今回は、おもしろいと思った千葉銀行の取り組みをご紹介し、学べることを掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- 農業に参入した千葉銀行の狙い
- 収益を出す仕組み
- 新しいチャレンジを成功させる方法
- 「両利きの経営」 から学べること
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
千葉銀行が農業に参入
日経新聞に、千葉銀行が農業に参入しているという記事がありました。
稲作事業をやっているとのことです。
千葉銀行は小湊 (こみなと) 鉄道など地元企業と共同で、2018年にフレッシュファームちばを設立した。
千葉も農業の疲弊や農村の過疎化が進む。放置すれば里山を維持できず、均整のとれた県の発展が難しくなると考え、農業に参入した。
農業参入の狙い
千葉銀行が農業に参入した背景は、農村の過疎化や、それを放置すれば里山が維持できず県の発展に支障をきたすことへの危機感からでした。
参入の狙いは、次のように書かれています。
フレッシュファームちばが目指すのは、収益モデルを確立して県内の農業の活性化につなげることだ。スタッフの竹内邦治さんは 「我々の経験を踏まえ、農業参入を検討している企業などにノウハウを提供したい」 と話す。
収益を出す仕組み
農業に参入した狙いは、農業での収益モデルの確立、得られたノウハウを活用し農業参入を検討している企業への支援です。
とはいえ農業参入を成功させるのは簡単なことではなく、工夫や仕組みが必要です。千葉銀行はどのような取り組みをしたのでしょうか?
ポイントは野菜ではなく、稲作を選んだことにある。
稲作は作業のほとんどが機械化されており、野菜などと比べると手間がかからない。スタッフが常に田んぼに張り付いている必要がなく、銀行の仕事を続けながら手がけることが可能。市原市で田んぼを借りたのも、千葉市にある本店から車で約1時間という近い場所にあるからだ。
フレッシュファームちばのスタッフは5人。銀行の仕事と兼務しており、その分の給与は当然銀行から出る。兼業農家と似たモデルなのだ。
収益源の多様化も模索する。コメの甘酒への加工を試みたほか、農場の一部でニンニクの栽培も始めた。重視しているのは、スタッフに過度の負荷がかからない形での多角化だ。
千葉銀行は、専業農家ではなく兼業農家のやり方を取りました。農業に従事する行員の給料などの人件費は千葉銀行が受け持ち、フレッシュファームちばの利益が出やすい仕組みにしています。
新しいチャレンジを成功させる方法
本業とは全く別のことをやって成功させるのは簡単なことではありません。成果が出るとは限らず、また出たとしても時間がかかります。
新しい領域でのチャレンジには、腰を据えて時間をかけることが必要になります。
千葉銀行が農業に参入できたのは、本業である銀行業があるからです。屋台骨がしっかりしているからこそ、将来を見据えた新しいチャレンジができるわけです。
両利きの経営
着想としてつなげたいのは、「両利きの経営」 です。
両利きの経営とは、経営学のイノベーション理論の1つです。
「深化」 と 「探索」 の両方をやっていき、あたかも右手と左手を上手く使うように進めるアプローチです。
✓ 両利きの経営
- 深化: 既存事業の強化。改善を重ねる
- 探索: 新規事業の開発。領域を広げ新しく取り組む活動
両利きの経営は、深化と探索のどちらか一方だけでなく、あえて二兎を追う経営です。
深化 (既存の強化) と探索 (新規の開発) では、一般的には前者の深化に偏りがちになります。今までやってきたことの延長なので続けやすいからです。一方、新しい取り組みである探索は、うまくいくかわからず成果が出にくいので、後回しになりがちです。
しかし、企業は深化だけでは生き残っていけません。外部環境の変化に適応し変わっていくためには、深化だけではなく探索が大事なのです。
千葉銀行の話を両利きの経営に当てはめると、本業の銀行業は深化させつつ、探索として新しい領域である農業に挑戦しているのです。
成功させるポイント
今回の話の終着点として、両利きの経営を成功させるポイントを整理してみましょう。
結論を言うと、次の5つです。
✓ 両利きの経営を成功させるポイント
- 深化と探索に明確な目的と戦略がある
- 経営層の積極的な関与 (特に探索事業への理解と支援)
- 探索には既存事業の資産を活かす
- 深化と探索は距離を置き、無用な対立を避ける (例: 評価指標を分ける、物理的に勤務地やオフィスを離す)
- 共通のアイデンティティを持たせる (ビジョンや価値基準などの企業文化)
千葉銀行の農業参入は、両利きの経営からも興味深い事例です。
まとめ
今回は千葉銀行が農業に参入しているという話から、学べることを見てきました。
最後にまとめです。
✓ 両利きの経営
- 深化と探索の二兎を追う経営
- 深化: 既存事業の強化。改善を重ねる
- 探索: 新規事業の開発。領域を広げ新しく取り組む活動
- 一般的には深化 (既存の強化) に偏る。外部環境の変化に適応し生き残るためには、深化だけでは十分ではなく探索が大事
✓ 両利きの経営を成功させるポイント
- 深化と探索に明確な目的と戦略がある
- 経営層の探索への理解と支援
- 探索には既存事業の資産を活かす
- 深化と探索は距離を置き、無用な対立を避ける (例: 評価指標を分ける、物理的に勤務地やオフィスを離す)
- 共通のアイデンティティ (ビジョンや価値基準などの企業文化)
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