽しむのも仕事である。それが成長を加速させる

10個の中でも次の3つが、テレビ CM の作成で体現されていると見ました。

✓ 体現された行動規範
  • 迷ったら突き進め。間違ったらすぐ戻れ (#7) 
  • 不可能に挑戦し、ブレークスルーせよ (#9) 
  • 仕事を楽しむのも仕事である。それが成長を加速させる (#10) 

特に最後の10個目の 「仕事を楽しむのも仕事である。それが成長を加速させる」 です。CM を見る相手である生活者を楽しませるだけではなく、自分たちも楽しむ姿勢が入っています。

カップヌードルの CM は誰かに言われたからとか嫌々に取り組んでいたのでは、あのような CM はできません。

つくり手の想いも感じられるのがカップヌードルの CM です。


まとめ


今回はテレビ CM 分析で、カップヌードルの CM を取り上げました。

最後にまとめです。

カップヌードル CM の意図
  • 認知の観点から言えば新しい味が登場した場合はそのアナウンス
  • CM を見た人に、「そういえば最近カップヌードルを食べていないかも」 「また食べてみようかな」 と思ってもらう (リマインド効果) 
  • コンビニやスーパーのラーメン売場でカップヌードルの CM がふと頭に浮かび、思い出したことによる親近感から手に取ってもらう
  • ブランドイメージの強化

CM からブランドイメージ形成
  • ブランドイメージとして 「ユニークさ」 を持ってもらう意図がある。他にはない独自化されたポジション形成を狙っている
  • 1つ1つの CM はバラバラで好き勝手に遊び半分のようにやっているように見えるが、「点」 ではなく 「線」 で捉えれば、他にはないユニークさで共通している


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。